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『普段は陰キャな俺だが〜』の100話記念ifストーリー もしも楓が京と別れなかったら 前編


100話記念の続きを公開したいと思います。

これまで龍一、南と続き、最後はやっぱり楓をメインにしたifストーリーとなります!

タイトルは
   「もしも楓が京と別れなかったら」
                   です!

それではどうぞ

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季節は冬。
 寒さから人肌とコタツが恋しくなる今日この頃、俺と楓ちゃんは誰もいない空き教室を使って、2人だけでお昼ご飯を食べている。

 門倉が楓ちゃんを泣かせたあの忌まわしい日から半年が経過した。あの日、俺から全ての事情を聞いた父さんが学校側に抗議と調査を申し出たのだが、門倉の親による圧力を受けていた学校側は適当に言い訳をしてそれら全てを拒否した。

まさに学校と言う社会の闇だと言えよう。

 その事に憤慨した父さんが、楓ちゃんの上履きに入っていた画鋲や破られたノートなどから指紋を採取して証拠を揃え、楓ちゃんや楓ちゃんの両親と共に学校側に再度抗議を申し出た。
 後から聞いた話だけど、この時父さんが指紋を調べる為に捜査一課長に頼んで鑑識課を動かしたらしい。

本当に父さんには感謝してもしきれないよ全く。

 流石の学校側も動かぬ証拠や証言により本格的に調査を開始し、その甲斐あってこれまでに門倉からイジメを受けていた複数の学生が名乗り出た事でついに門倉とその取巻き達の罪が公になった。 最終的に門倉と取巻き達は退学となり、父さんが教育委員会にいる知り合いに学校側の不始末をリークした事で、圧力に屈していた校長を始めとする学年主任や担任達が纏めて学校を去る事になり多少のゴタゴタはあったけど、お陰で楓ちゃんと2人で平和に学校へ通えるようになった。

それから半年、俺は夏の大会で念願の全国優勝を果たし、両親との約束を見事に達成する事が出来た。あとはテストの順位を落とさない様にするだけなので、今は毎日の様に楓ちゃんとの幸せな時間を楽しんでいる。


「はいキョーくん、あーん!」

そう言って楓ちゃんはお弁当から唐揚げを摘んで俺の口下に近づけてきた。

「あーん!パク……美味い!それじゃあ俺からもあーんしてあげるよ!ほら、あーん」

 俺は唐揚げを一口で食べると自分のお弁当から唐揚げを摘んで楓ちゃんの口下に近づける。因みに俺と楓ちゃんが食べているお弁当は楓ちゃんの手作りだ。

「もーキョーくんはしょーがないなぁ、パク!もぐもぐ……」

 楓ちゃんは頬を少し赤らめながら唐揚げを食べる。

「どう、美味しい?」

俺の質問に楓ちゃんは

「美味しいよキョーくん!やっぱりキョーくんに食べさせて貰う方が美味しく感じるわ!」

と、満面の笑みで答えた。

「それは良かった。俺も楓ちゃんにあーんして貰った方が美味く感じるよ!」

「もーキョーくんったら!恥ずかしいよぉ〜」

「えー、先に言ったのは楓ちゃんの方じゃんか」

「わたしは良いの!」

「ひどい!」

「ふふふ」

こんな感じの惚気を繰り返していると、突然楓ちゃんが

「ねぇーキョーくん。今日は部活を休んで放課後、屋上に来てくれないかな」

と、真剣な表情で言ってきた。

「別に良いけど、部活休まなきゃダメ?」

俺がそう質問すると楓ちゃんが

「ダメ!絶対にダメ!」

「うーん、楓ちゃんがそこまで言うなら……今日は部活を休むよ」

 楓ちゃんの圧に押されて俺は部活を休む事にした。

「ありがとうキョーくん!それじゃあわたしは、ちょっと用があるから先に教室に戻るね!」

「オッケー」

 俺が返事をすると楓ちゃんは空のお弁当箱を持ってドアの方へと向かいながら

「ねぇキョーくん、放課後、屋上で待ってるからね!」

 何か覚悟を決めたような表情をしながら、そう言って教室へ戻って行った。


◆◇◆◇◆◇

〜放課後〜

 俺は言われた通りに屋上へと向かう。屋上は基本的に鍵がかかっているのだが、屋上にある花壇の手入れが仕事の園芸委員である楓ちゃんは、鍵を借りる事が出来るので屋上に出入り自由なのだ。

 屋上へ続くドアの前に到着した俺は、その場で何度も深呼吸をする。

「すぅーーはぁーーすぅーーはぁーー……よし!行くぞ!」
 
ガチャ!!
 
 俺が屋上へ続くドアを開けると、そこには沈みかけている夕日をバックにして、まるで天使の様に微笑んでいる楓ちゃんに佇んでいた。

「綺麗だ……」

 俺は思わず呟く。それほどまでに今、この瞬間の楓ちゃんは綺麗だった。

 俺が見惚れていると楓ちゃんが

「来てくれてありがとうキョーくん。わざわざ屋上に呼び出してごめんね、どーしてもここじゃないとダメな事情があって……」

「大丈夫だよ楓ちゃん。それに俺は楓ちゃんの為だったら何処にでも行くよ!」

 申し訳なさそうに話す楓ちゃんに俺はそうフォローを入れた。

 あの日、保育園の時に楓ちゃんを初めて泣かせてしまったあの日から、俺は楓ちゃんの為ならなんだってすると決めている。側から見れば気持ち悪いと思うかもしれないが、これは俺にとっての誓いであり誰にも譲ることのできない一線だ!


「やっぱりキョーくんは優しいね」

「俺が優しくするのは楓ちゃんだけだよ。それで、さっき言ってた事情って?」

俺が質問すると楓ちゃんは真剣な表情をしながら答える。

「半年前、キョーくんがわたしのせいで停学になったあの時、自分が今までどれだけキョーくんに守られて来たのか知ったわ」

「………」

「それと同時に怖くなった。もしキョーくんがわたしの側から居なくなったらって……」

「……」

 体を硬らせながら喋る楓ちゃんに対して、俺は否定も肯定もせず、ただ話を聞いているだけだった。すると楓ちゃんは覚悟のこもった声色で

「だからわたし決めたの!!」

と言った瞬間、楓ちゃんがいきなり俺に抱きついてきた。

「……えっ?!」

俺が困惑する中、楓ちゃんは俺の首に両腕を回しながら顔を目の前に近づけて

「これがわたしの覚悟よキョーくん!」

チュッ!

俺の唇に自分の唇を合わせてきた。

たっぷり1分程お互いに唇を合わせた後、楓ちゃんは可愛らしい笑みを浮かべながら

「キョーくん……木村京さん。初めて出会った時から貴方が好きです。わたしと一緒に居て下さい」

と、顔を真っ赤にして告白をしてきた。

「楓ちゃん!!」

俺は叫びながら楓ちゃんの事を強く抱きしめる。

「あ、あわあわあわあわあわ」

突然俺に抱きしめられた事で動揺している楓ちゃんを他所に俺は

「天音楓さん。俺も初めて会った時から貴女の事が好きです!!一生大切にします!俺と結婚して下さい!!」

プロポーズをした。

すると楓ちゃんは両目から涙を流しながら

「は、はい。こちらこそよろしくお願いしますキョーくん」

俺のプロポーズを受けてくれた。




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