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2,391 作品
この度は多数のご応募ありがとうございました。『えんため大賞 ファミ通文庫部門』からリニューアルし、第1回目として開催した『ファミ通文庫大賞』ですが、予想以上に多くの応募作が集まりました。
ウェブ小説、そしてカクヨムの盛り上がりが実感できる応募数でしたが、応募作全体の傾向としましては「異世界転移 or 転生」「異世界ファンタジー」に限らず、多彩なジャンルに渡っていました。
連載を前提としている作品が多いということもあり、続きが読みたいと思える魅力的な作品が多かったのですが、受賞作の4本はそれに加えてオリジナリティがある世界観設定や全体の構成を意識した大きなエピソードの盛り上がりを作ろうという意識が感じられた点が高く評価されました。
受賞作は2020年初頭の刊行を予定しております。
第2回の開催も予定していますので、どうぞふるってご応募ください。
傘寿(八十歳)のおばあちゃんが異世界に転生。
若者ならいざ知らず、体力のないおばあちゃんが右も左も解らない異世界でどうやって生きて行くのやら。あれっ、でもこのおばあちゃん意外と順応性高いかも……。
三十人の生徒がある日、奇妙な学校へと浚われゲームを強要される。ゲームの名前はクラスメイトゲーム。
配役に沿った行動を義務付けられた生徒達の中に、《殺人者》と呼ばれる配役が居た。《殺人者》は一日一人を消す義務があるという。
保身、正義、欲望、恐怖、混乱。カルネアデスの教室には、様々なものが渦巻いていた。
疑似学級で与えられた役割をこなしながら目的を達成しようと各人が奮闘する"人狼"に近いデスゲーム小説で、緻密な構成が評価されました。ありがちなデスゲームの枠に収まらず、各人の"役割"に即した能力の使い方や終盤のどんでん返しには目を見張るものがあります。一方でキャラクター描写の弱く、改善の余地があると判断したため特別賞の授賞となりました。
幾度となく勇者らとの戦いに勝利した魔王は、彼らとの戦いに飽きてしまった。
もはやこの世界には用はないとばかりに、次なる楽しみを探して転移魔法を使用する。
偶然にも転移したのは現代日本。
ただし、そこはダンジョンと冒険者が存在している少し違った日本であった。
しかも冒険者は『潜って屠れるスター』と呼ばれて人々の憧れの的となっており、人気投票まで行われている世界であった。
奇妙な世界だと思っていた魔王であったが、ひょんなことから鳴かず飛ばずの女子高生冒険者・掛田志保に心を奪われる。
魔王は彼女を人気投票1位とすることに新しい楽しみを見出すのであった。
魔王が日常に溶け込んでしまった志保の今後はどうなってしまうのか……。
魔王が転移(転生)する作品は定番化してきていますが、本作は俗人化した魔王とヒロインの関西弁少女のやりとりが強烈かつ、彼らの目的がダンジョン攻略動画を撮影して再生数を稼ぐというもので、他作品と大きく差別化できていました。構成の弱さを指摘する声もありましたが、授賞自体は選考委員全員一致で文句なしのクオリティです。
共同選考を行ったコミックコンテンツ編集部からも高く評価され、ゲームが題材ではありませんがコミカライズが予定されています。
大神那央は、自他共に認めるBL大好き女子――いわゆる腐女子である。 しかし十九歳になってすぐに事故死。生まれ変わった先は何と、嫌々プレイした乙女ゲームの世界だった。
おまけにポジションはヒロインをいじめ倒すライバルの悪役令嬢。ちなみにこの悪役令嬢のクラティラス・レヴァンタ、どのルートを辿っても必ず死ぬという運命にある。
だがそこは『次に生まれ変わったら今度こそBLワールドかもしれないから』と来世に期待。クラティラスとして生きることになった那央は悲惨な未来を受け入れ、それまでの期間を伸び伸びと過ごすと決めた。
そして可憐なるヒロイン・リゲルをいじめ……たりせず、彼女を始めとする女子達にBLの素晴らしさを布教し、同志の輪を広げていく。
――が、とんでもない邪魔者が登場。
それは、アステリア王国第三王子のイリオス。 クラティラスの婚約者となり、後にリゲルに心奪われて婚約破棄を申し出てくる予定の彼が、大いなる敵として那央の夢見るBL開拓ロードの前に立ちはだかる……!
困ったら腐妄想で現実逃避してゲット・ザ・事なき! 限りなく腐リーダムに生きる悪役令嬢は、今日も我が道を突き進む!!
所謂、悪役令嬢物ですが、BL好きな主人公が非常に魅力的に描かれており、毎話BL要素を使って面白くなるように工夫されている点を高く評価しました。やや勢いだけで乗り切っている展開が見受けられたので商品化の際の課題がある作品ではあります。本作は「乙女ゲーム」が題材になっているということで、ゲームノベル特別賞を受賞していますので、コミカライズが予定されています。
講評
冒険とは無縁なおばあちゃん主人公がチート能力を得て若者と共に冒険者として成長していく展開がうまくコミカルに表現できていました。ただ、終盤の展開から締め方が強引で違和感がある点が選考委員から指摘されました。しかし、おばあちゃん主人公の語り口の説得力含め、高い筆力があると評価し、特別賞授賞となりました。