こちらに伺ったのには理由があります。ひとつには、やはり私が他の皆様のお話の中で発言すると場違い感が尋常ではないなと、申し訳なく思えたからです。しかしこちらならば、もう他の誰もお気づきにはならないでしょう。つまり、もしこれ以上私の言葉はいらないとお思いになりこれを削除なさることになっても、誰も何も知ることはありません。無論そうなった場合は完全に私の非なので、私が何かをとやかく言うことはありませんし、そもそもそんな資格もありません。結果そういったことを考えると、こちらに伺うのがベストなのだろうと私には思えました。ですからもしこれが不要なら遠慮なく消去なさってください。それですべてさっぱりなくなります故。 というのは、RAY さんのことを慕っていらっしゃる多くの方々の目の前でまがりなりにも攻撃しているように映るような文章を書くのは、正直いたたまれないような辛い感覚を覚えるのです。そして私の意図の所在にかかわらず、仮に誤解が生じた瞬間には RAY さんもその方々も不快な思いをなさることになるでしょう。それが私にはたまらなく申し訳なく思えます。私の想いがどうであれ、RAY さんの真意がどうであれ(正直 RAY さんの方が義務感から私の言葉をお聞きになっているのではないかという心配があります。ストレスの溜まる会話なのではないかという心配も......)、どなたかが負の感情を抱いた時点で私は RAY さんとその方に迷惑をかけてしまったことになる。そういったことを極力避けられるように立ち回りたい。こちらに訪問したのはそんな気持ちの表れです。不自由だとは思っていないのでその点はお気になさらないでください。むしろ RAY さんの手を煩わせはしないかと私が心配です。数多くの非礼を改めてお詫びします。 ......もうひとつの理由は、やはりここの方が、私には落ち着くからです。変なこと言ってすみません。でも本心です。
まず一つ目についてですが、私は冒頭に入ってからの流れるような展開を読み進める中で、「ああ、これは潤一郎がシャールに気づく展開なのだろうな」と漠然と思うようになっていました(きっとそう思わされていたのでしょう)。ですから、まずシャールが潤一郎の登場を揶揄するような発言をした時点で「そうではないのだな」と思い注意がひきつけられ、しかしまたもや安直に、突如として登場したサラが何らかの役割を果たすのだろうなと思うようになりました(目が覚めたらすぐに気付くものだろうと)。ですが話の流れの中で両者とも気付くそぶりを見せず、シャールも二人を散々コケにしたような発言をし、陽子も自身の行く先を諦める。ここで驚いたのは言うまでもありません。これはもう作者という立場でも手の施しようがないだろうと思いました。が、ここで先に挙げたサラの発言です。それはそれは度肝を抜かれましたよ笑。思えば、「死神が見えたり声が聞こえたりというのが可能な人は部屋に入ればすぐ感知するものだろう」という先入観があったために、時間差でサラがあのような発言をするとは露ほども思わず。ですので、続くエピソードでサラがイベント経験者であることを述べた際もそうきたかと唸りました。この場面は個人的には RAY さんの手腕がとてもよく発揮されたところだと思っていて、つまりは「イベント上がりでかつ生存しており、さらにそのものが陽子の今際に居合わせる」という状況にいわゆるご都合主義感を感じませんでした。そうさせたのはきっと見せ方の上手さと構成の巧さでしょう。その展開は本当に私をわくわくさせてくれました。 しかしここでシャールの悪意が厄介な方向に発動しましたよね笑。RAY さんは他の方とのお話の中で「法廷闘争部分についてはあえてあらすじ等からは推測できないようにした」と仰っていましたが、読者の方で「職業をあえてしっかりと明示していたのはなんでだろうと疑問に思っていたけれど、そういうことだったのかと納得した」と仰っていた方の言葉に私も賛同します。私は前々回のコメントで「見せ場のためにお膳立てしているような展開が続いているように思えた」と失礼を申しましたが、逆にその準備の段階が見事に集約された法廷闘争部分は見応え(読み応え、ですかね)抜群でした。これは間違い無く RAY さんの手腕といいますか、ドクターの夢の時にも思いましたが、紡がれたすべてが大テーマにきちんと結実するんですよね、RAY さんの小説って。RAY さんの場合の「無駄な描写がない」というのは、いろいろと削ぎすぎて描写が少ないということではなくて、むしろちりばめた数多くの描写を少しも洩らさず掬い上げることが実現されているということだと私は思っています。つまり RAY さんの物語というのは、私が初めて差し上げたレビューに書かせていただいた「この先この話が面白くなるという確信めいた感覚」が大テーマが来るまでずっと続き、その後大テーマが来ると、安定した上昇気流に乗ってどこまでもグライダーで空を飛ぶような安心感を以て存分に楽しめる、そんな物語だと思っています。ドクターの夢の時のそのレビューでは何が「この先この話が面白くなるという確信めいた感覚」をもたらしてくれるのかはよくわからなかったのですが、今となっては少なくとも、RAY さんのその文章体系が大きな役割を担っているのだろうなと思えます。
こんばんは! 毎度長々としたコメントのせいで辟易とされてはいないかと心配でしたが、喜んでいただけたようで私も嬉しいです。追記は本当に名ばかりでした笑。それだけ読中読後に様々な想いが募ったということなのでしょうね、きっと。そんな小説にはなかなか出逢えませんから、私にとっても RAY さんの作品を拝読させていただくのは貴重な体験です。
陽子の性格のお話は頷く部分が多かったです。というのも、自分にも似たようなところがあるなあと思い当たる節が割とあったものですから笑。小説を読む中でうっすらと感じていたことが RAY さんの言葉によりはっきりと表れていたことで、彼女の人間像がよりクリアにつかめた気がします。RAY さんの仰ったように少し引いた視点で第三者的に見ると、陽子もしっかりとした精神的土台のある魅力的なキャラクターに思えてきて。(なんとなく野暮なことが頭をよぎったのですが、もし三人称で書かれた小説だったならば、彼女に対する印象が少し変わっていたかもしれないな、なんて思いました。 <主人公> というレッテルをそこまで大々的に貼られなくて済むおかげで、長所も短所もある一人の女性として「陽子」というキャラクターが受け入れられたかもしれないなあ、と。まあそうすると一人称特有の「我が身に起きている感」や臨場感を演出するのが難しくなってしまうのですけどね。本当にただのぽっと出の思いですから笑。そんなに気になさらないでくださいね '∀') )
それから、後につながる撒き餌を設置しておくというお話も頷けます。ある意味では複線の役割を果たしてくれますよね、そういう小道具の存在って。やはり無駄のない描写を心がける RAY さんらしいです。 ちなみに慣れてきた人は騙しづらくなってくると RAY さんは仰いましたけれども、わかるようになればわかるようになったで、驚きとは違う感情で楽しめるものですよ。元々の表現レベルが高いほど、余韻を楽しめたり構成技巧を楽しめたりと、ポジティブな効果が副次的に生じるものだと私は思いますから。