自費出版裏話第10段。最終回はまとめとして、自費出版をした感想を書いていきます。
これまで自費出版の流れを細かく紹介し、併せてその時々の気持ちも書いてきました。契約締結時や校正作業をしていた時にはすごくワクワクしていたけれど、いざ出版の時期が近づくと売り上げへのプレッシャーが強くなり、意外と喜べなかったのはこれまでご紹介してきたとおりです。
ただ、それでも私は出版という選択をしてよかったと思います。それは自作が人目に触れる機会を持てたからだけではなく、周りの人に喜んでもらえたからです。
身近な人が本を出したというインパクトはやはり大きいのか、出版の話をすると大体の人が驚き、関心を持って話を聞いてくれました。普段本を読まない友人も興味を持ち、実際に書店やネットで探して購入してくれました。読んで感動したと言ってくれた人、他の人にも勧めてくれた人、出版という決断をしたことを賞賛してくれた人。反応は様々でしたが、とにかくみんな一緒になって喜んでくれて、私の方が恐縮してしまうほどでした。自分だけでなく、他の人にも希少な経験を提供できたこと、それが自費出版によって一番得たものでした。
思うに、自費出版というのは作品を形にすること自体に意味があるのであって、売り上げは大した問題ではないではありません。売り上げだけを気にすると現実を目の当たりにして落ち込んでしまいますが、自費出版の醍醐味はそれ以外の点にある。それは自作が一般の人の目に触れたり、逆に普段本を読まない知人に手に取ってもらえ、その経験を通して周囲を喜ばせることだったりします。
もちろん、作品を形にするだけなら同人誌でもいいと思います。私は同人誌には興味がなかったので最初から選択肢にありませんでしたが、その方が費用を抑えられるのは間違いありません。ただ、同人誌だとどうしても自分の周りにしか広めることができないため、作品の広がりという点では限界があると思います。
一方、自費出版であれば出版社と提携する分、書店に置いてもらえたりネットにも載せてもらえたりして、幅広く自作を広く知ってもらう機会を持てます。売れる保障はないにしても、書籍化という夢を叶えられる点で、自費出版は一つの手段だと思います。
高額な費用がかかる以上、誰にでも気軽にお勧めできるものではありませんし、今回、自分が出版をできる環境にあったことは幸運だとも思います。
でも、もし思い入れのある作品があって、出版できるだけの条件が整っているのなら、一度試してみる価値はあると思います。
今回で連載は終了です。このノートが少しでも自費出版を迷われている方の参考になれば幸いです。
長らくお付き合いくださりありがとうございました!