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「わたしを離さないで」の巻

DVDで「わたしを離さないで」を観直す。

10年ほど前にも一度観ているが、ほとんど忘れかけていた。肝心の秘密を当人たちが知る過程が気になったのだが、そこはごくあっさりと、登場人物の口から伝えられる。それを聞いて、ワーッとなる訳でもなく、何事も淡々と進むので、かえって重さが増す。

SFとしては一行で書けるような設定にすぎないし、サスペンス性があるかというとそうでもなく、恋愛ものとしても傑出している訳ではない。だから、このいずれかのジャンルとして入り口を考えると、どこから入ってもやや物足りないのではないか。

しかし俳優の魅力や、控えめな色調や音楽の魅力が加わると、掛け算のように効果が増して、重く深い印象が残される。

最終的に示される主人公の境遇は「どこの国の誰にも逃れられない普遍的な運命そのもの」だと感じられる。

やや誇張されているだけの話で、誰もが子供の頃に「自分にも死が訪れる」と知る。それでもパニックになったりはしない。その後、いろいろあって最終的には「虚しい」とか「満足している」とか、自分で自分を納得させながら、あるいは葛藤しながら死を迎え入れざるを得ない。そういう普遍的な話ではないだろうか。

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