救い。


正しい母親。
正しい家族。
正しい夫婦。
正しい愛情。

正しい、犠牲。

このおはなしに登場する人物たち……主人公たちは、みな何らかの事情を抱えています。誰もがそうであるように。わたしが、あなたが、そうであるように。

だから、優しくなれるはず、分かり合えるはず。
だって同じ人間なんだから。
だって悩みを抱える同士、なのだから。
そう、なりますよね。

だから、支え合えるはず。
夫に、友人に、親に、頼ればいい。
助けを求めればいい。
それができないなら、しないのなら、それは自己責任。
しないほうが、悪い。
そう、なりますよね。

遠いとおい、空。
秋でも冬でも見ることのできる、花吹雪。
天を覆う、すべてを包む、桃色の霞。

わたしも、あなたも、それを見ながら。
たがいの地獄を踏むのです。

正しい、犠牲。

たがいの能面を、見つめ合うのです。

正しい、諦念。

それ、でも。
それでも。

救いよ、あれかし。

ひとりでも多くの方の目に、この作品が留まりますように。

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