こんにちは千住です。資料と称して本を沢山読んでいるので、おススメ書籍の紹介をしてみることにしました。
では第一回。脳と認知――外の世界を知覚し解釈すること――の不思議に触れられる本です。電波や毒のあるシナリオの参考にどうぞ。ジャンルをばらして「脳の疾患」「共感覚」「人格障害」あたりを取り上げました。
★「妻を帽子とまちがえた男」オリヴァー・サックス著
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90353.html 脳神経科医が出会った不思議な症例を紹介するエッセイです。
特にタイトルにもなっている「妻を帽子とまちがえた男」「大統領の演説」「ただよう船乗り」の章が印象的でした。
脳や神経が壊れる、しかも一部だけ壊れると世界はこうも不思議に歪んでしまうのかと興味深いエピソードばかりです。妻を帽子と本気で間違えたり、言葉に付随する表情だけを理解できなくなったり、記憶を数秒も保持できず今この瞬間しか生きられなくなったり。
少し専門的な部分もありますが、難しければ読み飛ばしても全然問題なく楽しめます。事実は小説より奇なりとはよく言ったものです。これらの現象が自分の身に降りかかったらと思うと、背筋が冷えるのですが。
★「 共感覚者の驚くべき日常―― 形を味わう人、色を聴く人」 リチャード・E・シトーウィック 著
http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_1127.html 本来離れているはずの五感が結合する体質「共感覚」を紹介する本です。音に色を感じたり、味に形があったり。
共感覚者の実例を紹介しながら、その正体を探っていきます。シトーウィック氏が共感覚を研究するに至った、味に形を感じる芸術家との交流が印象的でした。
数ある共感覚紹介本の中で一番平易かつ面白く、正確な解説を心がけているのがシトーウィックの本だと思います。ほとんどの共感覚本や研究はシトーウィックの著作を参照していました。「脳の中の万華鏡(略)」という続編も出ていますが、専門的な話が多くなっています。物語としての面白さの面でもこちら「驚くべき日常」の方をおススメします。
形を味わったり色を聴く日常に想いを馳せて楽しめる本です。共感覚者の推計数は研究のたびに増えています。あなたの身近にも、居るかも。
★「境界性パーソナリティ障害=BPD はれものにさわるような毎日をすごしている方々へ 第2版」ランディー・クリーガー&ポール・メイソン著
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo05/bn707.html 境界性パーソナリティ障害の患者や患者家族向けの本です。が、当事者のみならず「パーソナリティ障害って何だろう?」というかたにもおススメです。
脳と環境から作られる人の在り様、パーソナリティ。もちろん人それぞれ違い、一癖も二癖もあるものですが、特に本人や周りに苦痛・困難を与えるものがパーソナリティ障害です。
専門的な事柄と具体例、当事者の声、対応策などが優しい文体で綴られており、すっすと頭に入ってきます。BPD者は脳と心の作り、住んでいる世界が違うこと――そして彼らも苦しんでいること――を自然と受け入れられます。医学系の書籍は科学的になるあまり突き放すような文体が多くなりがちなのですが、これなら誰でも抵抗なく読めそうだと思いました。
他のパーソナリティ障害に興味を持ったらぜひ矢幡洋著の「パーソナリティ障害」も。