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KAC20226

「焼き鳥が登場する物語」

 あの日僕らは二人でしハツ列車を待っていた。
 彼女は僕にもたれかかりながらこう言った。
「なんかサ、サミしい気分になるよね」
「夜明けに? これから朝が来る時に?」
 僕は彼女に尋ねた。彼女は、
「ないスナギモんね。でも、私は寂しいの。だからもっとくっツクネ」
 僕は彼女の体温にどきどきしていた。このムネの高鳴りが、彼女に伝わっていないだろうか? 心音が波のように寄セ、セリ上がるような気持ちだった。
 なんとなくスマホのニュースアプリを開き、今日も世の中で嫌なことがたくさん起こっていることを知る。見なきゃ良かったな、と思った時、彼女がスマホの画面を防ぐ。
「そんなの、ただのサエズリだよ。見たってしょうがないよ」
「しょうがないけど、でも、見ないふりをしたって現実に起こっているわけだし。知らないふりをするのは欺瞞なんじゃないかな」
「そうネ、ギマんよ。でも、真摯に向き合ったって、私たちに何ができる? ただのボンジリの私たちに。札束をナンコツみあげても解決しないような問題に?」

 確かにそうかもしれない。特に、隣にいる女の子に積極的にアプローチもできないような僕にできることなんて何もないかもしれない。だから僕はスマホをポケットにしまって、彼女の顔を見つめる。そして言う。

「君の言うことがきっと正しい」
「そうだよ。私はくレバーなんだからね。あなたは私についてくればいいの。カワいい人」
そう言って、彼女はほとんど僕に抱きつく。まるで、つくねに卵が絡みつくように。

「明日モ、モう一度会えるかな」
 僕はなんとかそう言った。
 多分彼女は微笑んだんだと思う。僕の頬に触れる動きで僕はそれに気づく。彼女が囁く。

「それじゃ、また串鳥でね」
夜が明ける。明るい日が昇る。僕たちは明るい日の中にいるのだ。


 ※串鳥は北海道に沢山ある焼き鳥チェーン店です。この物語で唯一の焼き鳥要素ですが、まあ、1箇所でも出てきたらいいんですよね?

2件のコメント

  • お久しぶりです。
    相変わらず雲上の頭脳をお持ちで、もう本当に、好きです! その才能が育まれた環境が知りたいです!!
    しハツから、「わぁ好き!!」と、なりました。
    ナイスな疑問がなかなか分からなくて、ボンジリが解らないままの残念な頭しかないのですが、ぼちぼち付かず離れずフワフワ宜しくお願い致しますです。
  • ぼんじりというのは、鳥のしっぽあたりにある希少部位のことを言いまして、たぶん「鶏口になるも牛後になるなかれ」から考えると、鶏の尻になるのってド最悪だと思うんですが、そこにしかいられないよねみたいな、自虐的ニュアンスを持った言葉なのかなと思ってます。でも僕は彼女ではないので、本当のところはわからないままです。
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