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カー学3章プロローグ

こっちはプロローグ。3章の新キャラの過去話。これを書き出しとして今3章の執筆中。本編に投稿すると色々しがらみが出来るのでまずは近況ノートに投稿してみます。新話を投稿した途端欠点が山ほど見つかるあの効果を狙っています。あとは普通に進捗報告です。

もしかしたら後でサポーター限定記事にするかもしれない。





プロローグ 私の昔話

「魔獣だー! 魔獣が出たぞー!」

 パーティ会場は一瞬で大騒ぎになった。森の奥、人目を憚って行われたそのパーティ会場には護衛がちゃんといた。たくさんの魔物を撃退して、リーダー格と思しき大型の魔物と相打ちになった。でも魔物はまだ健在だった。

 私の目の前にいる。醜悪な顔と緑色の肌をした大型の魔物――オークが。
 
「……や」

 悲鳴が聞こえる。怒号が聞こえる。みんな戦っている。私に構う余裕がない。オークは尻をついて震える私をにやにや見下ろしながら全くの無警戒に近づき私の前に蹲った。そして――。

 その野太い指先で私の股間をスカートの上からペロリと撫で上げ「オホッ!」と鳴いた。真っ白い悪寒が脳髄を貫く。遅れて、幼い頭では何が何やら訳の分からぬままにそれでも途方もない恐怖が炸裂した。

「い、いやぁあああああああああああああああああああああああ!」

「オボボッボっボッボボおおおおおおおおおぉおおおおおおおおおおっ! ダマンネェエエエエエエエエエエエエエエ!」

「ぃひぃっ! やめでぇええええええええええええええええ!」

 私は涙で塗れながら傍に落ちていた血まみれの剣型のADを拾った。そして死んだ護衛の真似をして無我夢中でADを振るった。

「ア、アクア・ギガソードオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「オッホ、オサナ、タマンネェ――エ?」

 オークは見もせず掌で私の攻撃を受ける。

 受けようとした。

 私が子供だからと嘲り受けた一撃はオークの左腕を肩口までスパッと切断した。オークが右肩を抑えて絶叫する。そして、信じられない大戦果に驚き呆ける私へと、今度は色情だけではなく憎悪と殺意を視線に籠めてオークは絶叫した。森の木々が揺れる。

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! ゴロジデヤル!」

 オークが私に拳をふりかかる。私はあまりの恐ろしさに涙に塗れて失禁しながら無我夢中でADの切っ先をオークに向ける。そして詠唱した。

「アクア・ギガランス!」

 ズガン!

 剣の切っ先から生じた氷の大槍がオークのだらしないように見えてガッチガチのお腹に突き刺さった。同時、絶叫するオークの砲弾のような拳もまた、私の股間の前の地面に突き刺さった。

「きゃぁああああああああああああああああああ!」

 あと数センチずれていたら私の股間は潰れていた。その可能性に思い至った脳内が真っ白になる。そして目の前で大音声を上げるオークの右腕と腹の傷口のグロテスクさもまた私には恐怖でしかなかった。震える腕がADを取り落とす。今度こそもう動けなくなる。尻もちをついて体液を流し恐怖に震え死を覚悟する私の前でオークの体がゆっくり傾いていく。

「ひっ!」

 ドジャァアアアアン!

 オークが前のめりに倒れる。私の股間に顔面がめり込む。私は痛みと恐怖と悪寒で頭が真っ白になった。涙と小便に塗れて、両親が聞きつけてくるまで時に血反吐混じりの吐瀉物に咽びながら泣き叫び続けた。



 私は思う。

 魔物なんかこの世界にいなければいいのに。

 ダンジョンなんて全てぶっ壊してしまえばいいのに。


 そしたらこの世界は少しは地獄じゃなくなるのに。

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