【第二十八章:天使の輪と悪魔の角の混沌】
爆心地から現れた赤髪の少女――
遠目にはただ派手に見えたが、近くで見ると、こいつのファッションは装飾の限界に挑戦しているというか、「
左側には長くてモフモフした白い垂れウサギ耳が揺れ、右側には黒い猫耳がピンと立って動いている。
額には鋭い悪魔の角があり、その真上には、なぜか神々しい金色の天使の輪が浮いている。
その輪が動くたびに「チリン、チリン」と聖なる音を奏で、首にかけた骨やガラス玉、謎の生物の鱗とぶつかり合って、不気味かつ賑やかなノイズを撒き散らしていた。
「うわっ! カッケェ!!」
セロシは周囲の緊張感など完全に無視し、キラキラした目で蟷螂を凝視した。
正確には、蟷螂の腰にある墨緑色の流線型ブレードを。
「すごい緑色! それ蛍光? それとも虫の体液?」
セロシは興奮して突進し、蟷螂の太ももにあるナイフに触ろうとした。
「ねぇねぇ! それ頂戴? 代わりにこれあげるから――」
彼女はスカートの下から、泥だらけのステンドグラスの破片のようなものを取り出した。
「これこの前掘り出したやつ! 超レアなんだよ!!」
「――汚い!! 寄るな!!」
蟷螂の反応は神速だった。
彼女の潔癖神経が焼き切れたのだ。
シャキッ!
墨緑のサブ・ブレードが抜かれ、彼女はコンマ一秒でバックステップを踏んだ。ゴミを見るような目で叫ぶ。
「近づかないで! この全身雑菌まみれの移動汚染源が!」
「え? 気に入らない?」
セロシはコテンと首を傾げ、天使の輪もつられて傾き、危うく猫耳にぶつかりそうになった。
その時、遠くから大量の機械駆動音が響いてきた。
さっきの連続大爆発のせいで、周辺数ブロックの擬人機とパトロール隊が全員引き寄せられてきたのだ。
無数の赤いレーザーサイトが、雨のように俺たちに降り注ぐ。
「数……三百以上」
後ろに隠れていた飛蛾が強張った声で告げた。
周囲の「星屑」が細かく振動している。銀の睫毛の下、淡い紫のデータ光が走る瞳で、彼女は言った。
「……数が多いよぉ……みんな、警戒して!」
「あーあ……」
魔王は地面に座り込み、頭を抱えたまま動こうともしなかった。
彼は盛大なあくびをして、気だるげに言った。
「セロシ、お前が呼んだんだから、お前が片付けろ」
「了解でーす! 魔王様!」
セロシは悪びれもせず、元気よく返事をして振り返った。
彼女は津波のように押し寄せる機械の軍勢に向かって、両手を広げた。
天使の輪が高速回転し、眩い金色の光を放つが、その顔に浮かんでいるのは悪魔のような狂気の笑みだ。
「さーて! 面白い飾りはあるかな~~!!」
彼女は弾むような声で言った。
そして瞬きもせず、両手の指で前方の空気を摘むような仕草をした。
「キャハハハハ!!! たーのしーい!!!!」
魔法陣も、火の玉もない。
ただ、俺たちの前方にある扇状の空間内の魔力因子(ここは希薄なはずだが、彼女がどこかから無理やり吸い寄せたらしい)が、彼女の手によって粘土のように捏ねられ、全てのロボットの関節部分に強引に圧縮された。
ドォォォン!! ズガガガガガ!!!!!
火薬の爆発ではない。
純粋な気圧と魔力密度の不均衡による連鎖破裂だ。
最前列にいた五十体の擬人機が、関節、コア、銃身から、一斉に内部破裂を起こした。まるで体内に見えない爆弾を仕込まれていたかのように。
金属片が花火のように飛び散る。
「アハハハ! いいね! もう一回!」
セロシは爆発のオーケストラを指揮するように、指を空中で乱舞させる。
ロボットがいる場所で、次々と虚空が爆ぜる。
「な……なんなのあの原理?」
横で見ていた蚊が呆然とし、高周波ナイフを持つ手が震えていた。
「触れてすらないじゃん? あれも異能?」
「密度だ」
魔王が気だるげに解説し、ついでに飛んできた鉄板からネフヤを庇った。
「あいつは空間内の魔力濃度を支配できる。一点に集めて圧縮すれば爆発する……ここの魔力はゴミみたいに少ないが、あいつの遊びには十分だろ」
「もういいだろ」
魔王が立ち上がり、尻を払った。
彼は蜂鳥を見た。
「君ら、G-44とかいう所に行くんだろ? 距離忘れたけど」
「は……はい」蜂鳥はまだショック状態で、条件反射で頷いた。
「ここはうるさいし、歩くのもめんどくさい」
魔王はため息をつき、今まさにロボットの頭を引きちぎってサッカーボールにしようとしていたセロシの方へ歩いていった。
「セロシ、来い」
「えー? 魔王様! あそこに金色の隊長機がいるの! あの中にある四角くて薄いキラキラしたやつ抜きたいんだけどー!」
魔王は問答無用だった。
彼は無言で手を伸ばし、セロシの悪魔の角の片方をガシッと掴んだ……邪魔な天使の輪を器用に避けて。
「ひゃっ!?」セロシが硬直した。
「魔力、借りるぞ」
魔王の手が黒く光った。
こいつの体内に渦巻く、混沌とし、暴食によって膨れ上がった無尽蔵の魔力が、魔王というポンプによって、慈悲なく吸い上げられていく。
「あだだだだ! 魔王様優しくして! それ『究極花火』作ろうと思って溜めてたやつぅぅぅ!」
セロシが悲鳴を上げ、空気が抜けた風船のようにぐにゃりと軟体化した。
「よし、準備完了」
チャージを終えた魔王の死んだ魚のような目に、珍しく精光が宿った。
彼は俺たちを見た。
「行くぞ」
ネフヤが嬉しそうに魔王の足にしがみついた。魔王の手には、白目を剥いてダラリと垂れ下がったセロシがぶら下がっている。
パチン。
指を鳴らす音。
世界が紙くずのように丸められた。
高速移動ではない。
目の前の景色――燃える街路、灰色の空、押し寄せるロボット軍団――が、油絵の具のように溶け、回転し、強引に別のキャンバスへと塗りたくられていく感覚。
強烈な吐き気。
内臓を一度引き伸ばされて、また詰め込まれたような……。
魔王の名のもとに、この錆びついた空に祝福を ネフヤ @Naiphya
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