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『リズベルルの魔』感想

※異世界ファンタジー小説『リズベルルの魔』(著:ときてっと)の感想。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883776436


 これはすごい作品だ。
 王道でありながら変化球に富んだ設定、緩急激しく爽快感のある展開、異世界、ロボ、成長、友情、萌えと燃え、と、魅力が一言で表せない。

 過去の出来事から生きる活力を失いつつあった地球人のジンは、あるとき突然に異世界へ招かれる。そこで出会ったのは瞳の中に鎧の巨人を宿した盲目の少女リズベルルだ。
 わけもわからぬまま、二人は《黒海》と呼ばれる脅威に襲われる。絶体絶命かと思われたとき、リズベルルは誰にも操ることのできなかった巨人を瞳から解放し、ジンに託す。

「海を断ち、天舞う音色、ヴィルフォーナ!」

 その鎧に乗り込んで操り、黒海を退けたジンは、この世界で自らの生きる意味を見出す、一筋の希望を感じる――。

 そんな始まりの物語です。
 異世界召喚からのロボ、敵は魔物や人ではなく《黒海》という災害、主人公はヒロインの父親ポジション……と、かなり面白いところをついてくる設定。

 さて、この作品、私はフォローもしてなければ★も入れず、閲覧すらしていません。
 買いました。
 DLsiteで。
 恥ずかしながら値引きキャンペーン中でしたが。

 演出の上手さが同人レベルじゃないという印象です。
 当然ながらカクヨムだと小説ですが、本来は絵と音楽のついたデジタルノベルです。作品の特徴たる、鎧の巨人《弦奏鎧》がCGで動くさまは本当にかっこいい。
 さすがに音楽は素材を使われているようですが、これこの作品のための曲じゃないの? と錯覚するほどにマッチした曲を選んでいる。
 巨人を呼び出すときの決め台詞も七五調で気持ちいい。あとヒロインの絵、場面ごとに服装が全部違うんですが、ちょっと気合入れすぎじゃないですかね……。

 忌憚のない感想をいえば、個々のクオリティはそれほど突出していません。
 文章は基礎を押さえているものの漢字を開いていないのが目につきますし、絵は癖が強いうえに一部キャラクターデザインが似通っていて描き分けが微妙なところもある。CGは(序盤に限れば)こんなもんかな、と思ってしまうところは否めない。

 ただそれが組み合わさったとき、ものすごい臨場感と没入感を得られます。
 カクヨムで公開されているのは七部あるうちの一部だけですが、それだけでも文庫一冊分のボリュームはあり、キャッチコピーで王道ファンタジー巨編と銘打つのも頷ける。
 更には、『リズベルルの魔』自体が『ほんとうの物語シリーズ』の一つということで、世界観の広がりもすさまじい。

 ちょっとお高いですが、買って読む価値は十分にある、と個人的には思います。たぶん私は同シリーズの別作品も買います。
 序盤を読める体験版があるので、興味があればぜひダウンロードしていただきたい。

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