概要
山場でイヤホンが切れた。帰れない。だから、頭の中で鳴らす。
今日が勝負だとわかっていた中年の男は、逃げ場のないファミレスの窓側席でノートPCを開く。日替わりとドリンクバー、そしてイヤホン――音楽は彼にとって雑音を背景に落とす“結界”だった。物語が最大の山場に差しかかり、クライマックスまでのイメージがはっきり見えている。その瞬間、イヤホンの充電が切れる。充電器も忘れてきた。いつもなら撤退して「イヤホン充電+俺も充電」だが、今日は違う。ここで席を立てば、勢いも熱も散って「全部が無に帰す」予感がする。男は無音のイヤホンを外さず、雑音を主役にしない集中力で、頭の中に音楽を鳴らしながら最後の一文まで書き切ろうとする。
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