100話記念の続きを公開したいと思います。
これまで龍一、南と続き、最後はやっぱり楓をメインにしたifストーリーとなります!
タイトルは
「もしも楓が京と別れなかったら」
です!
それではどうぞ
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「起きて……起きて……」
眠っている俺を起こそうとする声が聞こえてくる。
「起きてよ、キョーくん……」
「う、うぅん」
俺は重い瞼を上げながら声のする方へ視線を向ける。するとそこには可愛らしいフリルの付いたエプロンを着けた《楓》が佇んでいた。
「おはよう、楓」
俺は目を擦りながらベットから立ち上がると、そのまま顔を洗いに洗面所へと向かう。
「あっ!おはようキョーくん。早くご飯食べないと講義に遅れちゃうよぉ〜」
楓は右手にお玉を持ちながら朝ご飯の準備を続ける。
(お玉を持ちながら「おはよう」ってまたベタな……でもやっぱり可愛い!)
こんな可愛い子に起こしてもらえるなんて、なんて俺は幸せなんだ!!
さて、察しのいい人なら気づいているかも知れないが俺と楓は現在2人で大学に通いながら同棲している。
楓にプロポーズをした中3の冬から約5年が経ち、一緒の高校一緒の大学に進学した俺と楓は両親(楓の父親と俺の母さん)からの反対を押し切って大学近くのマンションに暮らす事にした。最初の頃はお互いに初めて尽だったので色々と大変だったが、同棲してから1年ほどが経った現在では2人共掃除や洗濯、料理などの家事をある程度こなせる様になり、今では楽しく同棲生活を送っている。
◆◇◆◇◆◇
「そろそろ行こうか、楓」
「はーい!」
楓が作ってくれた最高の朝食を食べ、身支度を済ませた俺は楓と一緒に大学へと向かう。 基本的に大学へは俺のバイクで通学しているので、いつも2人一緒にマンションを出る。と言うよりも、楓を1人で通学なんてさせられる訳がないだろ!!
もし楓が1人でいる時にゴミどもが声をかけて来たらと思うと気が気じゃないわ!!
実際に大学に入学した頃、中学の時よりも綺麗になった楓の事を狙っていたゴミ共が何人も居たし、中にはストーカー紛いの事までしたクズ野郎がいた。(当然そのクズ野郎には俺がたっぷりと制裁を下した後、父さんの知り合いの刑事に引き渡した)
まぁしかしこんな事を言うのはあれだが、ゴミ共の気持ちも分からなくは無い!
なんせ中学の時に比べて、楓はめちゃくちゃ綺麗になった!腰まで届きそうな艶やかな黒髪と絹の様な白い肌、すーと伸びた足にくびれたウエスト、そして本人曰くEはあると言う胸、どれをとっても完璧なまさに大和撫子の様な楓に惚れない男など居ないだろう。
俺自身、こんなとびっきりの美女が俺の婚約者で良かったー!!と、何回くらい神にお礼を言ったか分からないし……
▲▽▲▽
「しっかり捕まってろよ」
「うん。よろしくねキョーくん」
俺はバイクのエンジンをかけると、いつもの様に後ろに楓を乗せて大学へと向かう。
最初の頃は、背中越しに楓の胸が当たって感じる柔らかい感触や楓の甘い香りが俺の理性を削って来たけど今では慣れた。
約5分程バイクを走らせると俺達が通っている大学が見えてくる。
俺達が進学した大学は都内では無く、他県にある音羽大学と言う大学だ。この大学は全国でも有数の公務員就職率を有しているので直ぐに進学を決めた。因み、俺の夢は父さんと同じ警察官で、楓の夢は昔から本が好きと言う事で図書館司書だ。ただ残念ながら、俺と楓は学部が違かったりするので、大学では一緒に居られない時間があったりする為、講義中偶に楓の事を考えて集中出来なかったりする。 その事を楓に話したら、楓は「わたしもキョーくんと会えなくて寂しい時があるから同じだね!」と言って笑っていた。
俺はバイクを駐輪場に置き、楓と手を繋ぎながら一緒に中央棟の前まで歩いていくと
「じゃあキョーくん、いつもみたいに図書館で本を読んでいるから終わったらRINEしてね!」
「OK!終わったらRINEするよ!」
「またね!」
手を振りながら講義に向かう楓を見送った俺は、自分の講義が行われる第二講義棟へ向かう。途中、おそらく一年生であろう女の子達から声をかけられたが講義に遅れる訳にはいかないので、適当にあしらう。
側から見れば「何あの男、感じ悪い」と思うかも知れないだろうが(実際に、数人の女性から言われている)俺にとって楓こそが一番であり絶対なので周りからの評価など特に気にしていないし、ハッキリ言ってどうでもいい。
それに例えアイドルが告白して来たとしても、断ると俺は断言出来る。
だって楓は俺にとって………
◇◆◇◆
全ての講義が終わった後、俺は大学にある貸ロッカーに預けてあるエナメルバックを持って道場へと向かう。今日は3日に一度の柔道部に顔を出す日なのだ。本当は楓との時間を削りたく無かったのだが、高校の先輩であり柔道部のエースである先輩からお願いされて仕方なく3日に一度だけ通うことにした。
「ちわーす!」
「おー木村!ナイスタイミングだわ!」
道着に着替えた俺が道場に入ると、俺の姿を見て先輩が声を上げる。何故かその表情は安堵してる様だった。
「どうしたんですか先輩?」
俺が質問すると先輩は慌てて俺の側に近づきながら
「実はな、昨日からうちの大学の附属高校に通っている柔道部の学生が1人、出稽古に来てるんだけど……その学生がもう俺達の手に負えなくて」
そう言って先輩は畳の中央で数人の部員と乱取りを繰り返している1人の女子に視線を向ける。
「えっマジっすか?相手JKですよね?」
「ああ、マジだ!あの子1人にうちの部員全員がボロ負けした。それも割と手加減されてだ。正直かなり悔しかったが、顧問から彼女が今年インターハイ三連覇を成し遂げたと聞かされてそんな感情は吹っ飛んで行ったよ……あはは……」
苦笑いを浮かべる先輩に少し同情しながら俺は両手を組んで彼女を観察する。確かに先輩の言う通りかなりの実力者であるが、俺は実力よりも彼女の表情が気になった。
約5分程観察した後、俺は隣にいる先輩に聞こえるくらいの音量で
「うーん……確かに重心移動や足捌きはかなり上手いけど……なーんか気に入らないですねぇ」
と呟く。
「えっ?何が気に入らないんだ?」
先輩からの質問に俺は
「えーと、あまり楽しそうじゃ無い言うか、なんと言うか……まぁそんな感じなんで行って来まーす!!」
上手く説明出来ないと悟った俺はそう言って彼女の元に走って向かう。後ろから文句を言う先輩の声が聞こえてくるが無視だ無視!!
中央の畳に上がった俺は休んでいる彼女に声をかける。
「ねぇ、次は俺と試合して貰えるかな?」
すると彼女は俺の事をまるで値踏みするかの様な視線で見ると一言
「良いですよ」
と言って了承する。
「ありがとう。あっ!そうそう、自己紹介がまだだったね、俺は2年の木村だ。宜しく」
「木村さんですね。私は附属高校3年の葵と言います。宜しくお願いします」
「宜しくね葵さん」
お互いに自己紹介を済ませた後、2人はそれぞれ試合用の開始位置に立つと
「模擬戦だしレディーファーストって事で、葵さんが好きなタイミングで始めていいよ」
「随分と余裕なんですね?これでも私、インターハイ三連覇してるんですけど?」
「あはは大丈夫だよ。それに、葵さんじゃあ俺には絶対に勝てないからこれくらいのハンデは必要だしね」
「そうですか……ではせいぜい、1分は持たせてくださいね!」
そう言って葵は素早い足運びで京との距離を詰める。
(とった)
そして葵の両手が京の道着に手をかけた瞬間
ドン!!
と言う畳を叩く音が道場中に響き渡った。
「一本!それまで、だね」
京が倒れている葵にそう告げる。
「「「「「「「…………えっ?!」」」」」」」
素っ頓狂な声をあげている葵を始めとした道場にいる面々を無視して、京はため息混じりに愚痴をこぼす。
「はぁ、ダメダメだね。そんな不用意に道着を掴もうなんて初心者のする事だよ全く……本当にインターハイ三連覇したの?」
京がそう言うと葵は顔を真っ赤にして立ち上がり声を上げる。
「い、今のは偶然です!!もう一度、もう一度です!!」
凡そ高校生とは思えない発言をする葵に呆れながら京は
「いいよ。どうせ勝つし、君が満足するまで付き合ってあげるよ」
と返答する。
すると葵は
「絶対に一本取って見せます!」
と意気込みながら京に向かっていった。
十数分後。
疲労により葵が戦闘不能となった事で試合は終了となった。
試合の結果は葵の惨敗。いや、惨敗と言うには余りにも一方的な試合だった。
果敢に攻める葵を京は軽くいなしながら投げる。投げられた葵はすぐさま立ち上がり再び京に立ち向かうの繰り返しだ。その繰り返しがおよそ15回目に差し掛かった時、ついに葵が立ち上がれなくなり、ドクターストップと言う事で試合が終了した。
一方、大した疲れていない京の方は葵との試合後に先輩と乱取りをして汗をかいた。
時刻は午後6時。
そろそろ図書館の閉館時間に近づいて来たので、京は先輩に
「それじゃあ、俺はここらへんで失礼しますね」
「ああ、お疲れ木村。今日は本当に助かったわ!」
「こちらこそ、久しぶりに楽しい試合が出来て満足ですよ!」
「そ、そうか」
「それじゃあお疲れさまでーすって、その前に」
疲れ果て、壁際で休んでいる葵に京は近づくと
「お疲れ様。今日は久しぶりに楽しい試合が出来て良かったよ。ありがとう」
と言って右手を差し出す。
葵は少し考えてから京の右手を掴み
「こちらこそありがとうございました。次は木村さんから一本取れる様に、練習頑張ります!」
「あはは、きっと葵さんは強くなれるよ!」
と言って京が更衣室へと向かおうとした時、後ろから葵が
「あ、あの木村さん!」
京の事を呼び止める。
「ん?どうしたの葵さん?」
京は振り返って葵を見ると、その顔は真っ赤に染まっていた。
「わ、私、東子って言います!」
「東子さんか、良い名前だね。それでどうしたの?」
「木村さんは、い、今、お、お付き合いしてる人っているんですか?」
「……えっ?!それってつまり、彼女がいるのかって事かな?」
「は、はい!」
「う〜ん……彼女はいないかな?(俺にとって楓は彼女じゃ無くて婚約者だし)」
京がそう答えると東子は笑みを浮かべながら
「そうですか。じゃあ、も、もし、私が木村さんから一本取れたら、私と付き合ってくれませんか?!」
と、提案してくる。
(付き合うって、買い物とかかな?まぁそれくらいなら別にいいか。どうせこの子じゃ俺から一本取るなんて無理だろうし)
「うん、いいよ」
俺がそう返事をすると東子は
「ありがとうございます!絶対に木村さんから一本取ってみせます!」
と力強く決意する。
「そ、そう、頑張ってね」
何故か嫌な予感がした京は、そう言ってこの場から早々に立ち去った。
道場を出た京は楓と待ち合わせしている図書館へと急いで向かう。
するとすでに楓が図書館の前で待っていた。
京は楓に手を振りながら
「ごめん楓、遅くなった」
「うんん、大丈夫だよキョーくん」
「それじゃあ帰るか」
「帰りにスーパー寄って行かないとだよキョーくん!」
「あっ!そう言えばそうだったっけ?」
「もーう!キョーくんは忘れん坊だなぁ〜」
「うぐ……気をつけます……」
「うふふ、しょげてるキョーくんも可愛い!」
◇◆◇◆
スーパーに寄ってからマンションに戻った俺と楓は一緒に夕飯を作りながら、お互いに今日一日の出来事を語り合う。
「………それでね、わたしが書いたレポートが好評されたんだよ!」
嬉しそうに話す楓に
「おおー!流石は楓!俺の婚約者!」
俺は楓を褒めながら後ろから抱きしめる。
「もーう!恥ずかしいよキョーくん」
そう言いながら顔を赤らめる楓に
「えー、だって楓がすげー可愛いんだもん!それに楓も満更じゃ無いって顔してるよ」
「うぅぅ……しょうがないじゃん、キョーくんに抱かれると、安心すると言うか、包まれている感じが心地良いんだもん」
楓は俺の手を握りながらそう呟く。
その声はどこか魅力的で艶やかな声色だった。
そんな声を聞かされて限界が来た俺は、楓の耳元に近づき柔らかい声で囁く。
「今日はもう夕飯抜いて、やらないか」
すると楓は少しだけ間を置いてから
「………いいよ。わたしもキョーくんに抱かれて……したかったし」
と言いながら俺の唇に自分の唇を合わせてくる。
「「んぐぅ……ンッチュ……ンチュ……ンハ…チュ……」」
たっぷり2分程唇を合わせた後、俺と楓は服を脱ぎながらベットへ向かい、互いの温もりを感じながら体を重ねた。
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これにて100話記念のifストーリーは終わりとなります。
この続きに関しましては今の所書く予定はありませんが、もしかしたら書くかもしれません。
それと、もしかしたらサポーター限定としてSSやちょっとエッチな話を投稿するかも……