屈しない。常識を、塗りかえる。

夜会での衝撃的な場面から幕を開ける本作。
事件にからみ、みずからの家の失われた名誉を取り戻すべく、主人公ヴィクトリアはうごきます。智慧と勇気と、美しい鋭利をもって。

推理要素を含むおはなしですので、内容にはふれません。ですが、ひとつお約束できることがあります。ヴィクトリアの知性あふれる所作とことば、彼女に関わる美麗な青年たち、作者さまらしい緻密でしずやかな情景を追っているうちに、自然と物語の空気感の虜になっていることを。

わたしには、本作は、黒と銀をまとって感ぜられるのです。黒は、黒衣のことでもありますが、なにより、なにものにも屈しないことの象徴。そして、智慧と勇気の象徴たる、銀。世界を切り開く、誇り。

ラストにおいて、わたしは鳥肌をたてながら、そのいろで、塗りつぶされていました。ああ、と、声が出ました。

ぜひ、あなたも、塗りかえられてみてください。

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