【プロローグ】
『ねぇ、なぎさ。本当にこのままでいいの?』
週末のカフェ。親友の呆れたような声が、テーブルの上のシュガーポットを揺らした。私は、ただ目の前のコーヒーカップを見つめていた。
「あんた! 浮気されてこのままでいいの? 毎週のように嘘つかれて、その金がどこに消えてるか知ってて、それでも笑って『いってらっしゃい』なんて……。信じられない!」
「…………」
「言い訳ないじゃない! あんたがどれだけあいつのこと大事にしてるか、私が一番よく知ってる。なのに……っ! ねぇ、聞いてる?」
肩を掴まれ、揺さぶられる。私はゆっくりと顔を上げた。心配そうに眉を寄せる親友の顔が、滲んで見える。
「……もう、別れなよ。あんなクズ」
「……別れるだけじゃ、足りないよ」
か細い、けれど氷のように冷たい声が、自分の口から漏れた。親友が息を呑むのがわかった。
「浮気したらどうなるか、ちゃんと教えてあげなきゃ。二度と、誰のことも裏切れないように」
私の瞳に映る自分は、もう笑っていなかった。
なかなか高評価、な滑り(笑)