みなさま、いかがお過ごしですか?
いつも読んでいただいて、ありがとうございます。たくさんの星やレビュー、コメントをいただいているのが励みになっております。
三か月の長きにわたって連載してきた「川崎君の華麗(カレー)なお仕事」。とうとう本日をもって完結しました。ただでさえ人気のなさそうな「経済」と、苦しい思いばっかりする「恋愛」、ふたつをかけ合わせた小説であるのに、最後までおつきあいいただきましてありがとうございます。毎日読んでくださる方がいる。それが、最後まで掲載を続けることができた原動力でした。
私の勤めていた会社が倒産して二十五年近くがたちました。
それ以来、ずっと日本の経済があまりよくない。ここ三十年、賃金があまり上がっていない。
そんな記事を目にするたび、「どうして⁉」と思わずにはいられません。だって、こちらでも放送されている「ガイアの夜明け」とか「カンブリア宮殿」なんかを見ると、素晴らしい会社がいっぱいあるのに。
実際、こちらにいると、「日本の会社はどうしてこっちに販路を広げないんだろう」と思うことがたくさんあります。ビジネスチャンスはたくさんあるのに。
こっちの人たちは、「安くていいもの」なんて求めていません。「安いのはその程度」「いいものは、高い値段を払って当たり前」。好きだと思えば、欲しいと思えば値段も見ずに財布を開くのです。好きだと思えば何度も繰り返して買うんです。「ちょっと高いけど、これだけはゆずれないの」。そう言って。
「エピローグ」で高原製作所がヘリコプターの部品の商社と取引を始めましたが、あれは、わたしの友人の会社のことです。彼らから会社の仕事内容を聞いた時、最初に思いました。「これ、日本の小さな製作所が部品、作っておさめられないのかな」。今でも彼らは、世界中から中古の部品を集め続けています。作っておさめている会社はありません。
ダンナの職場では、何か特別な機会に、親愛のしるしとして美しく装飾されたメダルを贈り合う慣習があります。多くの方はそれをわざわざ韓国に発注していました。冬のユニフォームの防寒着のなかに綿を詰めて、温かく作り直す。それも韓国に送ってやってもらっていた。
日本で見た機能的な電化製品や最新の文房具など。子供たちが欲しがりますが手に入りません。数年後、中国の会社が真似して安く作ったものが一瞬広がって消えて行く。
ポッキーはこちらでは「高級志向のおいしいおかし」という位置づけ。ハロウイーンで配ると、子供たちが飛び上がって喜ぶ。カプリコが某量販店に一度だけ置かれた時は、あっという間に売り切れ。最近ようやくグロッセリーストアで「ラ王」が買えるようになりました。ほかの会社のラーメンが一つ50セントくらいで「貧乏人の食事」と思われているのに、「ラ王」は二ドルでも売れる。友達に紹介したら、必ず「どこで売ってるの?」と聞かれる。韓国の「辛ラーメン」なんか、同じ値段で、もうずっと前からたくさん売られているというのに!
日本の会社の皆さん。いいものを安く作って安く売って喜んで、そこで終わらないでください。高く売って、お給料に還元してください。こっちにはこっち特有の「売り方」があります。こっちの有名大学に進学してる方、ステータスだけを得るのではなく、こっちでの「売り方」を学んでください。
どうかもっともっと、日本の製品を世界に広げてください。
わたしは、「絶対に売れる」と信じています。
そんな思いを込めて「川崎君の華麗(カレー)なお仕事」を書きました。「倒産した会社への復讐」ではない。もっと世界を見てほしい。いい製品を広げてほしい。その結果として、日本にもっと潤ってほしい。
それが、この作品に込めた一番の思いです。
興味がある方、一度読んでみてください。
https://kakuyomu.jp/works/16817330648150755526