クリスマスイブの前夜に浮気した夫の末路

猫の集会

浮気

 はぁーあ…

 

 

 冬の昼下がり、わたくし葉子ようこは大きなため息を漏らした。

 

 

 現在更年期真っ只中。

 

 寝ても覚めても瞼が重く、家事を始めるまで時間がかかる。

 

 しかし、そうは言っても起きてからなにもしているわけではなく、まず思春期真っ只中の中学生の娘を起こして朝ごはんの支度。

 

 気分がいいときはいいが、不機嫌のときはあまり関わらないようにしている。

 

 

 そして娘を送り出したら今度は夫起床。

 

 

 …

 

 夫は、会社でそこそこ上の立場ということもあり、平気で出勤時間を過ぎてから起床してくることも多々ある。

 

 そして、のんびりと朝風呂をする。

 

 とうに出勤時間は過ぎているというのに、いったいどういう神経をしているのだろう?

 

 これがかなり迷惑だ。

 ストレスでしかない。

 

 なぜって?

 

 下で家事をしようものなら、いちいち朝ごはんの文句を言い出すので、夫が出勤するまで、とにかく二階に潜んでいないとならないのです。

 

 いちいち人の手をとめる夫。

 

 朝ごはんの文句以外にも、とにかく朝は不機嫌なので、なんだかんだいちゃもんをつけてくるのである。

 

 

 そのため、わたしのパートの出勤時間も迫ってきてしまうのだ。

 

 

 おかげで、朝ごはん抜きってことも多々ある。

 

 

 朝から夫のストレスサンドバッグになるくらいなら、朝飯抜きの方がまだましだ。

 

 

 それからやっとこ夫が出勤して、ペットのお世話をして、フリーターの息子の朝ごはんをテーブルに置いていく。

 

 

 息子は息子でマイペースなので、バイトをサボって夕方まで寝続けるなんてこともしょっちゅうだ。

 

 

 それもストレスのひとつだ。

 

 とにかく体調不良とストレスのサンドイッチ状態だ。

 

 

 はたからみたら、幸せ家族なのだろう。

 

 

 しかし…

 

 実はそうでもない。

 

 

 わたしは、ずっと耐えてきた。

 

 

 夫からの高圧的な態度に。

 

 

 そもそも結婚したころは、生活も裕福ではなく、毎日家計簿と睨めっこだった。

 

 子どもを育てることに精一杯で、クタクタな毎日だった。

 

 

 赤ちゃん…早く歩いてくれないかな?早く自分でご飯を食べてくれないかな?

 一人でお風呂入ってくれないかな?

 と、とにかくずっと子どもにつきっきりと言った感じでした。

 

 夫は、手伝うどころか…毎昼、近くの会社から帰ってきてお昼ご飯を家で食べる。

 

 子どもがグズっていてお昼の用意ができなかったときは、カップ麺で済ましてもらう時も一年に二度くらい訪れる。

 

 そんなバタバタの状態だから、わたしはつい夫に声を荒げた。

 

 

 沸騰してるから火止めて!と。

 

 するとその口調にイラついた夫は、なんだその口調は?お前の家事をオレが手伝うのに、そんな偉そうにいうな。

 と、怒り出す。

 

 

 そもそもその昼飯は、あなたのですけど?

 と、思うがそんなこと言おうもんなら専業主婦のプー太郎がなにいってんだよと言われて、その後もぶちぶち言われ続けるのが目に見えているのでグッと抑える。

 

 夜の生活もとてもじゃないけど営めないくらいクタクタだ。

 

 

 しかし、夫はクタクタじゃないのでとても元気いっぱいだ。

 

 そんなに元気なら少し家事とか育児手伝ってって思うが、オレは仕事。お前は、家のことと、勝手に割り振られている。

 

 夜の相手も強要だ。

 

 

 そんな夫は、自分に甘い。

 

 夫が高熱になったときは、自分は体にやさしいものを要求するのに、わたしが高熱でも高カロリーなハンバーガーなどを用意するどころか、一緒についてこいといいだす。

 

 まぁ、用意しないよりは…マシなのかな?

 

 てか、買いに行くのも同伴させられる。

 

 車に乗ってるだけでいいからついてこいと。

 

 …意味がわからない。

 

 熱があるのだから、家で寝させてもらいたい。

 

 

 なので、そんな生活が十年くらい続いたこともあり、忙しい毎日だった。

 

 午前中は、バタバタだ。

 

 

 あと、一番しんどいのは夫の実家への帰省だ。

 

 

 とにかく荷物の梱包が面倒だ。

 

 もちろんだれも手伝わない。

 

 

 何度か子供達にもお手伝いをお願いしようと試みたが、それをみた夫が

「そうやって自分の仕事を子どもにやらせて、どんだけ自分が楽したいんだ」

 なんて嫌味を言ってくるもんだから、あまりお手伝いも頼まなくなった。

 

 そんなこんなで、子どもたちも家事は母親がやるのが当たり前だと思い込んでいる。

 

 で、何より夫の実家への帰省はとにかくしんどいのだ。

 

 

 なにがって、一週間の滞在だったりするからだ。

 

 

 そんなに行かなくてもいいんじゃないかって提案しても、

「そもそもお前の実家は、近いんだからいいけど、うちの親は滅多に会えないんだから、そのくらいいいだろ」

 と、言われてしまう。

 

 近くても、そうそう実家に帰ることすら許さないくせに…

 

 なんなら、わたしの実家に帰ることは禁止されているに近い。

 

 なぜなら、不思議なことにわたしが実家に帰ると、必ず夫から電話がくるのだ。

 

 そして今どこ?と聞かれる。

 

 

 買い物も毎日行くなって言われていたが、買い物中もよく電話がかかってきた。

 

 

 そうすると、心臓がバクバクする。

 

 でなきゃ怒られるし、でたらでたで…今どこ?だ。

 

 そもそも買い物は、夫のものが多い。

 

 毎日必ず食べるものが決まっていて、主に健康食品だ。

 

 忘れると、怒られるので買い足すこともしばしばあるのだ。

 

 でも、なぜいつもドンピシャなのだろうと不審に思っていたら、わたしの情報を仕事中確認していたようだ。

 

 だからわたしは、それとなくだれかに携帯で監視されているみたいだと夫にわざと相談してみた。

 

 するとやっぱりしらばっくれる夫。

 

 なのでわたしは、携帯ショップに行ってその情報をブロックしてもらうことにした。

 

 

 それから少し監視が減ったかな?

 

 

 まずは、ひとつクリアだ。

 

 あ、そうそう。

 話が思いっきりズレたんですけど、夫の実家に行くと、義母が子ども好きってこともあり、子ども達は義母とよく遊んでくれていたのでわたしは茶碗洗ったりしていたんですよ。

 

 夜ご飯のお手伝いとかもしてましたよ。

 

 とにかく帰省する理由は、子供好きな母親孝行だと夫は、思っているみたいです。

 

 夫の実家は、観光地でも人気なところだったので、長い滞在の間にお出かけもしました。

 

 

 そうでもなきゃ、やってられませんって。

 

 で、観光したりしたんですが…

 

 

 

 ある日、数年が経ったころ夫と夫の父が電話で言い争いをしたんですよね。

 

 

 そしたら、とばっちりがわたしにもやってきて…

 

 

 夫の父からのクレームのお手紙が届きました。

 

 

 毎年バカンス気取りで、帰省するお前たちが煩わしかったとか、子どもの教育がなっていないとか…

 

 

 はぁ?

 そもそもあんたがきちんと息子を教育してないからこんな息子に育ったんじゃありませんか?まず孫の文句より実のムスコのこと、どうにかしてください‼︎って言いたかったですね。

 

 

 言わないですけどね。

 

 

 そうこうしている間に、義母は病気で他界いたしました。

 

 それ以降は、夫の実家には立ち寄っておりません。

 

 そんな夫は、クリスマスイブ前夜浮気いたしました。

 

 

 以前から、週一程度で会社の付き合いで飲み会だと言っていたのですが、半分は嘘だったみたいなのです。

 

 給料が上がってからは、オレがやりくりすると息巻いていた夫でしたが、毎月十万の架空出費が発覚。

 

 問い詰めるも、知らないと言い切る夫。

 

 そんな夫が、イブ前日夜会社から帰るなり、飲み会今から行かなきゃだからと、お風呂に入り歯磨きをして、ウキウキで出かけて行ったのです。

 

 これは…

 

 ピンときましたよねー。

 

 で、数日後調査していただいた結果黒でした。

 

 なんてこと…

 

 これは、もう最高です‼︎

 

 

 実は、わたしは更年期の他にストレス不眠疲れからくる神経性の病気にもなっていたのです。

 

 それを知りつつも、飲み会をやめない夫。そして、お金や記憶をなくすことも多々…

 

 さらには、仕事と繋がりが持てるかもしれないと、誰とでも連絡先を交換する。

 

 …

 

 お前の病気は、オレには関係ないの一点張りだったので、ようやくこの地獄から解放の時がやってきたのです。

 

 

 おかげさまで、無事慰謝料と養育費をゲットいたしました。

 

 浮気相手からも慰謝料ゲットです。

 

 夫は、浮気相手の慰謝料も払い再婚したみたいなんですが、その後すぐに元夫は病気になり無収入に。

 

 すぐさま捨てられたそうです。

 

 そして、元夫は実家の父親に面倒をみていただいているとかなんとか。

 

 さて、わたしはというと病気が驚くほど良くなって、今じゃ元気いっぱいです‼︎

 

 子どもたちも、家事を進んで手伝ってくれるようになりました。

 

 今までは家事を手伝おうものなら、おとうさんに、お手伝い代なんかやらねーからなって嫌味を言われるのが嫌だったから、やらなかったと言っていました。

 

 かげでそんなことを言っていたなんて…

 

 

 とにかくあの悪魔がいなくなって救われました。

 

 これからは、のびのびと幸せに生きて行こうと、青空を見上げて前に進んだ。

 

 

 

 おしまい。

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