『夜に猫が身をひそめるところ』と『世界でいちばん幸せな屋上』

私は小さな頃、推理小説、いわゆるミステリーが大好きでした。

謎が謎を呼ぶハラハラ、ドキドキの展開が本当に好きで、いつもワクワクしながら本を読み進めたものです。

でも、必ず最後に訪れる「謎解き」だけは、どうしても苦手でした。

何で名探偵たちは、あんなに面白い謎を、そのまま放っておいてくれないのだろう?

何で自慢気な得意顔で、「君たちには難しいだろう、解いてあげるからありがたいと思いたまえ」と言わんばかりに、謎を解明してしまうのだろう? と、いつも思っていました。

私としては、謎は謎のまま、そのままそこにずっと置いておいて欲しかった。

その方が、ああでもない、こうでもないと考えながら、ずっと長く楽しめる。映画『バートン・フィンク』の、あの小包みの中身みたいに。

というわけで、今回紹介したいのは、そんな私が好きなミステリー2作品、『夜に猫が身をひそめるところ』と『世界でいちばん幸せな屋上』です。

これはミルリトン探偵局シリーズとして発売されていた本で、クラフト・エヴィング商會さんの作品となっています。著者は「吉田音」さん。

中学生の吉田音さんが、不思議な猫に導かれながら、様々な「謎」を解いてゆく、短編オムニバスのような形式の小説で、一編がちょうどいい長さになっているので、どなたでもすごく読みやすい本になっています。

ミステリーのようでミステリーでない、謎を解くようで謎を解かない、というような、ちょっと不思議な作品になっていますので、猫好きの方、変わり種ミステリーが好きな方に、特におすすめしたいです。

こちらの本は二冊とも残念ながら絶版になっているみたいなので、興味のある方は図書館などで探してみてください。

変わり種ミステリーとしては、ドストエフスキイの『カラマーゾフの兄弟』が有名ですが、こちらは言わずもがなの古典の名作なので、まだの方はぜひ。

それでは。

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