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人生という名の錆取り列車

 また、休むことにしました。
 ここのところ、小説を発表する機会がありませんでしたが、昨年十二月頃から学園ミステリー作品『ほうかご探偵奇譚録』の連載をカクヨムではじめ、最近は終末ファンタジー作品『星崩しのオリオン』もしたためていました。どちらもブランクがあった割にはそれなりに読んでいただき、なかには面白いとコメントしてくださった方がいます。更新を報告するとすぐに読んでくださった方もいます。久しぶりの感覚が少し嬉しくて、仕事疲れも気にせずにポメラを携えてカフェにこもって執筆を続けていました。サンマルクカフェのホットメニューは制覇しました。プロ野球がオフシーズンになって、これから何を糧に生きていけばいいのかというところに、作品を更新する喜びが生まれました。そこから二ヶ月ほどは充実した時間を過ごしていたと思います。心が充実しているといろいろな物事がうまく運ぶもので――仕事も成果が認められたり、久しぶりの旅行へ繰り出すこともありました。たしかに当時の僕は心の底から楽しんでいたのだと思います。今、欣喜雀躍と駆け巡っていた少し前の日々を思い出しながら、ほんのちょっと溜め息が出ました。
 なぜ。
 疲れているのかもしれません。
 仕事量が二倍以上に増え、帰路に着いてからもプランナー業務の効率化について考え抜き、Javascriptの勉強をし、料理をできなくなり、冷凍ご飯とインスタントみそ汁とひきわり納豆の生活が続き、朝起きるのが遅くなって、足が鉛のように重くなって、帰り道で鼻血を出して通行人を騒がせ、それでも更新しなければという思いで小説を書きながら、ふと、噛み合わない歯車の軋みを感じました。この程度で疲れたなど――と鼻で笑われるかもしれないです。でも僕は疲労していました。久しく感じていなかったものがもくもくと蘇り、虫酸となって身体を痛めつけました。今は、何もしない時間を作って、コーヒーにミルクを入れてみて、ラムネを齧ってみて、ようやく深呼吸をできた気がします。疲れているからと無意識に避けていたランニングの習慣を再開して、血の巡りがよくなった感触があります。少々、不摂生が祟ったのかもしれません。
 小説の話をすると、しばらく連載形式で作品を発表することは避けます。それは小説を書かなくなるということではありませんし、参加を予定していた同人イベントを取りやめるわけでもありません。ひとつの「けじめ」であると考えています。作品を更新するために書くのではなく、作品を作品としてただ完成させるためだけに、いいねを押されることなく、PVに一喜一憂することなく、小説の完成を求めていこうと思います。前に列挙した作品を読んでくださっていた方々には、突然更新を止めてしまうことになり汗顔の至りです。なんとか表面上だけでも幕を閉じてから止めてしまおうと考えたのですが、なかなか筆をとれず、いつ来るのかもわからない続きを待ち続けることがあってしまうのなら、ここで栓をしておこうと結論づけました。申し訳ないです。もう少し力をつけた暁には、なにか施しができるかもしれません。
 これからのことはまだ考えきれていませんが、インプットを増やしていく時期でもあると思っています。書くことよりも、読んで、観て、聴いて、感じて、触れて、噛み砕いて、味わうことが大事だと感じています。もう何年も前になりますが、同人イベントに身を投じていたときは少なくとも今よりはたくさんの鑑賞を行っていました。歳をとったので、あの頃の感覚を取り戻せるとは思っていません。だからまた新しい、自分なりの審美眼を鍛える必要がありそうです。勉強の日々です。信号は赤になりました。止まってしまったことを停滞とするのではなく、変化の時期と考えて、日々の積み重ねを大事に生きていきます。
 今はそれだけです。
 列車の終着点など、自分で決めればいいのだと、僕は思います。

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