求む、あなただけの冒険譚!
78 作品
この度は「ソード・ワールド2.5リプレイコンテスト」にご応募いただき、誠にありがとうございました。
本コンテストには、全78作品ものご応募をいただきました。
2008年にスタートを切った『ソード・ワールド2.0』、その後継となる『ソード・ワールド2.5』、さらにはそれらの前身となった『ソード・ワールド』シリーズにおいても、様々なリプレイシリーズが刊行されて参りました。
数々の人気シリーズを展開してきたこの『ソード・ワールド・リプレイ』ですが、当然ながらその根幹にあるのは、テーブルトークRPGです。そして、テーブルトークRPGは、プレイしているみんなが主人公となるゲーム。
そこで、実際に『ソード・ワールド2.5』をプレイし、楽しんでくださっているみなさんと、新しい時代のリプレイを作り上げたいと、本コンテストを開催させていただきました。
そんな想いに応えていただき、78作品もの応募をいただきました。どれもこれも「プレイを楽しんでいる気持ち」「リプレイへの熱意」が伝わってくる、素晴らしい作品ばかりでした。
ひとえに、リプレイというジャンルに対し、強い熱意と関心、期待を持っていただいていることの表れと感じ、嬉しく思っております。
本コンテストでは、読者選考の後に一次選考を行い、オリジナル部門より10作品、課題部門より4作品が最終選考へと進めさせていただきました。
一般的な会話形式の作品はもちろん、小説形式など、様々な形のリプレイ作品の応募がありました。
その中でも、「いかにテーブルトークRPGを楽しんでいるか」「ソード・ワールド2.5の魅力を活かせているか」「それらが読者に伝わるよう工夫されているか」といった点に重点を置き、選考いたしました。
最終選考に残った作品は、そのどれもが多くの魅力と工夫に満ちあふれており、その中でも特に完成度の高い作品を、「大賞」及び「特別賞」として選出いたしました。
大賞の受賞作品は、2022年度以降の書籍化を目指し、制作を進めて参ります。
また、皆様に『ソード・ワールド2.5』を引き続き楽しんでいただくため、サプリメントやシナリオ集など、リプレイのみならず、様々なシリーズ作品の制作を進めております。
今後も『ソード・ワールド2.5』をどうぞよろしくお願いいたします。
株式会社グループSNE 北沢慶
株式会社KADOKAWA ゲーム・企画書籍編集部
カクヨムで開催されるソードワールド2.5リプレイコンテストに出場したくなったGMの前に現れたのは全員がグラスランナー小人のパーティだった!?
グラスランナーたちに翻弄されるGM。
頭までグラスランナーになっていくPLたち。
果たしてセッションは無事に終了するのか?
一国の姫から届いたロマンチックな救援依頼。
書いてあったのは自らを攫ってほしいという一文と小説の一説。
訝しむ仲間を制し、リーダーは飛空艇の船首を城へと向けた。
なぜなら彼らは、空の義賊の冒険者達だから!
義賊達は伊達と酔狂を誉とする。進め、飛空艇ムーンライトマイル号!
あえて冒険者ではないキャラクター(空の義賊)を中心に据え、飛空船を用いた義賊団を主人公とする大胆な設定に、まず引き込まれました。
プレイヤーキャラクターの数を3人に絞り、キャラクター性やストーリー性に重きを置いた構成も意欲的で、派手な演出や物語も視点がブレずに読み進められる効果を生んでいました。
冒険の舞台であるスフバール聖鉄鎖公国も、ルールブックⅢに記載されているわずかな設定を最大限に膨らませ、魅力的な舞台に仕上げていた点も好感が持てます。公式設定の範囲内に収めるのではなく、そうした設定を下敷きに、やりたいことをやるための舞台装置として広げる大胆さは、表現者として素晴らしい才能です。
ほぼ文庫1冊分に相当する分量でありながら、ダレずに読み進める筆力や構成力もあり、素晴らしい作品に仕上がっていたと感じています。
北沢慶
「性別も種族も、愛の前ではちっぽけだ!」
そんなGMの思いで開催されたソードワールド 2.5セッションのリプレイです。
サプリメント『鉄道の都キングスフォール』に収録されたシナリオソース「魔動機兵のターゲット」を大胆に百合アレンジして遊んでいます。
プレイヤーキャラクターを二人だけに絞り込み、その関係性と、舞台となるキングスフォールという街、そしてそこに暮らす人々の描写に重点を置いた作品作りに魅力を感じました。
また、プレイヤーキャラクターが、500年の寿命を持つエルフと、50年しか稼働しない人造人間ルーンフォークという組み合わせは、『ソード・ワールド2.5』のラクシア世界における種族の寿命の違いを強く感じさせ、その流れる時の速度の差もキャラクター間の切なさや絆を描くのに効果的に活用されていました。それは、登場するNPCたちにも活かされており、魅力や切なさが演出されており、引き込まれました。
女性同士の信頼関係や愛情をテーマに、それをネタや単にベタベタしたものとしては扱わず、異種族間、同性間で起こるドラマとして、丁寧に読みやすく描かれていたのも好感度の高いポイントです。
加えて、そうしたキャラクターの絡みが中心のリプレイと思わせておきながら、クライマックスの戦闘シーンではゲーム的なジレンマを取り入れており、「キャラ」「ストーリー」「ゲーム性」のすべてをバランスよく配置している点も高く評価したい点です。
『鉄道の都キングスフォール』掲載のシナリオソースを大胆に改変し、自分の描きたい世界を表現しているのもお見事。
続きを読みたくなる作品です。
北沢慶
舞台となるのは、魔動機文明の技術復興により、魔動列車と鉄道網が再建されたドーデン地方。
地方最大国家であるキングスレイ鉄鋼共和国、その首都「キングスフォール」に、一組のメリアの親子が暮らしていた。
冒険者たちが受けた依頼は、そのメリアの子どもの護送依頼。
一見すると簡単な任務に思えるが……?
無邪気なメリアの少女が、冒険者たちの心に残すものやいかに――。
遊んでいる人たちの楽しさがよく伝わってくる作品でした。NPCを見守り、成長させること――ゲームデータのみならず、精神的な面でも――を縦軸にしながら、それぞれのPCのドラマも注ぎ込んでくるエネルギッシュな物語です。簡素ながら要点がしっかりたシナリオが、この“ロールプレイング”の楽しさを後押ししています。著者の語り口の軽妙さもあり、読後感のよいものとして仕上げられています。
(評点にはなりませんでしたが)コンテスト期間より後に投稿された第2話以降も冒険の多様性がよく現れた楽しいものです。PCたちの拠点である“鉄道の都”キングスフォールは、『ソード・ワールド2.5』世界の中では、都市性や先進性の高い場所として設定されています。「フラワリングスターズ」は、そこをうまくついてきたなと感じるところです。彼らの未来に幸あらんことをと願わずにいられません。
清松みゆき
水の都ハーヴェス王国から飛び立った一隻の魔航船が姿を消した。
時を同じくして、小さな村に上空から謎の魔動機が落下する。
冒険者ギルド“漆黒の刃”に所属するレイン達5人は、異なる2つの事件の真相を探るべく依頼を受けることに。
墜ちた魔動機を調べると、その目的地に設定されていたのは“空”。
そこには蛮族たちの大きな陰謀が隠されていた…。
2つの依頼書に始まり、謎めいた状況が次々に現れ読者とプレイヤーを物語に引き込んで行きます。シナリオの力強さは随一で、驚きと仕掛けとが次々に降りかかってきます。
プレイヤーたちもこれに怯むことなく応じます。ときには正面から、ときには搦め手から。状況の不思議さや厳しさを面白がり、ロールプレイングを織り交ぜ、またゲームデータを駆使して、口八丁手八丁で解決していきます。意表を突いた仕掛けと斬り返しの妙味は、GMとプレイヤーが確かな信頼関係のもと、ゲームを思いのままに楽しんでいるがゆえと言えるでしょう。その上で賽の目という破壊神までちょっかいをかけようとしてきます。
冒険の楽しさ、ゲームの楽しさ、その両方ともを存分に訴えることに成功した、リプレイの王道とも呼べる爽快感の強い作品です。
清松みゆき
「ソード・ワールド2.5リプレイコンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
プレイヤーキャラクターが全員グラスランナーという異色作で、最初はウケ狙いのネタ枠かと思われたのですが、選考会で審査員全員が高い評価を付け、結果、大賞に選出されました。
力もなく、魔法もまともに扱えないグラスランナーという種族だけでパーティを組む、という一見色物にしか思えない構成で、きちんと役割分担を作れているのはお見事。
また、楽天家揃いでパーティのトラブルメーカーになりがちなグラスランナーという種族だけでありながら、きちんとキャラクターの差異をロールプレイし、それをリプレイとして読みやすくまとめている筆致も完成度が高く、1本のリプレイとしての構成も優れていました。
読みやすい分量でまとまっており、それでいて続きを読みたい、このキャラクターたちの活躍をまた見たい、と感じさせる読後感も評価されました。
課題部門への応募ということで、(既存のシナリオを使用していることから)シナリオの構築力や意外性の演出などは未知数ですが、そうした部分を考慮してもなお、作品への評価は揺らぎませんでした。
書籍化するにあたり、オリジナルのシナリオによる第2話以降が描かれることとなるはずなので、必然的にそちらへの期待も高まります。
北沢慶