小説を執筆し始めて以来、私は今のラノベにどうしても馴染めなかったんですけど……
先日「脇役やられ役」を書いたり、アニメの神回をネタにしたり、昨日のイラストなんかを描きつつ考えてたら、その理由が分かった気がします。
物語の太(ぶ)っとい芯になる『男の中の男』が居ないんですよ、今のラノベって。
『自分がその立場になりたい男』なら、大抵の男性向けラノベの主人公はそうなんですけどね。
なんにもせずにクラス1の美女に好き好きされたり、チート能力で悪人をばっさばっさと薙ぎ倒して言ったり、スローライフしてたら全部上手くいって金も女も人脈もみんなくっついて来たり……
でも、自分は少年漫画畑で育った人間ですから、それじゃ全然足りないんです。
自分の知らない理想の『男の中の男』を物語の中で見て、「ああ、こういう男にならなきゃいけないんだ」と憧れを持ち、いつか自分が同じ立場に立たされた時、こういうセリフを吐ける、こういう態度を取れる男になりたい、と『学ばされる』キャラクターがいて欲しいんですよ。
例えば「HUNTER✖HUNTER」のレオリオ。
彼はハンター試験の際、クイズで「娘と息子、見殺しにするならどっち?」と問われて、マジ切れして「ハンターも審査官もクソだ!」とそのばあさんに怒りを向けます。
でも実はそれが大正解で、ばあさんに謝罪した後、彼はこう告げられます。
「あんたみたいな奴に会いたくてこの仕事をやってるのさ」
うおぉぉぉ! こんな事誰かに言われてみたいいぃぃぃ!!
理不尽に対して真っ向から怒れる! まさに男ならこうあるべし、そんな自分の知らない理想像を与えてくれました。
他にも「美味しんぼ」の話で、カレー屋をやってた主人の奥さんが元ヤクザの情婦で、その事実を知らされたと同時にヤクザと揉みあって階段から転落した際、
記憶喪失のフリをして、奥さんに知られたくない部分だけをあえて思い出せないのを装った彼。後に中松警部に「あれが立派な男の背中だ」と称される、素晴らしい男っぷりでした。
同じく美味しんぼで、イタリア料理を修行するため二人の弟子が5年の修行に出て、うち弟弟子の方が先に帰って来て、より腕を上げた方と結婚するはずだった師匠の娘さんと先にくっついちゃってて、
帰って来た兄弟子は怒り心頭で料理勝負を挑むも、その見事なパスタ(実は山岡の入れ知恵)と、その夫婦が真に愛し合っているのを悟って、あえて負けを認めて引き下がるのもまた、素晴らしい男の中の男の姿ですよね。
「あなたの料理の方がおいしいと言い張れたのに……あなたは立派な人ですね」
彼の背中にかけた山岡の台詞がとても印象に残っています。
こういう「男の中の男」は、その世界の倫理すら支配しちゃうほどの理想の存在として、物語の倫理の芯にすらなり得るんです。
それは「生き方」「生き様」であり、神様からポンと与えられたチート能力でも、作者に甘やかされた主人公補正でも決して出ないものでしょう。
そんな「男の中の男」が、今のラノベには本当に少ないんですよね。
だから一本芯の通った「正義のお手本」が無い世界で、陰湿なざまぁや無条件のハーレムが主人公の望み通りに成り立って、薄っぺらい正義としてまかり通るのではないでしょうか。
「アリスと蔵六」の蔵六じいさんみたいに、主人公の好き勝手に「バカモノが!」とゲンコツを落とせる存在がいないんですよ。
読者に「今まで知らなかった新しい理想像」を与え、「いつかこんな人間になりたい」と憧れを抱かせるキャラクター作り。
これこそ今のラノベに必用なファクターではないでしょうか。
かくいう私も「ゾンビVSヤクザ」の岩熊や「にんげんホイホイ」の湊さんに、そういうキャラ付けをもっとしておけばよかったなぁ、なんて後悔してます。
なので現在連載中の「エリア810」のステアやギア隊長、イオタ指揮官やアトン大将軍に、そんな憧れを持たれるような人物像を組み込んで行けたらなぁ、なんて思います。
例によってめんどくさい男の愚痴でした、マル