恋と、僕の意思(仮題)

@kohran1969

第1話

僕は関内吉徳、誰もが聞いたことがあるメーカーの社員だ。一応総務部だけど、とくになんという仕事をしているわけじゃない。叔父が取締役だから、大した成果がなくても務めることができている。

だけど、僕はこれでいいのか?と思わないわけじゃない。

僕の勤める部署に気になる女の子がいる。派遣さんで、桜木朋美さんと言う。彼女とは仕事上の付き合いしかなく、契約が切れたら縁も切れる。家のことや取締役である叔父のこと、一族の掟みたいなものとか、そういうのを考えると、そのまま、見てるだけにしているのが一番良いと思っている。

…ああ今日有給取ったんだよなあ。特に用事ないけど。定時で帰宅できて、有給も取れて、周りで働いている社員達に比べて、僕はとても恵まれているのは確かだ。




桜木さんの送別会と言われて僕は参加した。でもなんかおかしい。お店ではなく叔父の家だ。桜木さんは派遣さんなんだから、普通は送別会なんてやらないのに。なんかおかしいと思いつつ向かった。

叔父の家の大広間に部署の人間が全員揃っていた。

司会を引き受けた総務部長が声高く言った。

「さあ今夜のお楽しみ!今から女の子を殺します!何して欲しいかリクエストどうぞ!」

僕は総務部長に聞いた。「なんで、殺すとかおかしなことを言ってるんですか?」

総務部長は「派遣なんていくらでもいる。可愛い女の子をぐちゃぐちゃにするの、興奮しない?私たちは選ばれし者なんだからこれくらいやってもいい。警察には手を回してるから大丈夫だよ」と言い

叔父も「定期的にこういう会を設けるのは一族の掟なんだから、お前がどうこう言えることじゃない。ここにいる人たちは今日をとっても楽しみにしていたし、もし会の邪魔をするなら会社も解雇するし、家からも勘当、つまり除籍するから」と言っている

そういえば、学校時代の友達に「面白いパーティーがあるからお前も参加しよ?」と言われて連れて行かれて、広い部屋で女の子が虐殺されてて、怖くなって一目散に逃げ出したこと、あったな…その友達とは縁を切ったけど。

僕は必死に「家を勘当されてもいいし会社なんて辞めたっていい、やめてくれ!!!!」と叫んで殺しをやめさせようとした。

「やめろ!!!!!!!」


…自分の声で目が覚めた。夢だった。

夢で良かった。と思った反面、「同じことが起こったら、僕はどうするのか」を考えた。

これ以上後悔はしたくない。自分の意思のない、誰かに操られるままの人生なんて、もう嫌だ。

夢が正夢になってしまったら、絶対助けたい。

だけど僕は今まで人に逆らったことがない。もちろん喧嘩とか出来ない。

それに、会社でも大した仕事はしていない。言われたことを消化するだけ。もっとやりたいこととか出来ることはあるはずなのに。

僕はどうすればいいのだろう?


数日後、桜木さんが今月いっぱいで契約終了だと分かった。派遣さんだから送別会はやらない。だけど「有志でやろう」という話は出ている。取り越し苦労だとわかってるけど、桜木さんの身に何かあったらどうしよう?

考えているうちに僕は桜木さんのことが「好き」なんだとわかった、というよりは今まで自分の気持ちに蓋をして、逃げていた。僕はもう逃げない。後悔しない生き方をするんだ。まずは一歩踏み出そう! 


僕は思い切って「送別会やるなら僕も出たい」と、桜木さんと仲良しの派遣さんに申し出たら「是非是非!関内さん主任だし仕事も一緒にしてたから、喜んで」と言われ、参加することになった。

さて、告白のタイミングをどうするか?と考えていた。みんながいる前じゃできないな、だからと言って呼び出すのは勇気いる。


桜木さんの最後の勤務日。今日は仕事が終わったら送別会だ。今日で会うのは最後、告白したい!僕は後悔しないんだ!!と朝からずっとそればかり考えていた。

僕は備品の確認のために給湯室に行った。備品の注文は僕の仕事なのだ。

そしたら、給湯室に、桜木さんが、いた!

告白するなら、今しか、ない!

「あの。あの。今日で最後ですよね」

桜木さんは「はい。お世話になりました」と言った。

「突然すみません!僕はあなたが好きです!!」

とにかく心臓の鼓動が止まらない。汗もすごいかいてる。でも、言えた。僕は一歩踏み出せたんだ。

「とりあえずLINE交換しましょう。ご縁があればって感じで」と桜木さんは言ってくれて、LINE交換は、出来た。


送別会は仕事を一緒にした人同士でこじんまりとやった。夢にみたとおりにならなくてよかった、とホッとした。

送別会で「関内さん、こういう席で笑って喋ってるの、珍しいですね」と言われた。そういえば、飲み会でも、食事会でも、どんな席でも笑ったことなかったな………


とにかく僕は自分の意思で自分が生きたいように生きる第一歩を踏み出したんだ!

今まで、人の言いなりになって自分の意思を抑えつけて来た。それをあの恐ろしい夢のおかげで、自分の生きたいように、自分の意思で、やりたいことをやり、自分の気持ちを伝えることが出来るようになったのだ。

告白の結果はわからない。もし付き合って結婚なんてことになったら、「そんな良くわかんない女と結婚なんて」と左遷されて、地方勤務とかになっちゃうかもしれない。でもそれでもいいじゃないか。自分の人生は自分で決めるのだ。考えすぎだな、告白してLINE交換しただけなのに(笑)

これからは、自分が納得行くように、生きるぞ!!


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