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致命的に気の利かない人間について

Xにも書いたが、世の中には致命的に気の利かない人間がいる。そういう人間は何かを任せる時、一から十まで説明して都度注意しないと何も出来ないので、運悪く仕事上で関わり合いになると苦労する。
ワイにとってαが正しくそのタイプだった。
昔、内装業の手伝いをしていた時に、使えない新人を横目に親方が不満げにこう零したことがある。人間には三段階ある、言わずとも出来るやつ、言って出来るやつ、言っても出来ないやつ。きっと新人は親方的にとってその三番目だったのだろう。
αはというと、言われたことはある程度こなすが、その中で『ここは言わずとも出来るだろう』という部分の説明を省くと、必ずといっていいほど手が止まる。例えば「この雛形を参考に契約書を作っておいてくれ」と伝えると、普通は甲乙がどちらを指すか教えずともわかる。受注者と発注者がどちらかなんて自明で、それがわからないなら君は今一体どこで働いているんですか? と問いたくなる。だがそんなことを言ってしまうとこのご時世パワハラだ何だと世間が喧しく騒ぎ立てるので、「甲が〇〇で乙がウチだよ」となるだけ優しげなトーンで教えることにしている。
そういったやり取りが一度きりならまだしも、αと関わるとほぼ一日中、三十分に一度は行われる。これが中々どうして精神を抉るのだ。親方の基準を借りれば、αは二番目と三番目の間にいるような感じだ。言えば確かに言われたことはできるのだが、言わなくて良いだろうと思ったことを言い漏らすと言ったことすら出来なくなる。言っても出来ないとわかっている三番目より性質が悪い。
質問してくる時はまだ良い方で、場合によっては自分がわかってないことにすら気付かない。ノーマーク。客に頭を下げれば済む程度の些細な部分ならまだ良いが、時に裁判沙汰になるような重大な落とし穴を放置していることがある。しかも通常教えなくともわかるような常識的な部分を見落としているから始末に負えない。
だが当の本人は自分では仕事が出来ると思っている。見落とした部分は教えてくれなかった人が悪いと考えている。なのでミスを犯す度に注意をしていると大抵こちらが悪者にされる。あいつは細かい所にうるさい狭量なやつだなどと周りに吹聴される。一発でキャリアが終了するような致命的なミスから救ってあげたのにも関わらず。正しく踏んだり蹴ったりである。
だから一度注意するのをやめてみようと思った。放っておくのだ。自分で掘った落とし穴に落ちて痛い目に遭えばいい、と思った。大きな失敗を犯せば、それまで自分がどれだけ恵まれた環境にいたかに気付けるだろう。ワイはその日、αにある仕事を丸投げした。もちろん重要な部分は伝えたが、考えずともわかる常識的な部分はあえて言わかなった。だがそれがまさかあのような結果を招くことになるとは……。

つづく。

4件のコメント

  •  パパスリア  と申します。

    続くんかぁ~~~い。
    でも、契約書関するところは、教えてもらわないと携わった事のない人には分からないですわ。
  • >パパスリア様

    えー、甲は発注者、乙は受注者って書いてあるんですよー? 発注と受注が何かというところから説明しないといけないんですかね。。。大学で何を学んだのか。
  • あぁ~わかります( >д<)、;'.・
    1~10までステップを、伝えても…ゴニョゴニョ。
  • >桔梗様

    1〜10伝えても1.5とか2.3がわからなくて詰まるんですよねー。
    そこは言わずともわかってくれ、わからないなら自分で調べてくれ、調べてもわからないなら過去の事例を探してくれ、探してもわからなければ聞いてくれ、と思います。
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