• 恋愛
  • 現代ファンタジー

浦島夜想曲

 古き伝承から現実世界の事件につなげていくのはポピュラーな手法です。そういうことでやってみました。使ったのは浦島伝説。助けた亀に乗せられれて竜宮城に行くお話です。

 浦島伝説は今では昔話、御伽噺として扱われていますが、成立した頃は事実として扱われています。なにしろ日本書紀の雄略記に浦島失踪が公式の事件として記載されているぐらいです。

 そのために淳和天皇の御代の時に浦島が帰って来たの記録が帝王編年記や水鏡に残されているぐらいです。ただこれは誤っていると見ています。

 雄略記には瑞江浦嶋子が失踪したとだけ記録されていますが、瑞江浦嶋子が日本書紀に記録されるほどの人物かと言えば疑問がテンコモリです。さらに語在別卷とあります。

 別巻の原本は失われていますが、作者は伊余部馬養でほぼ間違いないと考えています。馬養は丹波(丹後が分離する前)の国宰であったのも丹後国風土記逸文で確認できます。

 馬養の原本に非常に近いと考えられるのも丹後国風土記逸文で、そこには失踪した浦島が帰って来た話が記録されています。つまりは実話であった可能性が高いと見れます。

 馬養は丹波国宰時代に浦島帰還の話を耳にし、これを撰善言司に任じられていた馬養が本にしたと見て良さそうなのです。

 撰善言司は文武天皇のための説話集を作る仕事ですが、説話集は完成しなかったようです。ただ説話集は完成していませんが、浦島話は当時の貴族の必須の教養として広く読まれた形跡があります。たとえば万葉集の高橋虫麻呂の歌です。

 本を書くより浦島伝説のルーツを調べる方が面白かった作品です。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する