語りかけるように届く、歴史のもうひとつの声

 読んでいるうちに、時代や血のつながりを超えて静かに息づく「魂の記憶」や、見えない縁の力に心が惹かれました。語り手の淡々とした口調の中にも、長い歴史の影や哀しみ、温もりがじんわりと伝わってきます。

 「とんがらし地蔵」や童歌が物語にやわらかな彩りを添え、現実と幻想が絶妙に重なる世界に思わず引き込まれました。歴史小説が好きな人はもちろん、「家族」や「生まれ変わり」といったテーマに関心がある方にもおすすめです。

静かに心に語りかける優しさと深さが、読後も長く余韻として残る一作です。

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