本作は、日常の何気ない場面を描いたものである。
アジアのある港町。
果物農家の方がトラックで果物を売りに来ていた。
それを、著者家族は買いに行く――。
なにか特別なことが起きるわけではない。
それなのに、とても丁寧にその時間は切り取られ、描かれている。
著者は文章によって、その記憶の情景を読者に“見せる”のがほんとうに上手く、毎度感動を覚える。
見知らぬ街、見知らぬ人たちのそこに確かに在った日常のひと場面。
たとえば映画の心に残るシーンというのは、なにも劇的なシーンばかりではなく、こうした特別ではない日常のシーンであったりする。
本作もまさにそういった日常の場面である。
何気ない、でもそれ故に心に焼き付き特別となった想い出を共有してもらったような、切なさと温かさの入り混じった感情を覚える作品である。
ぜひご覧ください。