森博嗣先生の超有名作品のタイトルを一文字変えただけでこんなお話に様変わりするとは……。
ある日、私こと我妻あかりの元に女神が現れた。女神は容姿端麗で自信に満ち溢れており、あかりは強いコンプレックスを抱えてしまう。
そんななか、女神は「願いを一つだけ叶えてあげる」と申し出てくる。果たしてあかりの叶えてほしい願いとは――。
その願い事に思わず笑ってしまいました。人間誰しも「一つだけ願いを叶えるとしたら?」という問いについて一度くらいは考えたことがあると思いますが、本作の願いを夢想する人はなかなかいないでしょう。……いや意外といるのか? 僕にはあまり分かりませんが。とはいえ「一つだけ」と言われてこの願いを叶えようとする人はやっぱり皆無でしょう(笑)。
あかりの願いが叶って以降は、一種の「if世界」を描く作品へと変わっていきます。本作をはじめとして、『香車消失』や『一流弁護士』などなど、ゆいゆい様は設定に一捻り加えるのが非常にお得意だなと感じました。
失恋の疼きと長年の劣等感に凹む大学生、あかり。
彼女の前に現れたのは傲慢で完璧なボディの女神カトレア。
施しのように〝願いをひとつ叶えてくれる〟
そう言い放ちます。
既に地に落ちていた自己肯定感をカトレアからさらに下へ地の底へと落とされたあかり。
呻吟の中で弾かれた、その願いとは。
〝比べること〟から逃れられ得ない人間の愚かさと儚さが導いた物語。
驚愕の結末は、読む者を唖然とさせる事でしょう。
この一点のために、すべての文章が組まれていたとさえ思われます。
最後の瞬間に目眩のするスペキュレイティブ・フィクションへと変わる物語。
ひととき眩惑をご堪能ください。