第3話 一度元の世界に戻る
森に着くと元の世界へのドアを探す前に“あかね”らしき人物の家をもう一度探してみた。そしてその場所に行くとその家立っていた。
優二は“そんな事があるのか・・・“と不思議に思ったがその家を尋ねてみた。しかしそこには誰も居なかった。
そして優二はある推測をして仮定を立てた。それは中天と上天が繋がっているがそれが安定してない為、そこを行き来しているのではないか。そして女性はただの他人の空似ではなかったのか、これは仮定にしかすぎないがそうすると説明がつく気がした。
優二はその仮定を確かめたかったが、時間が無いので元に戻るドアを探し見つけたので、ドアに手を掛けて開けてくぐると廃ビルの屋上のドアの前に居た。
家に帰りつくと家族が心配していると思っていたが何も変わらずに過ごしていた。不思議に思い母親に声を掛けた。
「母さん俺の事が心配じゃなかったの?」
「心配・・・それはこれからの事とか心配はしているよ。」
「いやそうじゃなくて俺が帰って来なかったこととか、今までどうしていたとか?そういうのは心配じゃなかったの?」
「何を言っているんだい。優は何時ものように帰って来たじゃないか。心配することはなにも無いよ。」優二は驚いて
「今日は何月何日なの?」
「何、言っているの、今日は○月×日だけどそれがどうしたの?」
優二は驚いた。その日は別世界に迷い込んだ日にちで今の時間は廃ビルに入った時間から1時間しかたってなかった。“俺は時間も乗り越えてしまったのか。”そんな事を思いながら少し黙っていると、母親が怪訝な顔をして
「なにかあったの・・・・」と訊いてきた。
「いや何でもない・・・それよりお風呂沸いている?」
「お風呂・・・沸いているけど・・・珍しいわね、何時もはせかしても入ることを嫌がるのに。何かあったの?」
「いや何もない。今日はお風呂に入りたい、ただそんな気分なだけ。」
「そうそれじゃあ、さっさと入ってきちゃってもすぐご飯が出来るから。」と言うと夕飯の支度を続けた。
優二はお風呂に入るとそのまま自分の部屋へ向かった。そしてまずスマホをチェックした。するとナギからメールが来ていて“明日映画に行く事を楽しみにしている。”とあった。優二は明日映画に行く約束をしていたのを思い出した。
ナギは同じ部活の同級生だ。クラスは違うが部活の後には一緒に帰って色々な話をしている。
優二はナギに対して自分でも分からない思いがあった。それは異性としてみている思いなのか、親しい友人としてみている思いなのか区別がつかなかったが、もし中天に帰ると会えなくなるのでその思いを断ち切る事ができるか自信が無かった。
次の日になり優二はナギとの約束の場所で待っていた。ナギは時間どおりに現れいつものようにたわいのない話をしてくるがその話を優二は上の空で聞いていた。そして映画館に向かい映画を観た。
映画はアクションもので派手な爆破とかあったがそれを見ている時も優二は考え事をしていた。映画が終わり食事をすることになりファミリーレストランに入った。しかしその時にはナギは怪訝な顔で優二を見ていた。そしてすこし強めに言った。
「優、今日は会った時から心ここに有らずで、わたしの話も聞いてなかったみたいだけ何かあったの?」それに対して優二は少し間をおいて
「ナギ、俺の事をどう思っている?」
「何を、急に言っているの・・・、優は大切な友達だよ。」
「もし俺がいなくなったらどうする?」
「卒業したらこの町を出て行くって事?」
「そうじゃなく俺と会えなくなったらという事。」
「そんなの嫌だよ。例えこの町を出て行っても帰ってくれば会うことできるじゃない。そんな悲しいこと言うのは、やめてよ。」と言って優二を見たが
「本当に俺はいなくなるかもしれない。」
「何言っているの。ほんと今日はおかしいよ、優」
「本当の気持ちを聞かせてくれないか?」
「何本当の気持ちって?私が優をどう思っているかって事?私は優が居なくなったら寂しい。今はただそれだけ。」
「そうか・・・・」
「もう今日の優には付き合っていられない私帰る。」
「ナギ!」とナギを呼び止めて
しばらくナギと見つめ合ったが次の言葉が浮かんでこなくて
「・・・・元気でな。」と小さな声で言っただけで優二は帰って行った。
ナギも何のことか分からずにただ茫然と優二が帰って行くのを見送っていた。
その日は寝付くことが出ず朝を迎えてしまった。そして一日中、中天に戻るべきかそのままここに留まるべきか考えていたがどちらにするにも決心がつかなかった。
もし、中天に戻った時“後悔しないか?“また、ここに残った時”後悔しないか?“どちらを選択しても何がしかの後悔が残るそれは分かった。
そうなると、どちらの後悔が大きくなるかを考えた。ここに残ると今まで通り普通の高校生として過ごしていけばいいのだが、ニカラが言いていた“自分の魂は中天に生まれるはずそれが引きはがされてここに生まれてきた。”その事が気になってしょうがなかった。
“本当の自分とは一体何なのだ?“と、ここに残ればそんな疑問を持って生きて行かなければならない。
もしニカラが言う事が本当ならばカエラと会うべきではないか・・・。そう考えてもここに生まれてしまった事で、ここで生活を送って来た事には変わりがない。その生活をあっさり捨て去る事は簡単な事ではなかった。
そんな風に迷っていると中天に戻らなければならない朝を迎えた。優二はナギの事の心残りよりカエラに会わない事の後悔が大きいと思った。そしてそれは、いつかは家を出なければならいのだからと自分に言い聞かせた。最後に自分なりの家族との別れをすることにした。
最初は弟の部屋に行ってノックをして入ると弟はベッドで寝ていた。
「何だよ、兄貴、俺の所に来るなんて珍しいな。何か用か?」
「いや用は無いけど少し言っておきたい事があって。」弟は優二の顔を見て
「俺に話・・・、俺は兄貴に何かしたか?」
「いや何もないが・・・お前が使いたがっていた、ゲーム機を使っていいと、言いたいだけだ。」
「何だよ、それ、あのゲーム機は兄貴がバイトをして買ったやつで絶対に俺に触らせなかったのに使っていいとは熱でもあるのか。」
「いやそんなことは無い。言いたいのはそれだけだ。体に気を付けて暮らせよ。」と言うと部屋を出って行った。弟は“今日の兄貴はどこかおかしい”と思ったがそれ以上は詮索しなかった。
次に母親に会いに行った。母親は家事がひと段落してソファーに座りくつろいでいった。優二は母親の横に黙って座った。母親は優二の様子が変な事に気づき
「優何かあったの、この前から行動がおかしいよ。」
「いや何もない。少しここで休んでいたいんだ。」
母親は明らかにおかしい事に気が付いたが問い詰めるか黙っていようか考えていると優二は立ち上がりリビングを出て行った。
最後に父親に別れを告げたかったが仕事に行っていてそれは出来なかった。家族との別れは淡白なものになってしまった事を後悔したがこれからやり直す気にはなれなかった。
それからすぐにニカラの所へ向かった。ニカラは優二を見ると近づいて来て
「帰って来てくれてありがとう。」と言った。
「礼を言う必要はないよ、自分が何者か知りたくて帰ってきただけだから。そのためにはカエラに会って確かめようと思った。それだけの事。気持ちは決まったのでこれから出かけるので、上天に行く方法を教えて欲しい。」
「上天に行くには東の滝に向かって行く途中に洞窟があります。そこに上天に通じる通路を作っているのでそこから行って欲しい。
そしてこれは魔天王の城がある地図になります。城の見取り図もここに有るので参考にして欲しい。」
「ありがとう。それではすぐにでも出発します。」
「ちょっと待って。一人で行くつもり?」
「そのつもりだが・・・」と言った時、後ろから。
「俺たちも行くぞ!」と声がした。振り返るとナンテン、アナン、カナが立っていた。
「事情はすべて聞いた。俺たちも一緒に行くからな。」優二は彼らの顔を見てただ頷いた。ニカラは
「あなたたちにこの世界の運命が預けられています。カエラを開放して下さい。」
その言葉を聞いて優二たちは上天に向かった。
上天に行く途中ナンテンたちは特に話をせずに、黙々と歩いていた。東に向かい滝を探したが道に迷ってしまいその日のうちに滝を見つける事ができなかった。
どこか泊まれるところを探していると山小屋を見つけた。中に入ると一通りの備品がそろっていて泊まれそうだったのでそこに泊まる事にした。
そこにはテーブルも有り椅子も有った。三人は座って食事をして魔天王の城の見取り図を見ながら話し合った。まず城には堀があって正門は一つしかないが裏には窓があってそこから何とか侵入できそうな感じがあったので堀を渡り侵入することにした。
その役をカナが“自分がやる”と言ってきた。カナは小柄で窓からも入りやすそうだったのでそれを任せる事にした。そして門を中から開けたらみんなで突入してそのまま魔天王の部屋に向かう事で話はまとまった。
そこまで決まると四人は就寝した。
朝になり洞窟を探して何とか見つける事ができ中に入り上天に着いた。そこは暗い雲が覆っていてなんとなく雰囲気が悪かった。一行は城を探して、迷ったがしばらくすると見つける事ができた。
城に着くと夜中になるのを待って作戦通りカナがお城の裏の城壁を登り窓から入って行った。警備はそんなに厳しくなく、難なく門の所まで来る事ができた。しかし門を開けるには門番が立っていてそれを何とかしなければいけなかった。
そこで発煙筒を焚き大声で「火事だ!門を開けろと!」叫んだ。門番は慌てて門を開け一目散に逃げて行った。門が開き門番が居なくなったのを確かめて優二たちはお城に入って行った。
城に入ると魔天王の部屋に向かって行った。お城は魔天王の部屋に行くには迷路になっていた。それは見取り図によって分かっていたので抜ける事ができた。最後の部屋に入り次の部屋が魔天王の部屋に入りかけた時天井が降りてきた。
それをテンジンとアナンが抑えて「優二俺たちが抑えている早く魔天王の部屋に行け!」と叫んだ。優二はそれを見て少し躊躇した。それに対して
「何ぐずぐずしている。俺たちもそんなに時間は稼げないさっさと行くんだ!」
優二は「分かった!」そう言うと魔天王の部屋に入って行った。
部屋に入ると魔天王は椅子に座りこちらを見ていた。優二は
「カエラはどこにいる!?」
「カエラか・・・、カエラはその奥の部屋で休んでいる。あまり騒がしくすると起きてしまうので静かにして欲しいものだな。」
「ふざけるな。カエラを誘拐して幽閉していくせに!」
「人聞きの悪い事を言うな。何事もないように安全な場所に保護してあるだけだ。」
「そんな事はどうでもいい。カエラに会わせてもらう。」
そう言って歩き出そうとした時、床が抜けて下に落ちてしまった。魔天王は
「その部屋は自信を見つめる部屋だ。その部屋から抜け出したものはいない、しかし私は心優しい人物だ。最後にヒントをやろう、自分を見つめ直して心を無にすれば何か起こるかもしれない・・・」
「どういう事だ!」
「それは自分で考えたまえ。」そう言うと床が閉まり部屋は真っ暗になった。
優二は言われた通り何も考えずに無に成ろうとした。それを続けているうちに意識が遠ざかり暗闇に引きずり込まれそうになった時に声が聞こえた。
「優二・・・・優二・・・考える事を止めないで、考えて・・・考えて。」
その声に対して「君は誰だ。」と言ったが、返事は無くまた意識が遠のく感じがしたときに
「考えて・・・考えて・・・」と聞こえた。そこで優二は
“そうだ考える事を止めたら終わりだ。ここから抜け出す方法は何かあるはずだ!考えろ!考えろ!考えろ!”
そう思って目を開けた。すると先にかすかに明かりが見えた。その光に向かって歩いてそこを抜けたら魔天王が立っていた。魔天王は驚き
「どうしてあの部屋から抜け出した。あのまま何も考えずに無に成ったら幽閉できたのに。」
「お前の思い通りになってたまるか。人間は考える事によって道を開くんだ!」
「そうか折角殺さず幽閉しようと思ったがそれはやめてここで死んでもらおう。」と言うとピストルを優二に向け発射して銃声が響いた。
しかし優二は倒れず魔天王が倒れていた。優二は後ろを振り返るとテンジンとアナンが立っていて銃口から煙が出ていてピストルを撃ったのはテンジンだった。
「二人とも無事だったのか!」
「ああ。なんとか、な、そんな事より早くカエラに会いに行け。」そう言われて優二はカエラの居る部屋に入って行った。
部屋に入るとカエラが立っていて二人は見つめ合った。そして優二が
「闇に落ちそうになった時救ってくれたのは君だね。」
「ええ、私はあなたが来ることを持っていたの。」
「俺の事を知っていたの?」
「ええ、牢屋に閉じ込められる前にこの城を自由に動けている時があったの。その時に魔天王が私をここに連れてきた意味を知ったの。」
「どういう事?」
「この指輪を見て、一つを私、もう一つをあなたが付けて合われる時に世界が統合される。それが分かってこの指輪を大事に隠していてあなたが来るのを待っていた。時間的にぎりぎりだったけど何とか間に合った。」と言うと
カエラは指輪を付けてもう一つを優二に渡した。優二も指輪を付けて合わせた。すると光に包まれてどの位経っただろうか光は収まり二人は新しい世界に立っていた。
二つの魂 滝川れん @maekenn09
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