<第一章>
私立ラーテル女学院に通う女子高生『葵キイロ』はいじめられているクラスメイトを庇った結果、いじめの標的になってしまった。
いじめの内容はシューズボックスや机の中などあらゆる場所に大量の小石を詰められるという陰湿なもの。今日もシューズボックスを開けると大量の小石が雪崩れ落ちてきた。落胆しているとそこに幼馴染である『紬メル』が現れる。
メルはキイロが小石を集めていると勘違いしたのか、自分も小石を集めていていいスポットを知っているから案内すると学校近くの小川に二人で行くことに。
童心に帰って小石を拾っていると、いつの間にか辺りが暗くなっていた。二人は帰ることにし、駅に向かう。しかし、駅のホームで子供が転落。咄嗟にそれを助けたキイロの眼前に急行が迫る。
気がつくと、見知らぬ森の中にいた。しかも何故か昼だ。どういうわけかメルもそこにいて、彼女曰く女神と名乗る人物から二人が異世界転移したと聞かされたという。
森が一体どこなのか考えるキイロだったが、メルが水筒を教室に忘れたと泣き出したせいで思考は中断。挙句、森に住む巨獣に追われる羽目に。
巨獣から逃げるも、崖っぷちに追い込まれてしまう。だがピンチに際しキイロは機転を発揮。スマホを使って巨獣を崖から転落させることに成功するが、自分たちも巻き込まれてしまう。
あわやと思った次の瞬間、キイロは自分が宙に浮いていることに気付く。それはなんとメルが女神から授かった〝スキル〟によるものだった。曰く、自身と触れた物体の質量を自在に変化することができるらしい。
風船のごとくゆっくりと落下していく途中、二人は遠くに城砦都市を発見する。樹冠の上を天狗のように飛び跳ねて移動し、その近くまで行くが、メルの凡ミスで樹上から落下。城砦都市の兵士と思しき連中に囲まれてしまう。
問答が始まり危うく殺されかけるが、キイロの話術とメルの「メルたちは女子高生で、駅から来ました!」という一言により窮地を脱する。どうやら、彼女たちが来ることは予言されていたらしい。それで重要参考人として城砦都市の中に案内されることに。
彼女たちを案内する髭面の巨漢は兵士長ドンゲ。彼を先頭に、城砦都市を治める『クイジ様』が待つ居館へと向かう。道中、ドンゲから色々な話を聞く。城砦都市は〝ミタカ〟という国の東端に位置し、どうやら隣国〝クコキテ〟との戦が控えているらしい。
居館に着き謁見の間に入ると、宰相のザヒムから尋問を受けた。彼はキイロたちをクコキテのスパイであると疑い、そうでないと言うなら異世界から来たことを証明しろ出来ないなら処刑すると脅される。
しかしキイロは機転を効かせ、『悪魔の証明』と『立証責任の転換』という論法を用いてザヒムを言い負かす。尚も食い下がるザヒムを、謁見の間の奥から現れたクイジが「その小娘の勝ちだ」と制す。クイジに客人としてもてなすと言われ、二人は客室へと案内される。
客室で一息ついていると、ドアがノックされて彼女たちと同じ年頃の女の子が入ってくる。彼女はファロと名乗り、二人の世話係を任されたのだとか。ファロは入室して間もなくドジを踏んで水差しを割り、怪我をしてしまう。その手当をするキイロに、彼女は少しずつ心を開く。
ファロの話によると、居館では不審な連続行方不明事件が発生しているという。また、数日前の夜半、彼女はこの世のものとは思えない恐ろしい怪物を目撃していた。
すると、話の最中に突然部屋の窓が破られ、そこから怪物が入ってくる。ファロに数日前目撃した怪物かと尋ねると、そうではないと返される。侵入してきた怪物は〝ガーゴイル〟といい、魔神の神殿を守護する魔法生物なのだとか。
ファロが魔法を使い応戦するが、敵は怯んでいるに過ぎない。このままではファロの魔力が尽きて怪物にやられてしまう。そこでキイロは身動きが取れないでいる怪物にブランケットを被せ、その質量をメルのスキルによって極端に上げることで怪物を押しつぶす作戦を実行。
成功したのも束の間、どこからともなく二体目のガーゴイルが現れ、メルを抱えて飛び去ってしまう。
そこへドンゲが遅れて到着。事情を説明すると緊急会議の運びとなった。
会議の席でメルを守れなかったことを悔やんで泣くキイロに、クイジが「泣くなら結果が出てから泣け」と一喝。ファロの目撃証言により、メルを助けに〝朽ちた神殿〟のある〝ウガミ山〟に向かうことに。そこへ伝令が来て、クコキテが進軍を開始したことを知らされる。
ドンゲとファロ、そして助っ人としてハンターの『シド』が加わり、一行は日暮れに街を後にするのだった。