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異常図書メイキング15

[おまもりノート]
異常知識に分類される異常図書を増やそうと考えて着手。

異常知識は「確認可能な通常知り得ない事実」をまず探さねばならず、ここで一味違うものをと狙ったために、アイデア探査船は難航、沈没。
やはり王道から埋めようということになり、ヒトの心を無遠慮に暴き立てる邪悪な異常図書に決まった。

ではどんな心を暴くのか。多数の犠牲者が出そうな暴露とは? それを考えて行き着いたのが、学校の配布物だった。それが隠し事のある家庭に投げ込まれたテロリストの情報爆弾だったら、修羅場になりそうじゃないか。

そこまで決まってからは、突きあたりまでスムーズだった。
神州文化保存学会なら学校に嬉々として手を出すだろう。
政府の中には過激な国粋主義者がいてもおかしくない、文部科学省と癒着させよう。
監視下の神州文化保存学会が何故活動できるのか? 警視庁も疑わしい。
この事件には圧力がかかるだろうから、報告書は異常図書焼却課の深奥に隠されていることにしよう。
そうして[閉架図書館]ができ、突きあたりに来た。

ここで迷いが生じた。
異常図書焼却課の閉架図書館は、限られた――全ての黒塗りの中身を知る権限のある――人間しか閲覧できないものだ。
とすれば閉架図書館に置かれた報告書に黒塗りは一切使えない。日時も地名もボカすことは許されない。
2018年6月8日に、報告書に書いてあるような事件が起きなかったのは明白だ。特にその日、愛知県豊明市の前後交番に勤務していた警官にとっては(貴官までこの異常図書の報告書が届くかどうかは別として)。
黒塗りや[検閲済]を駆使して、ウソと真実の間にあるウソ寄りのグレーゾーンを漂うのが、報告書体というものではないだろうか?

公開ボタンを押すか否かで迷いに迷った果て「█、██████████████████。████████████████?」という内なる声が聞こえたのでボタンを押した。

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