タイトル『死にたいあの子は無毛症』
公開しました。短編恋愛小説となっています。
無毛症の少女と、魔法使いの少年がおくるボーイミーツが今作のテーマ。
実はこの作品、小学生のときの実体験を元にしていまして。
以下、エッセイ仕立てに思い出を語らせてもらいます。
離婚して出て行った父親につれられ、月数回。一つ年下の、無毛症の少女と遊ぶという、奇妙な習慣が我が家にはありました。
彼女は本当に毛の一本も生えておらず。無毛症の知識もなかった当時、かなりの衝撃で。かつ怪訝に思ったことを今でも子細に覚えています。
作中でもたびたび記してありますが、本当にお月様みたいだと思っていました。不謹慎ですね。
ある程度は分別がつく年頃だったのと、年下の女の子ということも幸いし。無毛症のことについてからかったり、はやし立てたりすることこそありませんでした。
が、かといって無理に話題に出そうとはせず、触れることもなく。ある種タブー扱いしていたのが実際。これでは目を背けているのとなんら変わりません。
でも大丈夫、心配ないのです。
彼女は生まれついての個性だと、自己の身体的特徴を割り切ることで。悩んだりすることは、僕の前ではなかったから。
むしろダンスや体操競技にはげみ、大衆に身をさらすことをなんのそのとしていたのです!
彼女は強い子です!
はぁ……、だというのに。
僕とくれば、勝手に、身勝手に、『かわいそう』と哀れみのレッテルを張り。向き合うことを放棄していたのです。
失礼なやつだ。
そんな奴と少女が仲良くなれるはずもなく。小学校の卒業を機に、奇妙な習慣は幕を閉じました。
心には『もっと別のやり方があったのでは』。そんなささくれが名残惜しそうに引っかかっていました。
で、月日はながれ──。
無毛症の少女との関わりも、長らく途切れ。僕だけが一方的に感傷を舐めていたころ。その日は唐突にやってきました。
つい今年の正月。僕が二十一歳、彼女が二十歳。およそ九年ぶりに、再会は叶ったのです。
ひょんなことに、彼女は居間で座っていました。離婚して出ていった父宅へ、正月の挨拶に行ったときのことです。
どういうことかと訪ね。そこでようやく、あの奇妙な習慣の真相を知ったのです。
無毛症の少女は、実父の"娘”だったのです!
我が子同士を遊ばせる。
奇妙ではなく、アレはいたって自然な交遊だったわけですね。
父の再婚相手の連れ子さんであったため、血の繋がりこそありませんし。戸籍上は赤の他人だったわけですが。
まぁ、義理義理の妹といっていい程度には、遠くない関係で、それは大いに驚きましたとも。
面白いのはここからで、お月様こと、無毛症の少女は──。
なんと"とびきりの美人”になっていたのです!?
ウィッグと、つけまつげから始まるコスメ。
眉毛はないので、自分好みの形を描けます。
するとびっくり、満月は立派な、かわいらしい女子大生ではありませんか。
美容に疎い僕からすれば、まさにそれは今作主人公の"魔法”のように華やかで。僕がいたく大切に土葬していた哀れみの、なんて浅ましやかか。思い知らされました。
彼女はとっくに。いやはじめから。僕よりもキラキラな人生を歩んでいた。哀れなのはむしろ矮小な僕じゃないか!?
あわあわしている僕に向け、彼女は言いました。
『ねぇ、年上でしょ。お年玉ちょうだい?』
おうさ、いくらでも出そうじゃないか!
それが贖罪になるのなら!
ぐっばい野口!
以上、勝手に悩んで、勝手に気持ちを晴らした、器の小さい僕からのエッセイでした。
僕が小学生の時に捨てそびれた、ちっぽけな悩みをバカにしつつ、今作の短編小説を読んでみてください。以外と面白いかも知れませんよ(ちゃっかり宣伝)。
ではまた~。