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【重要】【お詫び】『フェアリー~』の執筆に際してAI翻訳・言語変換ツールを利用していたことと、今後について

いつもお世話になっております。
拙作『フェアリーリング・フェアリーテイル - 術界伝綺 -』をご愛読いただき、ありがとうございます。

この度は皆さまに、お詫びを申し上げなければいけないことがございます。
それは本作における外国語および方言を描写した一部の箇所において、翻訳AIツールおよびAIを用いた言語変換ツールを利用していたことを、
皆様に明らかにしていなかったことです。

具体的に使っていたツールは、

・Google翻訳(https://translate.google.com/?sl=auto&tl=ja&op=translate
・DeepL翻訳(https://www.deepl.com/ja/translator
・方言変換ツール(「BEPPERちゃんねる」内「恋する方言変換」https://www.8toch.net/translate/など)

の三つです。
その他コーパス(後述)や仕組みが不明瞭なオンライン辞書も使っておりました。

私はこれらのツールを、日本語を外国語に翻訳、また標準日本語を方言へ変換する際、出力された文章を参考にしていました。
長くても二文くらいでしたが、1~2単語であればほぼそのままの形で利用したものもあります。
もちろん各単語の意味については、オンラインや紙媒体の辞典で調べておりましたし、
文法的に正しいものであるかどうかチェックもしておりました。
しかしながら、日本語文献や記事において調査するのが難しい一部の言語につきましては、
裏取りが不十分なまま執筆に踏み切ってしまったものもございます。

私がこのたび問題として考えていることは、
これらのAIを用いた翻訳ツールの「仕組みをよく理解しないまま利用していた」ことと、
「利用していたことを読者の皆様に明かしていなかった」ことの二点になります。

まず言語学には「コーパス」という概念があります。

「コーパス - Wikipedia」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%91%E3%82%B9

コーパスとは「ある言語の単語や構造を集積したもの」であり、AI翻訳には「対訳コーパス」が必ず存在します。
他の生成AIにおける、「データセット」に当たるものと考えていいでしょう。
問題なのは、このコーパスに当たる部分に、
他人の著作物であったり、流出していること自体が違法なもの(法人の機密情報など)が入っていないか、ということです。

まずGoogle翻訳の場合、基本的には「国際連合の文書類による二百億程度の語から成るコーパス」(https://ja.wikipedia.org/wiki/Google_%E7%BF%BB%E8%A8%B3)を用いているようですが、
一方で「インターネット上のテキストデータから学習」している(https://tmjjapan.co.jp/topics/10117/)という見解もあります。
グーグルの利用規約においては「ユーザーのコンテンツに修正(形式の変更、翻訳など)を加えて二次的著作物を作成すること」(https://policies.google.com/terms
は許可されているものの、これはあくまでもグーグルの利用規約に過ぎず、上述の法律上の問題点とは関係のないものです。

(参考)「Google翻訳と著作権|極真金融コンサル」
https://note.com/kyokushinfc/n/n16e3f150dc5e

そしてDeepLにおいては、何をコーパスにしているのかが分かりませんでした。
こちらのページ(https://phrase.com/ja/blog/posts/deepl/ 「高精度機械翻訳「DeepL」とは? Google翻訳との違い、効果的な利用方法 | Phrase」)によると、
「インターネット上の翻訳データを自動探索」(https://phrase.com/ja/blog/posts/deepl/)しているようで、
やはりインターネット上のテキストデータを無断で収集しているものと見て間違いなさそうです。

あと方言変換ツールについては、仕組みについては明かされていませんでしたし、二次利用に際する利用規約も見つかりませんでした。
ページ下部に記載された「(参考)」によると、オンライン論文やインターネット上のテキストを元にしているようです。

「恋する方言変換」
https://www.8toch.net/translate/

私はこのたび調べるまで、これらのことをほとんど理解していませんでした。

いずれにしても学習元が他の著作物である可能性が高く、本質的な問題点は現在問題視されている他の画像生成AIと変わらないものと私は考えました。
一応、公益社団法人著作権情報センター「著作権審議会第9小委員会(コンピュータ創作物関係)報告書」の見解では機械翻訳について、
「多様な表現が要求される文芸作品の翻訳は期待できない」(https://www.cric.or.jp/db/report/h5_11_2/h5_11_2_main.html#2_2)とされてはいます。
よって著作物の要件である「創作性」は得難い、と言いたいところですが、この報告書が書かれたのは「1993(平成5)年11月」と31年も前のことです。
検索エンジンやAI技術が別次元に発展した現代の実情とは完全に乖離してしまっており、これを根拠として「機械翻訳は絶対的に著作権侵害とはならない」とは言い難いように思えます。(*1)

またAI翻訳ツールは、厳密にはLow-Rank AdaptationやChatGPTなどの生成AIとは仕組みが異なるもののようですが、
データセット(コーパス)がインターネット上の他のテキストである以上、
独立した辞書(Weblioなどのオンライン辞書を含む)とは本質的に別のものと考えて然るべきでしょう。

「AI翻訳は生成AIに負けるのか? | 株式会社 十印」
https://to-in.com/blog/112972

また、仮に法律上の問題がなかったとしても、道義的な問題があります。
よく勘違いされがちですが、創作は「法律が許せば何をしてもいい」ものではないのです。
創作の文化は、多くの先人たちが作り上げてきた多くの「暗黙の了解」を守ることによって成立しているものです。
現在インターネットにおいては、嫌がらせや利益侵害目的で特定のイラストレーター・漫画家の生成AIを作成・利用し、
既存の作品のイメージを毀損したり、金銭的損害、精神的な被害を与える行為が問題視されています。
これはまさしく、先人が積み上げてきた「暗黙の了解」=「信義」に反する事例と言えるでしょう。
そして他者のテキストを無断学習し、かつ違法性のあるものが含まれているかもしれないテキストを出力する可能性のあるツールを小説執筆に使うこともまた、
道義上の問題があると考えるべきだと思います。

私がこのたび調べた限りですと、小説において、特にインターネットで公開されているウェブ小説において、
AI翻訳・オンライン言語変換ツールを利用したことによって法的に問題になったケースは思い当たるものがありませんでした。
唯一見つかった事例は、既存の映画作品のセリフを翻訳(恐らくは全文)してサイトに投稿したケースです。

「機械翻訳が著作権侵害にあたるケースとは | 株式会社 十印」
https://to-in.com/blog/105816

さらには、道義的問題として取りざたされた(つまり炎上した)事例も、全くと言っていいほど見つかりませんでした。
しかし、他ジャンルにおいて生成AIに対する問題がいやましに紛糾していっている現状を鑑みて、
私の行為も、たとえ今は道義的問題として取りざたされなくとも、
いずれは信義に反するものになるであるという判断に達しました。

よって、昨今のAI利用に関する道義的責任として、利用した事実を明かすべきと決めた所存です。
今後は小説執筆に際して、上述の翻訳・変換ツールを使用することの一切を差し控えたいと思います。
現状公開している分に関しましては、上述AI翻訳・変換ツールを使用した箇所について、
文責がはっきりしている辞書や辞典(オンライン辞書で学習元が不明瞭なものは避ける)や、書籍、論文、記事などで裏取りをしていきたいと思います。

最後になりますが、読者の皆様の信頼を裏切るような行為をしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
『フェアリーリング・フェアリーテイル』の連載自体は続けて参りますので、
厚かましいお願いでありますが、皆様さえよろしければ今後とも拙作をどうぞよろしくお願いいたします。

※ 本記事はあくまでも、私が創作においてAI翻訳ツールを利用していたことに対するお詫びと今後の方針表明であり、「生成AI含むAIを創作に使うことの是非」について議論したいわけではございません。

*1 令和5年7月26日に文化庁で開催された文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第1回)においては、「資料3 AIと著作権に関する論点整理について」内で、当報告書を参考に「AI生成物の著作物性について」というPDFのスライドが作られています。ただこちらでは、主に「AI生成物の著作物性」(5ページ目)について指摘されており、学習元の著作権を侵害するかどうかについては、3~4ページにおいて論じられています。「後発の作品の制作者が、制作時に既存の著作物(その表現内容)を知っていたか」(下記URL・PDF4ページ目)がどうかが論点となっておりますが、そうなると「学習元を利用者が知ることのできない、インターネット上の著作物を無断学習するAI翻訳を利用する」という行為は、法律的にも危険で道義的にも問題のあるものと言えるのではないでしょうか。

「AIと著作権に関する論点整理について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoseido/r05_01/pdf/93918801_03.pdf

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