概要
「申請する」――それだけのはずが、身体が先に拒んだ。
理学部で学びながら教育課程も履修し、教員免許を取る。合理的で、誰に説明しても通る選択――そう信じていた。締切一週間前、教育実習の申請ページを開き、入力は滞りなく終える。残るは【申請する】のボタンだけ。ところがカーソルを乗せた瞬間、心臓が暴れ、息が詰まり、汗がにじむ。画面の文字が遠のき、“実習”が“学校”に、“教室”に変わっていく。呼び戻されたのは、中学時代の「グループを作って」という一言で取り残された記憶だった。計画と手続きで作れるはずの未来の手前で、身体だけが過去を覚えている。押せないボタンの前で、彼は言い訳の文章だけを整え、送信する。
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