タイトル:俺を恋愛弱者だと揶揄ってくる義理の三姉妹からガチ恋されていた件(仮)
以下本文
俺には超絶美人な姉妹が三人いる。三歳上の長女である|莉乃《りの》と同い年で次女の|杏奈《あんな》、二歳下で三女の|瑠花《るか》だ。三人とは顔立ちなどが全然似ていないため俺が兄弟と知ると皆んな驚く。
それもそのはず、俺と莉乃と杏奈、瑠香は義姉妹のため普通の兄弟姉妹では無いのだ。もっと正確に言えば俺と三姉妹はいわゆるはとこという関係であり血の繋がりも八分の一しかない。幼い頃に俺の両親が事故死して以来母さんの従姉妹夫婦に引き取られて今の関係になったというわけだ。
義理の家族と聞くと家庭内で虐げられているようなイメージを持つ人もいるかもしれないがお義父さんもお義母さんも自分の子供のように育ててくれたし、三姉妹達も本当の兄弟のように接してくれた。
「でも三姉妹揃って恋愛経験がない事を揶揄ってくるのはそろそろ辞めて欲しい……」
そう、莉乃も杏奈も瑠花もよく俺が恋愛弱者だと面白おかしく揶揄ってくるのだ。だからそんな愚痴を呟いているのだが三姉妹の反応は大体いつも決まっている。
「だって奏多君じゃん、彼女なんて出来ないに決まってるよね」
「そうそう、奏多と付き合ってくれるような女の子なんて世界中を探しても三十五億人中三人くらいしかいないわ」
「莉乃姉と杏奈姉もそう言ってるし、お兄ちゃんには彼女なんて百万年くらい早いよ」
こんな感じで毎回のように三姉妹から揶揄われてしまう。だから高校二年生にもなって彼女の一人すら出来た事がない。
「奏多、瑠花そろそろ出発するわよ」
「おっ、もうそんな時間になってたのか」
「本当だ、早いね」
気付けばもう学校に行かなければならない時間がやってきていた。俺と杏奈、瑠花は同じ中高一貫の学校に通っているため登校するのはいつも一緒だ。
「三人ともいってらっしゃい」
「莉乃姉は授業が昼からってズルくない?」
「それが大学生の特権だから」
「私も早く大学生になりたいな」
瑠花はそう言葉を漏らしていたが中学三年生の彼女が大学生になるのはかなり先の話だろう。瑠花が大学生になる頃には俺も二十歳だが果たしてその時彼女はいるのだろうか。
「瑠花、モタモタしてたらあんただけ置いて行くわよ」
「あっ、杏奈姉待って」
「おい、足元危ないぞ」
「きゃっ!?」
杏奈に急かされた瑠花は慌てて入り口に向かおうとして床のコードに引っかかり盛大に転びそうになる。だが瑠花が床に激突する事はなかった。そうなる前に俺が瑠花を抱き止めたからだ。
「言わんこっちゃない、大丈夫か?」
「……お、お兄ちゃんありがとう」
「瑠花って本当昔からドジだよな」
ほんの少し顔を赤らめて何故かクネクネしている瑠花を抱き抱えたままそう呟いていると莉乃と杏奈がすっ飛んで来る。
「奏多君、いくら彼女が出来ないからって妹の瑠花ちゃんに手を出そうとするのはどうかと思うな」
「そうよ、早く瑠花から離れなさい」
「おいおい、せっかく朝から人助けをしたってのにこの扱いかよ」
「あっ……」
莉乃と杏奈から責められたため体を離すと瑠花は何故か名残惜しそうな表情を浮かべていたのら気のせいだろうか。
そんなこんなで家を出るだけで色々あったがようやく出発できた。学校は隣市にあるため電車で通学する必要があり少し面倒だ。
「新学期が始まってから一週間だけどお兄ちゃんは友達出来た?」
「奏多は相変わらずクラスに馴染めてないわ」
「おい、俺を社会不適合者みたいに言うのは辞めろ。てか、杏奈は違うクラスのはずなのに何で知ってるんだよ?」
「奏多とは違って私は学校に友達が多いから」
「てか、お兄ちゃん馴染めてない事は否定しないんだ」
「いやいや、ちゃんと友達くらいいるからな」
煽るような表情の瑠花から揚げ足を取られた俺はそう答えた。杏奈も瑠花も俺の事を容赦なくいじってくるから本当に大変だ。
まあ、でも俺が家族として認識されていなければこんなやり取りはそもそもしないためそこは安心だが。それから三人で歩き続け目的地の駅へと到着した。
「うわっ、相変わらず倉敷駅は混んでるね」
「ちょうど通勤通学ラッシュの時間だからな」
俺達の住む岡山県第二の都市である倉敷市の主要駅は本当にいつもごった返している。今の家族に引き取られるまで住んでいた京都市内はもっと混雑がやばいらしいがその頃の記憶は昔過ぎて思い出せない。
しばらくしてやって来た電車に乗った俺達は岡山市方面へと移動し始める。途中駅でも次々に人が乗ってきたため電車内はあっという間にすし詰め状態だ。
「ほらっ、二人ともとりあえず俺にくっついていろ」
「はーい」
「奏多のくせになんか腹立つわね」
素直にくっついてきた瑠花に対して杏奈はやや不満気な表情を浮かべている。
「じゃあ杏奈はそのままでいいか?」
「うるさいわね、周りの男に密着されるくらいなら奏多で我慢するわよ」
「杏奈姉は身長低いもんね」
「瑠花は余計なこと言わない」
そう言いながら杏奈は俺の袖を掴んで体を密着させてなきた。こんな感じで杏奈はいつも最初は文句を言っているくせに最後は何だかんだで密着してくるツンデレ気質なところがある。
ちなみに今いるメンバーの背の順としては百七十四センチの俺、その次が百六十センチの瑠花、そして百五十センチの杏奈という順だ。
杏奈は妹の俺より二十四センチ、瑠花より十センチ低い事が気に入らないらしいが、姉の莉乃に十五センチ負けている事には対しては特に突っかかっていない。やはり長女は強いという事なのだろう。
そんな事を考えているうちに電車は岡山駅へと到着した。そこから電車を一本乗り換え今度は西川原駅を目指す。
西川原駅行きの電車内は俺達と同じ|去華《きょうか》学園の学生ばかりだ。学校までは西川原駅から歩いてすぐのため去華学園に通う学生の大半が利用している。
「やっと着いたな」
「何年経っても満員電車は慣れないわね」
「お兄ちゃんと杏奈姉は後二年の辛抱だけど私は後四年も耐えなくちゃいけないから嫌なんだけど」
「なら瑠花は内部進学せずに外部の高校を受験するか?」
「……高校受験の勉強はもっと嫌だからそれはないかな」
まあ、普通に考えてそうだろう。中学受験の時点で大変だったというのにその特典である内部進学を蹴って外部受験をする気になんてなれない。
そんなやり取りをした後俺達はそれぞれ別れて自分達の教室へと向かった。教室に到着した俺は自分の席に荷物を置くと先に来ていた瀧に声をかける。
「よお、|瀧《たき》。おはよう」
「奏多か、おはよう」
「相変わらずだるそうな顔してるな」
「週明けは皆んなそうだろ」
瀧とはいわゆる幼馴染という関係でずっと同じ学校なのだが今まで同じクラスになった事が無かった。だから始業式の朝クラス表に|夏川瀧《なつかわたき》という名前があった時は嬉しかったものだ。
「奏多は今日も杏奈と瑠花ちゃんと一緒に登校か?」
「ああ、いつも通りな」
「美人な姉妹と一緒に登校出来る奏多が羨ましいよ」
「彼女と一緒に毎日登下校してる奴に言われても全く響かないんだけど」
そう、瀧は腹立たしい事に彼女持ちだったりする。中学時代はパッとしないキャラだった瀧は高校へ進学したと同時にメガネをコンタクトに変え髪型もお洒落な感じに変えた。
その結果バレンタインの日に告白されてリア充へとランクアップを果たしてしまったのだ。俺達には彼女なんて必要ないとよく一緒に話していたはずなのに今では自慢してくるため裏切られた気分になった事は言うまでもない。
「それはそれだろ」
「あーあ、俺にも彼女出来ないかな」
「奏多なら普通に出来ると思うけど、てか今まで彼女いないのが俺的には不思議なくらいだ」
「俺にだってチャンスはあったんだぞ」
そう、今まで彼女が出来るかもしれないと思った場面も何度かあった。まあ、途中までは上手く行きかけたもののどれもこれもよく理由が分からないまま駄目になってしまったのだが。
そんな会話をしているうちに予鈴がなったため自分の席に戻る。そしてしばらくしてから本鈴がなり授業が始まった。午前中の授業は特に何事もなく終わったが昼休みになった瞬間に問題が起こる。
「あれっ、おかずが入ってないじゃん」
「本当だ、両方米だな」
リュックサックから取り出した二段弁当の中身は何と両方白米しか入っていなかった。莉乃は大学の学食を利用していてここ最近は弁当を持っていっていないため杏奈か瑠花のどちらかがおかずを二つ持っているはずだ。
「めちゃくちゃだるいけどとりあえず杏奈の教室に行くか」
「いってらー」
「学内でスマホ禁止のルールとかマジで辞めて欲しいんだけど」
俺は瀧に見送られながらそう愚痴りつつ教室を出る。うちは進学校で治安もかなり良いんだからその辺りの校則はもう少しだけ緩くして欲しい。
少しして杏奈のいる二年五組の教室に到着した俺は中に入る。杏奈は友達数人と教室の後ろの方に固まってお喋りしていた。
「奏多ったら朝から俺にくっつけとか言ってきたのよ」
「また惚気? 毎回聞かされるのもそろそろ飽きてきたんだけど」
「はいはい、杏奈が奏多君を大好きなのはよく分かったから」
「違う、そんなんじゃないから」
何故か俺の話題で盛り上がっているため非常に話しかけにくい。先に瑠花の教室へ行こうかなと思っていると運悪く杏奈と目が合ってしまう。
「な、何で奏多がここにいるのよ!?」
「うわっ、急につかみかかってくるなって」
杏奈は血相を変えて俺の元までやってきたかと思えば怒りと恥ずかしさが混ざったような表情を浮かべながら責め立ててくる。
「愛しの奏多君の前なんだからもっとお淑やかにしないと」
「そうそう、そんなんじゃ嫌われちゃうかもよ」
「そこ、余計な茶々を入れない」
友達から揶揄われて杏奈はさらに顔を赤くしていた。もし杏奈がいくらお淑やかに振る舞ったとしても俺は本性を知り尽くしているため無意味だ。
「そもそも奏多は何をしにわざわざうちのクラスまで来たのよ?」
「そうだった、杏奈に用があってな」
「私に用?」
「ああ、実は二段弁当が両方米でさ。杏奈がおかずを二つ持ってるんじゃないかと思って確認しにきたんだよ」
杏奈から詰め寄られて忘れかけていたがこの教室にきた本来の目的はそれだ。俺の言葉を聞いた杏奈は席に戻り机の上に置いていた弁当袋を手に取る。
「もしかして間違えたのかしら……私はちゃんとお米とおかずが両方あるわ」
「って事はおかずを二個持ってるのは瑠花か、中等部まで行くのは中々面倒だな」
中等部の教室は高等部から結構離れているため移動するだけでそこそこ時間がかかってしまう。そんな事を考えていると杏奈は申し訳なさそうな顔になる。
「悪かったわね、私が間違えたせいでこんな事になっちゃって」
「杏奈がそんなしおらしい態度になるなんて珍しいな」
「流石の私でも罪の意識くらい感じるわよ」
「あんまり気にするな、こういう事は意外にあるあるだって聞くし」
そもそも杏奈が毎朝俺達のお弁当を作ってくれるだけで本当にありがたい。俺は料理が出来ず莉乃は色々と壊滅的、瑠花は朝に弱いため実質杏奈にしか作れないのだ。
「って訳で俺は中等部の瑠花の教室に行ってくるから、邪魔して悪かったな」
「待って、それなら私も付き合うわ」
俺が回れ右をして教室から出ようとしていると杏奈はそう声をあげた。
「別に杏奈は着いてこなくても大丈夫だ、ただおかずを取りに行くだけだし」
「そんなの奏多を中等部の教室に一人で行かせるのは危険だからに決まってるでしょ」
「いやいや、ちょっと言っている意味がよく分からないんだけど」
「もしかしたら欲に負けて女子中学生に手を出そうとするかもしれないじゃない、朝から瑠花を襲おうとしてたし」
「そんな事する訳ないだろ、てかさらっと有りもしない記憶の捏造は辞めろ」
俺はロリコンでは無いしそもそもこの歳で社会的に死ぬ気なんて全く無いからな。
「とにかく私も着いていくわ、もう決定事項だから」
「……分かったよ」
こうなった杏奈は今までの経験上梃子でも動かなくなってしまうためこれ以上何か言っても無駄に違いない。一体何の目的があるのかは分からないが、杏奈の同行を認めるしかなさそうだ。
「それにしても中等部の校舎に行くなんて久々よね」
「ああ、高等部に進学してからは基本行かないもんな」
中等部と高等部は一応同じ敷地内にあるものの校舎が別々になっているため何かしらの用がない限り行く事はない。
しばらくして中等部の校舎に入ると周りからの視線が集中する。多分高等部の制服を着ている俺達がここにいる事が珍しいからに違いない。
「……中等部三年生の教室ってどこだったっけ?」
「まだ卒業して二年しか経ってないのに忘れるってどういう事よ?」
「来ないからド忘れしたんだよ」
「仕方ないわね、私が案内してあげるわ」
「ありがとう、助かる」
さっきは杏奈に来なくても良いと言ったが居てくれて助かった。それからようやく目的地に着いた俺達は教室の中に入る。
予想通り入った瞬間教室中の視線が俺に集中した。やはり高等部の制服効果はここでも発揮されるらしい。
「あれっ、瑠花のやつ教室にいないじゃん」
「本当ね、いつも昼ごはんは教室で食べてるって言ってたのに」
「誰かに聞いてみるか。ちょっと教えて欲しいんだけど|弓波瑠花《ゆみなみるか》がどこに行ったか知ってる?」
「る、瑠花ちゃんは昼休み始まってすぐ先生に呼ばれて職員室に行きましたけど」
入り口近くにいた女子生徒に尋ねるとそう教えてくれたわけだが少し顔がこわばっていた。すると隣にいた杏奈が怒ったような口調で話しかけてくる。
「ちょっと、いきなり知らない男子高校生から話しかけたらその子も驚くでしょ。うちの奏多が迷惑かけちゃってごめんね」
「いえ、大丈夫です……それよりもしかしてお二人は瑠花ちゃんのお兄さんとお姉さんですか?」
「ええ、そうよ」
「あっ、やっぱりそうなんですね。瑠花ちゃんからカッコいいお兄さんと美人なお姉さんがいるって聞いてたのでもしかしたらって思って」
俺達の素性が明らかになって警戒心が解けた女子生徒はそう言葉を口にした。すると杏奈が急にニヤニヤし始める。
「私はともかく奏多がかっこいいってのはあり得ないでしょ」
「おい、さらっと俺をディスるな。こう見えてもたまにかっこいいって言われるんだぞ」
「えー、本当かしら? ちょっと信じられないんだけど」
「ちなみに先週も岡山駅でナンパされたから」
「「は?」」
俺が少し得意げな顔でそう口にした瞬間そんな低い声とともに隣と後ろから左右の肩を強く掴まれる。爪が食い込むくらい強く肩を掴んでいるのは隣にいた杏奈といつの間にか後ろにいた瑠花だ。
「ちょっとそれどういう事よ」
「そうだよ、私も杏奈姉も莉乃姉そんな事があったなんて一言も聞いてないんだけど」
「だって聞かれなかったし」
何故かは分からないが凄まじい剣幕で詰め寄ってくる杏奈と瑠花にそう正直に伝えた。すると二人はさらに不機嫌になる。
「それなら今からゆっくりとその事についてお兄ちゃんの口から詳しく教えて欲しいな」
「そうね、私達に嘘や隠し事は許さないわよ」
「わ、分かったからとりあえず場所を移動しよう。めちゃくちゃ見られてるから」
瑠花のクラスメイト達は俺達の様子を遠目から興味津々な様子で眺めておりとにかく恥ずかしかった。修羅場だと言う声も聞こえてきており完全に見世物状態だ。
ひとまず移動には杏奈と瑠花も同意してくれたため教室を出て中庭に向かい始める。その間も二人から両脇を固められていて逃げられそうになかった。
「じゃあ説明しなさい」
「もし誤魔化そうとしたら莉乃姉も交えて家族会議だからね」
「分かったよ、話せばいいんだろ」
中庭に着いた途端ベンチに座らされて杏奈と瑠花から問い詰められた俺は渋々先週の土曜日にあったエピソードを話し始める。
「へー、お兄ちゃんは岡山駅前のショッピングモールへ行った帰りに駅前で女の人から呼び止められたんだ」
「それで奏多はその女からナンパされたと」
「ああ、そうなるな」
突然の事でありかなり驚いた事は記憶に新しい。てか、二人とも腕組みしながら睨みつけてくるのは辞めろ。
「ふーん、それでその後は?」
「私と杏奈姉に隠してたって事は何かやましい事でもあったんじゃないの?」
「いや、普通に断ったけど」
「「えっ?」」
俺の言葉を聞いた杏奈と瑠花は二人揃って間抜けな声をあげた。しばらく固まっていた二人だがすぐに再起動する。
「断ったって嘘をついて誤魔化そうとしてるんじゃないでしょうね?」
「本当だって」
「性欲モンスターのお兄ちゃんが断るなんて信じられないんだけど」
「いやいや、瑠花は俺をなんだと思ってるんだよ。流石に一回り以上歳上でしかも既婚者とか無理だから」
そう、俺をナンパしてきたのは三十歳くらいで左手薬指に指輪をはめた女性だったのだ。ちなみに相手は俺を高校生とは知らずにナンパしてきたらしく未成年である事を知るとため息をつきながらどこかへと行ってしまった。
「これで満足か?」
「ええ、奏多は人妻からナンパされて喜ぶ性癖があるって事がよく分かったわ」
「お兄ちゃんキモい」
「お前らが無理やり話させたくせにこの扱いは酷すぎるだろ」
そう言葉を口にする俺だったがとりあえず杏奈と瑠花の体から出ていたあからさまな不機嫌オーラが無くなったため一安心だ。
「そう言えばお兄ちゃんと杏奈姉は私の教室まで何しに来たの?」
「そうだった、俺の弁当の中身がどっちも白米だったんだよ。それで瑠花が俺のおかずを持ってるんじゃないかと思ってな」
「そうそう、私が違うなら間違いなく瑠花でしょ」
「なるほど、それでわざわざ私の教室まで来てたんだ。戻ったら確認してみるよ」
途中トラブルもあったがようやく本題に入る事が出来た。いつの間にか昼休みも半分以上が経過していたためおかずだけ受け取ったらさっさと自分の教室に戻ろう。
それから瑠花の教室に戻った俺は弁当箱の中身を確かめる。二段弁当の中身は両方おかずだったためやはり瑠花が持っていたようだ。
「じゃあ俺達はそろそろ帰るから」
「またね瑠花」
「うん、お兄ちゃんも杏奈姉もまた後で」
こうして俺達は瑠花の教室を後にした。ちなみに杏奈と別れて自分の教室に戻る頃には昼休みが残り10分を切っていたため早食いをするはめになった事は言うまでもない。