お喋りするように書いてみたエッセイ
松下友香
クリスマスイヴに壊れた鍵穴
それはクリスマスイヴのことだった。
仕事から早めに帰宅して、玄関のドアの掃除をした。次女の友人が遊びに来るということもあって例年よりも気合いが入った私は、よさげな「水垢用スプレー」を片手に玄関のステンレス製ドアに吹き掛け、ぞうきんで拭きあげた。
きれになるはずだった……。
乾いたドアには、スプレーの跡がくっきり残ってしまった。
そう、まるでアートのような水しぶきの模様だ。
完全にスプレーの選択ミスをしたことに気付いた。
意気消沈しながらも、マイホームセンターに花壇用の花の苗を買いに行った。既に日は暮れて雨が降っていた。バイトの店員だろうか……。タメ語で話し掛けてきた。
「最近の子は」と思うのはやめておいた。
自分も娘もこんな感じでバイトをしているかもしれない。
帰宅した私は、ドアの鍵が回らないことに気付いた。(ひょっとして水垢用スプレーの影響か?)
「上の鍵が入らない……」
下の鍵を回してみた。こっちは大丈夫だ。
ドアチャイムを鳴らし、次女に中から鍵を開けてもらった。
次女の鍵でもやってみたが、同じだった。
「あ、オイルスプレーやってみよう」
プシュー
状況は変わらなかった。
「こんな年末に困ったね……」
取りあえず単身赴任の夫に鍵穴が壊れた旨のLINEをするも、
「どうにもできない」とのこと。そりゃあそうだ。
多分、玄関に住宅メーカーから封筒が届いていると思う。
(千里眼か!?)
疑いながらも玄関に行くと、確かに封筒が届いていた。
そこに電話を掛けて状況を説明した。
「それでは業者から電話をさせます。応急処置としては、粉を鍵穴に入れてみてください」
「粉?ですか」
「そうですね。鉛筆の芯を粉にしてみてください」
「はい…」
「電話は25日になるかもしれません」
「あの……年末のうちに来てもらえそうですか?」
「それはわかりません」
若干、不安なままにクリスマスイヴを過ごした。
鉛筆の粉ってね、そんなに大量に作れるもんじゃないしねえ……。
そう思いながら紙に鉛筆を走らせ粉を作っている横で次女はタブレットPCで何か見ている様子。
「ほら、チャッピーが教えてくれたよ。オイルとか、粉とか入れない方がいいって」
「え、もうオイル吹き付けちゃったよね」
しばらくの沈黙
ま、なんとかなるさと思うことにして就寝。
翌日、業者から連絡があり、今日の夕方なら行けますがとのこと。
業者が早速やってきた。(ありがとう😆✨)
「これは、もうお手入れをするより鍵穴を変えた方がいいですね」
昨日の処置を伝えると
「オイルは中で固まってしまうので絶対やらない方がいいです」
「鉛筆の粉を入れてって言われたんですけど」
「ああ、それもやんない方がいいんですよね」
「コールセンターの人に勧められて」
「いやあ、何度も言ってるんですけどね、それ言わない方がいいですって」
取りあえず、鍵屋さんが来てくれて安心した私は、もはやオイルのことも粉のことも気にならなかった。
しばらくして、作業は終わった。
「そういう時にはコレ。ホームセンターで売ってますよ」
年に1回くらいこのスプレーをして、鍵をガチャガチャと回すだけでいいらしい。
マストバイだなと思い「写真撮っていいですか?」(スプレーの)
「皆さんよく携帯で写真撮られてますよ」
きっと、爆売れだな……。
と思ったクリスマスなのだった。
鍵穴スプレーは色々なメーカーから出ているようです。
そしてドアの汚れは、水垢ではなく、白錆らしいです……😅💦
今はドアにペンキを塗りたい衝動を抑えて暮らしています。
(絶対やんない方がいいよねと思いつつも、ペンキ塗りしてみたい私)
お喋りするように書いてみたエッセイ 松下友香 @mokasanhamamatsu
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