拙作『ミックスベリー殺人事件』のあとがき的、製作秘話的、解説的なものを、書いてみようと思います。
※以下ネタバレ注意
☆『ミックスベリー殺人事件』の製作過程について。
私は全般的にフルーツが好きですが、これと言ってベリー類が好きというわけでも何でもありません(笑)。
ただ、居酒屋とか行ったときに『クランベリーサワー』とか、ケーキを買いに行ったときに『ラズベリータルト』とかを見かけて、『ベリー』とつく果実は一体どれだけあるんだろう、という興味のもと調べ始めたのがきっかけです。
結果、数えきれないくらいの『ベリー類』があることを知り、何故かそれらを扱ったミステリーは書けないか、と思いました。
ですので、興味の対象が例えばリンゴの品種であったなら『林檎殺人事件』になっていたかもしれません(嘘)。
話は逸れましたが、『深緋の恵投』や『慧眼の少女』とは異なり、タイトルがいきなり最初に決まりました(笑)。
『ミックスベリー』と『殺人事件』という、まったく相容れなさそうな二つのキーワードを組み合わせることによって、読者さまの興味を惹きたいという邪(よこしま)な気持ちもありました(苦笑)。
本作はハンドルネームが飛び交う、オフ会を舞台としたクローズドサークルものですが、この作品を書くにあたって、実は参考になった作品があります。
ミステリー界で名高い綾辻行人さんの『十角館の殺人』……ではありません(怒られるかな)。
(ちなみに『十角館の殺人』はとても楽しく読ませて頂きました★ あの完成度はWeb小説家かけ出しの私には真似できません。)
いちばん参考となったのは、金田一少年のノベルズ『電脳山荘殺人事件』です。
これは私が高校生くらいに読んで以来その面白さに驚愕しながらも、その小説はとっくの昔に紛失(実家にある?)している状態で読み返すことはできませんでしたが、アニメ映像でその古い記憶をたどった作品です。
この作品は、顔を知らないオフ会参加者たちがはじめて相見えて、ハンドルネームのみで呼び合うクローズドサークルものの連続殺人事件ですが、その特性を非常に巧みに利用した鮮やかなトリックが印象的です。
ではそれに倣って、ベリー類をハンドルネームに生かせないかと思いました。
もちろん完全に模倣してしまうと、まったく小説としての意義をなくしてしまうので、あるところでは真似つつもオリジナリティーを出すにはどうするか考えました。
『電脳山荘殺人事件』では互いのハンドルネームのみが分かっていて、全員初対面という設定で話が進んでいきます。
本作ではハンドルネームすら明かされてはいけないという状況にしてみようと思いました。さらにはネカマよろしく男なのに「私」を名乗ったりして、性別もあてにならない状況にしてみようと思いました。
『ハンドルネームと呼び名の照合作業』というパズルを、特徴としてみようかと思いました。
当初はもっと少ない人物で進めていこうと思ったのですが、トリックや犯行動機などを考えていくうちにどんどん膨れ上がりました。
さすがに10人を超えたとき、大丈夫かな……、と不安になりました(苦笑)。
犯行動機についてはTVのニュースで観た、同性婚のニュースと特集より、人権問題について考えさせられるものがあったので、それについてのメッセージ性も盛り込みたいと思いました。
後になって、『ミックスベリー』=『人種の坩堝(るつぼ)』に喩えたり、『日本におけるLGBTの割合が1/13』=『ミックスベリーのメンバー数におけるLGBTの割合が1/13』という偶然な一致に気付き、真相解明後のパートでそれに言及している次第であります。
なお、ラジオから流れてくる、神聖かまってちゃんの『ズッ友』はLGBTを応援するようなPVが印象的で話題の歌。また序盤のLady Gagaさんの『Born This Way』も人権を尊重するようなメッセージソングであり、福山雅治さんの『家族になろうよ』や、かりゆし58の『アンマー』も家族の絆の大切さを想起させる歌で、暗にこの小説のテーマをほのめかしております。
私はやっぱりしっかりしたプロットというものを書くのが非常に苦手で、人物設定と、ごく簡単な殺人事件の流れだけをA4用紙2枚程度のメモに留め、基本的な流れだけはぶれないようにして、あとは書きながら人物たちの言動を組み立てていきました。
でも書きながら、やはり物語の練り込みが足りないことに気付いたりして、不完全燃焼なところも実はあります。
本当にしっかり読めば、モノローグだけでも真犯人は予想できてしまうのではないか、とも思っております。
序盤から推理に必要な重要な伏線を盛り込んでいるので、注意深く読めばあやしい人間が分かってしまうかもしれません。
それをカムフラージュするように、攪乱工作を入れてみたり、知鶴が強姦されかけたり、といった描写を入れて、複雑化かつスリリングな展開にはなったかもしれません。
おかげさまで『性描写あり』というセルフレイティングを入れることになりましたが……。
しかも最後に、このミステリーは状況証拠だけで物的証拠がないことに気付き、悩んだ結果、例のアイテム(第二十三話参照)に気付いたわけです。
これを思い付いたのは、「天啓」と呼ぶにふさわしいかもしれません(笑)。
なお、小説を書きながら、アニメ化されたらキャラクターの声をどの声優さんに担当してもらいたいか考えていらっしゃる方がおられる、とある方の近況ノートで拝見したことがありますが、私は実写化されたら誰に演じてもらいたいか勝手に妄想しながら書いております(笑)。
前作『深緋の恵投』、『慧眼の少女』のヒロイン、大城優梨は、私の中で二階堂ふみさんのイメージです。
今作『ミックスベリー殺人事件』の主人公、立河知鶴は、木村文乃さんをイメージして書いておりますが、いかがでしょうか?
私は結構、そういうのを楽しみながら、書いております。また他の方の作品も、勝手に脳内でキャスティングしていたりします。
同じような方はいらっしゃいますかね?
最後に、本当に多くの方に読んで頂き、そして素晴らしいレビューをたくさん頂き、恐悦至極でございます。
ランキングでも好位置でいられるのは、間違いなく読んで頂いた皆様のおかげです。
この場で、改めて感謝申し上げます。
ありがとうございます。
これからもご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。