『救国の黒姫は、瑠璃の夢に微睡む』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(読まずにネタバレだけ読むのも、大歓迎ですよ。笑)
こちらの作品は、昨年参加したカクヨムの『運命の恋コンテスト』中間選考突破&アルファポリスの『ファンタジー小説大賞』奨励賞(最終選考)作品である、『後宮の黒姫は、冥門に微睡む』の大幅改稿&加筆修正版となります。
角川キャラクター小説大賞エントリーのため、またしても無謀なスケジュールで書ききりました。間に合ってヨカッター!
今年に入って三本の長編(男装事変、死神お世話、黒姫)+短編集(タグ・アンソロジー)をかき上げているという無謀っぷり。是非笑ってやってください。
こちらの作品は『和風ファンタジー』ということで、アイテムや設定、組織や用語など漢字が多かったですね。作者史上、一番ルビ多かった!
調べ物もその分多かったですが、これだけ頑張って創ってるよ! というのは表に出すものではなく、さらさらと本編を楽しんでいただくのが、作者にとって一番の喜びです。
これより、作者恒例のネタバレあとがきとなりますが、あくまでもお話の裏話として楽しんでいただければと思います。
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私にとって、『後宮黒姫』は和風ファンタジーへの初チャレンジ作品でした。
運命の恋コンテストは六万字までという文字数縛りがあったため、ぎゅううと圧縮して書かざるを得ず、また平安モチーフを謳いつつも勉強不足で、非常に悔いが残っていました。
元々、夢枕獏先生の『陰陽師』シリーズが好きなので(特に『生成り姫』)、ああいうの書いてみたいな~というふんわかした気持ちはありつつも、平安そのものは詳しくないので無理。ならば異世界ファンタジーにしてしまえばいい! と見切り発車した作品です。
まだまだ勉強不足ですが、ちゃんと十万字ぐらいで書きたいという思いがあり、角川キャラクター小説大賞の広告を見て、これに出せばいいんじゃね? になりました。何を隠そうこのわたくし、非常に飽き性なので、締め切りがないと書かないんです。げふんごふん。
図書館に行って平安時代の風俗に関わる参考書を借りて勉強し、陰陽師の成り立ちから役割まで学び、呪術やマントラを勉強し。
付け焼刃ではあるものの、前よりはマシになったと思うのですがいかがでしょうか。
(作中で唱えている真言は、実際のものになります。迂闊に唱えるとダメですよ~。)
特に|四角四堺《しかくしかい》祭。これ本当です。「東は扶桑~」もです(紫電、黒雨とかは追加しました)。
ご興味ありましたら、ぐぐってみてくださいね。
あと、作中の池と赤い太鼓橋は、『えさし藤原の郷』をイメージしております。『陰陽師ゼロ』のロケ地です。ムネアツです。
建物のイメージはもちろん、束帯って? と思われる方はこちらも是非見てみてくださいね。私は中尊寺金色堂に旅行で行ったことがあるのですが、本当に素晴らしいです。あの世界観を描写できる筆力が欲しい。
改稿すると決めた時に、ストーリーラインを変えるつもりはなかったものの、中編だからと場面転換で背景説明を差し込んだ部分を、がっつり削りました。亡国の国宝エピソード(幽世にいた頃のギー)は全部消しましたね。代わりに、龍樹の生い立ちみたいなエピソードを入れました。
特にぬえとギーの対決は大幅に変更しています。改稿前はふたりきり。改稿後は、夜宮の沙夜たちの目の前で繰り広げました。沙夜の境遇と心境がどう変化していくか? にもっとフォーカスしたいと考えて、そうなりました。
そして、運命の恋ですが。
かっこいいから。助けてくれたから。だから魅侶玖を好きになる。
それでもいいし説得力はあるかもしれませんが。
沙夜はそうじゃない。瑠璃玉の陰陽師という、大きな宿命を背負っている。
皇帝に忠誠を誓い、国を支える存在にならなければならないのを差し引いても、皇雅国をよいものにしていきたいと奮闘する魅侶玖だからこそ、寄り添いたい。一緒に悩むし、喧嘩もする。
あと、主人公が大きな力を得たからといって、サクサクもののけぶっ倒す! とは書けませんでした。
使い方が分からない。傲慢になる。怖くなる。
葛藤と躊躇いはあってしかるべきだし、周囲にどれだけ恵まれたとしても、自分自身の力で立たないと意味がない。
まっすぐで、正義感が強くて、人にももののけにも好かれる。
時々弱くて鈍感で、拗ねたり逆ギレしたりする。
沙夜はそんな等身大の女の子であって欲しいなと思っていまして。
修行辛い~なんて言わせたらダメなんでしょうが。書いちゃいましたね。
どの作品もそうですが、登場するキャラたち、みんな大好きです。
サブキャラでは特にギー様・玖狼・愚闇ですね。途中から那由多も。ぐあんたん・なゆたんコンビって楽しそう。どこかでまた書きたいですね。
玖狼の存在感は、序盤から際立たせるように意識しつつ、ところどころで烏が鳴いています。
ギー様は鬼なので、常に欲が香るような淫靡さと雅さを意識しました。ふっくっく、と笑うのは牙が邪魔だからです。可愛いです。
序盤の沙夜は非常に辛い境遇で、いったいどうなるのだろうと思われたに違いありませんし、ラノベの傾向で言うと『鬱展開は嫌われる』てやつですね。
それでも、地獄のような苦しみを味わってこそ、人に優しくなれるヒロインを書きたかったです。
どろどろとした後宮の空気は、女性独特ですよね。
弊社オフィスにいる嫌~な女性たちを、脳内に集めて煮詰めて書きました。
そんな中でも、救いは玖狼のモフモフ。私も欲しい。しかも喋るし、慰めてくれるし、お腹を吸わせてくれる。最高です。
愚闇は烏天狗ですが、玖狼の神力で無理やりに、なので修行不足です。
本当は天狗というからには、修験者で神通力も剣技ももんのすごい妖怪なんですが。まだまだ幼いので、失言多めです。きっともっと沙夜に甘えたいと思っているはず。
桜宮は、沙夜が姫っぽくないので、これこそ姫! を目指して書きました。
大事に育てられた気品のある女性なわけですが、許嫁は火遊びに興じてしまった。まあ平安貴族ならさもありなん、なわけですが、少なくとも『許嫁』なので、縁を反故にする行為とみなしています。改心した龍樹と幸せになって欲しいですね。
魅侶玖は一応ヒーローなので、凛々しくがんばってもらった……はずです。
ただ、作者には(ご存じの方は多いと思いますが)ポンコツ好きというヘキがございますので。ところどころちらほらと。すみません。
左大臣九条に言われるまで、自分の恋心に気づかないポンコツっぷり。沙夜の前でだけガキっぽい。たぶんずっと愚闇と張り合っていくと思います。
夕星が沙夜に母として寄り添うエピソードは、なんか自然と書いてましたね。
宿命のためとはいえ、十二年も子どもを手放す。どれだけの辛さなのでしょうか。
夕星も報われて欲しいと思いました。
沙夜は、親にちゃんと愛されていると知った。だから余計に寂しくなってしまったんです。
これは私のことですけれど、がむしゃらに頑張って無理しているうちは走れるんですけど、「終わったー!」「もう休んでいい」ってなったら急に不安になりませんか? これでいいのかな。正しかったのかな。明日からどうしよう? みたいな。
共感いただけたら嬉しいです。
クライマックスである継承の儀ですが、儀式ばっかりダラダラ書いてもつまらないので、こうなりました。すごくちゃんと儀式の流れを考えたくせに、すぐに投げられるのは私の美点と信じたいです。
邪魔する奴は絶対出さないとなと思ったものの、国の礎を支えるものなので、ぶっ壊すのは無理。
ならば……と瑠璃玉の陰陽師に敵対する『呪水法師』の名前だけ出ました。安倍晴明に対する、蘆屋道満ですね。
青剣の眷属であるハク(伯奇)は、本編では触れていませんが、獏です。だから夢に出てきます。皇帝はその身に穢れをどんどん引き受けるので、悪夢を見て眠れなくなり、病んで亡くなることが多い。ハクが悪夢を食べることで、生きながらえる。そんな設定でした。書く機会がなかったので、ここで書いておきます。力を失って子どもの姿になっちゃっていますが、本来は浮世離れした超絶イケメン設定でした。
皇雅国を支えるもののけたち。玖狼と愚闇は沙夜に寄り添う理由を書いています。その他、ギーや黒雨二位の|詩雨《しう》くんにも、それぞれにちゃんとした理由があるのですが――もし続編を書く機会があったら、是非書きたいなと思います。(世界観を作り込みすぎる私の癖)
それと、白光二位の雪代。彼の出番をもっと増やしたかったですね。中性的な美人で、男性なのに男性によく口説かれている妖しいマロ眉様。夕星はめちゃくちゃ怖い存在なんですが、雪代のおかげで白光はひとつにまとまっています。
紫電は、一位が涼月で二位がギーなので、みんな「一位と二位強くてかっけええええええ!!」親衛隊です。
黒雨は、個人プレーがほとんどなので、とても残忍で淡々としていて、陽炎は変わり者ばかり。
能力だけじゃなくて、雰囲気もちゃんと考えていた皇雅軍、もっと書きたかったです。
長々と書きましたが、ほぼ勢いで書く私でも、一応これだけ考えつつ書いてるんだな~と良い振り返りになりました。
自動速記か? っていうぐらいの勢いでね、書いてますんでね(その姿はとてもお見せできません)。
これからもっと素敵で、読んだ人の心を揺さぶるようなものを書けるように、修行していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!
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