早朝にまとまった文章を上げておいて、また補足するのも何ですが。
『余話』でもちらりと書きましたが、私は「異世界転移」というものを「理不尽極まりない事故」「抗えない力による拉致事件」として考えています。
よく考えてみればそうです。別に本人は異世界に行きたいと思ったわけではないのですから。冗談で思うくらいはあるでしょうけど、本当に起こるなんて思わないでしょう。
ですから作中でも、転移した途端「事故」「事件」の扱いで警察案件となって大ごとになるわけです。特殊な事件なので専用の呼称として「転移者」と呼ばれていますが、『余話』で何度も書いています通り要は他の事故事件と同じく「被害者」なんですよ。
もちろん他の異世界転移ものでも同じなのですが、基本的に「被害者」という意識は薄められるか意図的に省かれているようです。これは作品の目指す方向性とコンフリクトを起こすのを避けるための処置でしょうから、ある意味仕方ありません。
そういう中で「被害者」という事実や意識に極限までクロースアップしたらどうなるか。そう考えて書いた末があの生々しく重たい被害者の思考や言動です。
『余話』でも注意を入れましたが、この作品はアンチテーゼではありません。単に転移転生もので余り目をつけられなかっただろう部分に、私が興味を持って書いたらこうなったというだけです。
……でも正直なところ、どの時代でもどの世界でも知らない世界にいきなり放り込まれて平気の平左でいられるわけないと思うのですが。何せ人間暮らすには適応というものが必要です、それがどれだけ血のにじむ努力になるやら。
もっともそういう堅いことを無視して成り立つジャンルでもありますし、当方としては自分の考え方ややり方を押しつけよう気は全くないのですけどもね。