好きな作家は鹿路けりまです!
すいません、私が鹿路けりまです。
この度、カクヨムでも掲載中の拙作『ぼくの妹は息をしている(仮)』が11月9日に電撃文庫より刊行される運びとなりました。
このような栄誉に浴させてもらい感謝の気持ちでいっぱいです。
内容についてですが、Web版からの全面的な再検討・加筆修正を経て、物語の構造がよりわかりやすく、洗練されたように思います。終盤にかけての展開は大きく変わって、謎だった部分も明らかになり、読後感がよりクリアになりました。とはいえ、それらは世界が脳回路というシステムに思惟されているかぎり起こりうる意識の変容と同じ性質のものであり、つどあらたに移ろいゆくなかでどれが「決定稿」なのか、と判断するすべはこちら側にはありませんし、新しいものが必ずしも古いものを否定するわけでもありません。作中の台詞にもあるとおり、物語に自然な完成などなく、見直すたびに修正ポイントが山のように浮き彫りになるので私も頭を抱えました。その意味でこれは平行世界の物語であり、決定論に対する自由意志の抵抗と解釈することもできるでしょう。登場人物たちは永劫回帰のように定まった筋書きをなぞりながらも、すべてのシーンにおいて言い回しが微妙に異なります。「対消滅エンジン」「対称性の破れ」などといった恣意的なタームが出現したのは最後の最後の再校著者校(第n稿、n > 10)においてであり、偶然物理化学の問題について私に調べさせていた神による完全なる天啓です。詳細が気になる方もならない方もぜひ書店にてお買い求めください。
ちなみに、アニメイト及びメロンブックスで購入していただいた方は書き下ろし掌編付きのノベルティが特典でもらえるみたいです。おそらくそこでしか読めないと思うのでぜひ。
そして紹介が遅れましたが、イラストを担当してくださったのはVtuber「蒼乃ゆうき」のキャラデザなども手がけた「せんちゃ」さんです。最初にキャラデザが上がってきたとき、私はあまりの尊さに盆と正月とジェイソン・ステイサムがいっぺんに来た気分になり、こんな自分の人生にこんなことが起こっていいのかと別の意味で不安になりました。全体的にクオリティが半端ないです。それまでは病院のドリンクサーバーでいつもほうじ茶を飲んでいたのが、今では必ず煎茶を選ぶようになりました。鹿路けりまです。表紙買いをしてください。そして十割がやさしさで出来ている癒しテイストの恵まれたゆるふわビジュアルから繰り出される愉快な怪文書をお楽しみください。
また刊行にあたり、これでもかというほど丹念にテクストを読み込んで的確な質問やアドバイスをしてくれた電撃メディアワークス編集部の小野寺さんと阿南さんには非常にお世話になりました。本当に頭が上がりません。二人は自分にとって最良の読者です。
それだけでなく、校閲の方やデザイナーさん、製本関係者など、多数の方が尽力してくださっています。このように、一冊の本が形になるまでには非常に多くの工程があり、そのなかでひとりひとりが責任を持って自分の仕事に取り組もうとしている、その姿に私は率直な感動を受けました。着々と進行している一方で、まだ信じられないという気持ちが半分あります。性格が災いしてあとがきらしいことを全くあとがきで書けなかったのでここで話しておこうと思いました。
この物語が私から生まれ出づるまでの現実世界での背景や経緯などにももちろんそれなりの物語(ナラティブ)があるわけですが、それらについてここでつらつらと自分語りをすることはできませんし、するべきでもありません。ただひとつ、はっきりと言っておきたいのは、この『ぼくの妹は息をしている(仮)』がいまや涯てしない想いのこめられた作品であり、この小説が自分のデビュー作となることを本当に誇りに思っている、ということです。たとえ誰に何と言われようと、この気持ちだけは変わることはありません。
……家族には口が裂けても言えませんが。
11月9日発売です。どうぞよろしくお願いいたします。