第10話~妨害するものを打ち倒せ~

 腕部に刃の様なものを携える魔物、タウリザード。…クドルスからマイクロアニマルと告げられたその生き物が、カセリナ達をにらみつける。

 カセリナ自身そのタウリザードと戦うのは初めてであったが。あそこまで強そうなものだとは彼女寺院思ってもいなかっただろう。…現に彼女は、歯噛みをしている。そのタウリザードは。カセリナに見向きもせずにシファルスの方を向くや…その鋭利な刃のようになった部分を振るい、其処から空気の刃を放っていった。…それはまさしく見るからに何物をも切り裂きそうなもの。先ほどカセリナ達が植えていた苗が、その空気の刃によって刈り取られてしまう。

 そのタウリザードの放った空気の刃に対して、ミカトナはシファルスの前に立ち。一発の蹴りでその空気の刃を消して見せた。


「お兄ちゃん、今のは呪文で対抗できたはずだよ。…それとも私の格闘術を信用していたってわけ?」

「悪かったね、ミカトナ。…さて、切り替えていかないと。」


 何やら考えていたのだろうか。シファルスは一つ息を吐いたのちにその目を変える。…それはカセリナにとっては見覚えのあるもの。…戦う時のディナスと同じ目だ。…それを見てカセリナも一つ息を吐いたのちに…気持ちを切り替え行く。

 槍の穂先の狙いを、タウリザードにつけ。ただ一直線に駆けていく。…しかしてその途中、カセリナを激しい振動が襲った。

 バランスを崩しそうになるも何とか堪えるカセリナ。しかしてそれを狙ったのか、カセリナの周辺が途端に暗くなっていく。…それに気付いて上を見上げれば。大きな岩がカセリナへと迫ってきているではないか。


「危ない!…"フリコルド"!!」


 大きな岩目掛けてクドルスが氷属性の呪文を放つ。…と、その呪文は大きな岩に命中し。その岩を砕いた。

 あたりに落下していく岩の欠片。カセリナ達はそれらを避けた後に…タウリザードの方を見る。それと同時に、タウリザードは再びシファルスの方を向く…かと思えば。ミカトナの方を向き始めた。

 鋭い目でミカトナの事を見据えるタウリザード。…直後、そのタウリザードは刃のようになった部分を振りかざし。ミカトナの方へと襲い掛かっていく。それを見たシファルスはすかさず呪文を唱えようとするが…そのシファルスの様子を見てか、ミカトナが制止するかのような声をあげた。


「お兄ちゃんは動かないで!この程度、私でもなんとかなると思うから。…相手はたぶん私がさっき風の刃を防いだ所を見て、私を先につぶさないとお兄ちゃんにはダメージが与えられないだろうと踏んだんだと思う。…だったら、こっちから迎え撃ってやるほかない。」


 ミカトナの言葉に制止するシファルス。直後ミカトナは地を蹴って真っ直ぐに駆けだし。タウリザードのその顔面にストレートパンチを放った。

 命中するミカトナのパンチ。…だがしかしてさほどダメージを与えられていないのだろうか、タウリザードはよろめいたもののパンチの命中した部分をぬぐうに留まっている。


――あんなにも力強いパンチだったのに…効いていない…!


 ミカトナのパンチをもらってもあまりダメージを受けていないかのような様子を見せるタウリザードに驚くカセリナ。そのカセリナの気持ちをよそに、ミカトナは再び近接戦闘を仕掛けんとする。

 タウリザードに決まっていく連続技。パンチの応酬に、タウリザードは手も足も出ないように見えていた。…そう、カセリナからはそう見えていた。…なぜならばその一つ一つが、素早いものだったから。

 カセリナが今まで出会っていた魔物などなら…以前戦ったタコの姿をしたあの二匹の魔物くらいならば圧倒することができるであろう。そのくらいにはあの少女の腕は上。格闘術方面には疎いカセリナでも、そのくらいのことはわかっていた、はずだった。だが。ミカトナがフィニッシュに放った一撃をタウリザードが受けた直後。…カセリナは再び驚愕する。

 なんとタウリザードは未だ平然と立っていられたのである。


「っ…私の知る中でミカトナさんはかなり上位に入るほどの腕だったというのに…!」

「やっぱりお母さんみたいにはうまくいかない、か…。」


 カセリナが驚愕する一方で、ミカトナはどこかシニカルに笑う。そのミカトナに、タウリザードが身をかがめて攻撃を仕掛けていった。…その攻撃を、ミカトナは避ける間もなく受けてしまう。


「ミカトナさん!」

「っ…"ヒーミル"!」


 クドルスの呪文を唱える声がカセリナに聞こえてくる。…その後、ミカトナの体を翡翠色の光が包み込んだ。


「っ…ありがとう、でも回復魔法を使ったってことは…疲労も相当な物でしょ?」

「っ…当たりです。支援担当の事情もよく知っていますね…。」

「私の御父さんが良く教えてくれたんだ。…回復魔法を唱えるときの注意点とか。…いろいろ、とね。」


 ミカトナがクドルスにお礼を言うと同時に、思い出を振り返るかのようにそう話をする。次の瞬間。雄たけびが聞こえてきた。…タウリザードの物である。

 突如として現れたマイクロアニマル。…それに、うまく対処できるか。

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ミクロの獣のもたらした災い 鹿方剛助 @co_dabo

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