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「さいかわ卯月賞」によせて

1ヶ月と長きに渡った「さいかわ卯月賞」、最終選考が発表されました。選考に残られた皆さんおめでとうございます。

ここでちょっと「さいかわ卯月賞」という選考会にて私の考えていたことを少し話します。何だか負け惜しみみたいなのですが、参加作品の外の事情を知るとまた見方が変わるかな、という狙いで書きました。

最初にこの選考を知って選考基準が「独断と偏見」というあたりで「黒髪JK百合を書けばいいのか!?」と思いました。

しかし、「さいかわ卯月賞」という企画に参加するにあたって「選者に気に入ってもらえる」というのをゴールにするのは自分としては面白くないな、と考え直しました。それなら選者関係なく読んだ人に爪痕を残す系の奴を、とこのネタを急遽浮上させて一気に仕上げました。

【春ノ夜ノ夢ノゴトシ】
https://kakuyomu.jp/works/16818093074685018716

実は参加作品の『春ノ夜ノ夢ノゴトシ』はかなり塩漬けになっていたネタだったのです。事の発端は昨年あたりホストクラブでの事件が続き、ホストクラブへの規制が報道されていた頃です。この売掛システムを知っていれば「非道なことをする奴らだ」となるのですが、「イケメンに騙された女が悪い」という印象を持つ人の方が世間的には多かったと思うのです。この「理解されなさ」が余計ホストにのめり込ませる原因なんですよと言っても、おそらく急に理解は広まりませんよね。

実際そんな理解のない言葉をあちこちで見てなんかムカついたので「恵まれない女の子とホスト」という話を構造だけ考えたのですがセールスポイントが思い浮かばず「夜の蛹は蝶になる(仮)」というタイトルだけがありました。多分普通に書いても誰も読まないだろうな、という諦めもありました。

そこへ「春をテーマにした作品を書きませんか」というところでこのネタを引っ張り出してきた次第です。確実にどなたかが読んでくれるタイミングで。

そういうわけでこの作品を読んで「ホス狂と呼ばれる人はただのバカじゃないんだ、自分にも同様のことが起こるかもしれないことなんだ」と思ってくれた人がいたら、それだけで意義はあるのかなと思っています。

手応えとして、敗因は「おそらくこういう形態の文章が思いのほか軽んじられたかもしれない」というところと「春の夜の夢の如し」というタイトルとオチを結びつけるのは多少わかりにくかったかもしれないというところです。以下作品内でスキップされてるこの作品の背景です。「ヒサシside」を書くとただの地獄なので背景から補完しておいて下さい。

【解説文】
https://kakuyomu.jp/works/16817330665779367524/episodes/16818093076791620266

これは悩むところなのですが、この話の最後は誰がどう考えても破滅しかありません。しかし世の中には「ハッピーエンドしか勝たん」「鬱展開は飛ばして読む」という風潮があるので、「主人公はホストに吸い尽くされてソープに沈められて腎臓も売った後捨てられましたちゃんちゃん」では怒られてしまいます。そこで「この後どうなるかな」と破滅を暗示させながら主人公脳内ハッピーエンドという手法を取りました。

ちなみにこの話の一番のバッドエンドは「捨てられましたちゃんちゃん」ではなく「親に借金バレて強制的に実家に軟禁からの精神的不安定諸症状」だと作者は思ってます。

そして「ホスト書くならこの文体でしょう」と往年のケータイ小説風にしたことや、紹介文での用語解説も読者を遠ざけたかもしれないなと思います。ケータイ小説文化、流行りの当時は本当にすごかったんですよ。Web小説でラブコメやるなら少し参考にした方がいい作品もありました。それがなんか古臭くてバカにされるようなものになってるとするなら、それこそ「武きものもついには滅びぬ」だと思いました。

今回はそういうところもあって「とりあえず目立とう」とファーストペンギンやったところがあります。公募と違い自主企画ということで、ガチでやるなら他の参加者の出方を伺うというのも大事かもしれないですね。ファッペンって勇気入りますよ。

そういうわけで次回の「水無月賞」は参加者も減ると思うので、体調次第(昨年この時期夏風邪ひいてエラい目にあってた)ではしっかり整えて「選ばれる」ような作品にしたいと思います。環境問題について説教したほうがいいのかエンタメに寄せるのか視聴率を取りにいくのか、それともやっぱり虐められっ子文学少女が雨宿りしたところにいた家出パンク少女との百合を書くべきなのか。はたまた客寄せエロに行くべきなのか。

とりあえず今回は書きたいように書けて楽しかったです。出来ればみんな読んでくれよな!次回はこんなノリでいいですか?わかりません(><)

【革命は失敗に終わった】
https://kakuyomu.jp/works/16818093076325882516

2件のコメント

  • ここまでしっかり書いて、自己分析までされていますので、わたしがごめんなさいをした理由を書いてもいいかなと思ってコメントいたします。
    もし、意に添わぬものでしたら、速攻削除してください。

    御作「春ノ夜ノ夢ノゴトシ」ですが、テーマがいけないとか、終わりいけないなどの、いわゆる「テーマ性が悪い」という理由ではありません。ハッピーエンドではないからダメとかそんなことは絶対にありませんよ。むしろキチンと書こうという姿勢が好印象ですし、内容も書きたい世界もわたしには届きました。

    一番の理由は「作者の表現不足」です。「私」や「ヒサシ」を読者が共感できるところまで抉っていないです。もっともっと「私」の感情の底辺を整理して表現できたものがあるのではないと。ホス狂いに致るまでの「ストーリー」ではなく、登場人物のマグマのような内面を吐き出すように書いてあれば、読者をグッと引き寄せると思いました。どこまでも内容やテクニックではないのです。そこに潜む気持ちをあまり感じない、ひいては、作家のこの作品へのドロドロした情熱を感じないということなのです。

    「語られていないところで何が起こっているか」と仰っておりますが、であるのなら、作中の一文一文が渾身のワンツーや右ストレートであってほしいと思いました。作品がケータイ小説風という短文で構成されているのなら、その一言一言がもっともっと的確さや重み、感情を読者に引き出せるようなものにしてほしいと思います。今回の参加者で、短い一文どころか一言でビシバシ読者にイメージを与えていく作家さんたちがおりますので、参考になるかと思います。

    テクニックや細かい感情に左右されず、まずは「骨」の部分で誰にも負けない気持ちを籠めて書いて欲しいと思います。それをケータイ小説風で的確に打ち込んでいくのか、あるいは地の文で読者を説得していくのかは、その人のスタイルですが、「骨」のないものは読者までは届きません。

    「(作家として)ああ思った、こう考えている」というのは作家にとって一番やっていけない行為です。そんなことは読者には関係がありませんし、それを読者にキチンと伝えることが作家の仕事なのですから。

    解説文を拝読するに、秋犬さんはデティールに凝っているような印象があります。わたしはケーキを美味しいと思ってもらうには、デコレーションのような外面ではなく、まずはスポンジだと思うのです。そこが完成してからでも、デコレーションに走るのは遅くはないと思うのです。

    今でもムカついている(笑)、大手出版社の鬼編集に昔言われたのですが、「読者に考えさせようなんて三流。それをすべて表現できて二流。読者が進んで考えたくなるのが一流」と言われたことがあります。ふと、そんなことを思い出したので、秋犬さんに贈りたいと思います。

    生意気な話ばかりしました。お気に召さなかったらどうぞ削除してくだいませ。
  • 犀川ようさん

    いえ、詳細な講評ありがとうございました。こういう機会は本当にないので大変ありがたいです。

    そして的確に自分の弱点を付いてこられたことにものすごく驚きました。私の人生において小説に限らず「もっと出来そうなのに表面が出来れば満足してしまう、もっと真剣に深くやり込め」と毎度毎度言われてきました。それをここで似たように指摘されまして、ものすごく納得しました。

    別に物わかりがよい訳でなく、やはり悔しいですし指摘されるとムカつくところもありますが、それ以上にしっかり作品の本質を踏まえてくださったところがとても嬉しかったです。これは本心です。

    確かに言い訳ばかりでものすごくかっこ悪いんです。自分としては精一杯表現しているつもりなのに「まだ足りない」と言われるのは悔しいですし、どうすればよいかをいろいろ考えるのですが、今のところ「出てきたものをとにかく愛していこう」というスタンスをとっています。その結果、自分がキャラクターに寄り添いすぎているところがあったかもしれません。もう少し作品を突き放して見ていこうかと思います。そしてやはり最後で自分は日和るところがあるので、なるべく最後まで全力投球しようと思いました。

    今回の講評で、今後の自分の課題と目指すものが明確になりました。やるからには更によいものを書いていきたいです。ありがとうございました(/// ^///)
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