1割の吉夢(キルモン)。
@Omuraisutokimi39
第1話 記憶の等級
人間は記憶に等級をつける。大切にしたい記憶、約束をした記憶、日常的な記憶、忘れたくても忘れられない記憶。
そして、私たちはその中で最も特別な記憶に星の勲章バッジをつけていく。その記憶は暗いニュースが溢れかえる現実を生きる原動力になり、ベットに這いつくばったまま時間を止めたい憂鬱な朝の心に優しいアラーム音を鳴らしてくれる。
しかし、その記憶から星の勲章バッジを外す日がきたら?
誰にでも生きていれば経験するだろう。
そう、幸せな記憶が自分を苦しめる記憶に豹変する残酷な経験を。
時には突然に、また時にはそれとなくその豹変を覚悟しながら。
その豹変のきっかけは世界人口分ある。信頼していた友達に裏切られて絶縁した、大好きだった推しが交通事故に遭って亡くなった、大切なペットとお別れした、人生最大の恋愛が終わった、何ひとつ同じきっかけは存在しない。
そして、人間はこの種の経験をした時、もちろん苦しいが生きるためにもがき始める。やけ酒をしたり、思いっきり遊んだり、仕事や勉強に打ち込んだり。もがき方も世界人口分あるが、一つだけ共通することといえば、もがくのを止めた瞬間、シャトルランを息苦しく走っている時に流れてくるあの永遠と続く音階に圧倒されるようにこれから続く人生が虚無に感じる。
しかし、もがいた後は簡単だ。もがきながら苦痛に豹変したその記憶を二度出しした緑茶くらいまで薄めてから、バッジを外して新しい記憶に付け替えればいいからだ。
生きるために前を向き、何事もなかったように過ごす。
この種の代表の記憶とも言えるのが
「人を本気で愛した、人に本気で愛してもらえた記憶」だと思う。
今から私の記憶はそんなバッジが外されたありふれた記憶にすぎないかも知れない。
こんな偉そうに色々語っている私だが、人生100年時代と言われる社会で、私は20年しか生きていない。人生や愛の意味を語るには若すぎるし、ありふれた言葉を紡ぐことになるかも知れない。
でも、今のこの自分にしか香ることのできない社会の匂いと記憶・葛藤がある。
愛した理由、愛された理由、傷ついた理由、傷つけた理由、憎んだ理由、記憶からバッジを外さないといけなくなった理由、
そして愛の奇跡を知った自分、愛の残酷さを知った自分、現実に圧倒された自分、約束を守れなかった自分、その全てをここに記すことでもがこうと思う。
吉夢で君と出会うために。
星のバッジを取り外せない強烈な愛の記憶を持つ人間が現在21歳、現役大学生で人生を拗らせている私だ。
1割の吉夢(キルモン)。 @Omuraisutokimi39
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。1割の吉夢(キルモン)。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます