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【日記】感性が飛び散る

 新しい小説のプロットを考えていて、感性が四方八方に飛び散り収拾つかなくなっている。人間が発する「白か黒か」という問いは、ほぼ全問「貴方の好きな灰色を見つけてください」が最適解になるのでは。だから範囲が広すぎるって言ってんだよ、ずっとそう、私は言っているんだ。ほんとうは早く練り終えて執筆に移行したいのに暴れまわる感性があれもこれもと無限色に馥郁と鳴り響くから、甘かったり苦かったりするそれを制御できなくて、落ち着こう、落ち着こう、と本ばかり読んで過ごす、三連休。仕事のことも家事も将来も死にかたのことも思考するのを放棄して読書家でもないのにこのひと月で18冊読んでいた。110円で適当に選んできた古本を消費して眠らない。もう30歳にもなるのにだ。大人げない。本は私の視野を狭めてくれる。言葉は意味の範囲を少しずつ確定してくれる。私はなにをしたいのだろう? 恥ずかしい。こうやって最後まで生きてゆくのか。焦りがじっとりと汗となって落ちる、落ち着こうと私は扇風機を内から外に向けてまわしベランダで煙草に火をつける。甘いココアと苦いレギュラー。両親を見捨てて昇給してやっと購入できるようになった人間らしい生活。生きている、という感じがする。

 死にたがりの証明をするための執筆で、生きたがっているということを証明したいのだ。あああ。文庫本から目を離した途端にまた、色彩が散らかっていく。縁を切った家の道路へはみだしたおおきな桜の木を想う。私の好きな灰色はまだ見つかっていない……。

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