薔薇の手入れと地球外生物

水杜まさき

薔薇の手入れと地球外生物

★ 佐々木キャロットさんの自主企画 ≪ 三題噺「歯ブラシ」「病気」「宇宙人」 ≫ 向け ★

https://kakuyomu.jp/user_events/822139840963622630


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 冬の庭は静かだ。

 木々は葉を落とし、草花も枯れ、風にそよいで音を立てることもない。

 ヒヨドリがたまにやってきては甲高い鳴き声を響かせるぐらいだ。

 目を楽しませる花もない。だが、この季節にやっておくべき庭仕事がある。それは、カイガラムシの駆除だ。

 

 特に薔薇。枝に白い粒――カイガラムシの殻が点々と付いている。

 種類で言えば『バラシロカイガラムシ』。放っておくとこいつの排泄物で枝が黒くすすけ、やがて『すす病』が広がる。病気になる前に駆除しておかなければならない。

 

 マシン油乳剤をスプレーし、歯ブラシでゴシゴシとこする。

 油膜が気門を塞いで虫が窒息死したところを、こすり落とすわけだ。

 冬の間は薔薇が休眠しているので、多少強くこすっても問題ない。ここでしっかり落としておかないと、春に大変なことになる。


 カイガラムシにも天敵はいるので、それらに任せるという手も取れなくもない。

 例えば、寄生蜂が卵を産み付ける。そうなった虫はミイラ状になり、蜂の幼虫の餌となる。

 また、シジュウカラなどの小鳥が餌にする。

 ただ、ここまで虫の数が増えてしまうと、人間の手によって駆除する必要がある。



 一枝ずつマシン油乳剤をスプレーしながら、丁寧に歯ブラシでこする。

 広範囲に白く広がっていたカイガラムシが取れ、瑞々しい薔薇の枝が姿を現す。

 細かく大変な作業だが、こうやって綺麗になっていく様は気持ちが良い。

 

 作業を続けていくうちに、ふと変わったものが目に留まった。

 妙に大きい。直径一センチほどの大きな白い丸。普通は二、三ミリなのに。


「何これ……?」


 近づいてよく見ると、表面が金属光沢を帯びている。

 カイガラムシじゃない。小さな『UFO』だ。

 種類で言えば『バラシロマルユウフォウ』。中には五ミリほどの宇宙人が乗っているらしい。

 冬場は休眠状態だが、春になると飛び回り、ビームを撃ってくる。これに当たるとチクチクとして痛い。今のうちに対処するしかない。


 まずはアルミホイルで覆う。これにより通信電波を遮断し、大気圏外の母艦へ救援要請を送るのを防ぐ。

 次に、冷蔵庫にメモを貼るために使っているネオジム磁石を近づける。強い磁力でUFOの機器を破壊できるらしい。


「よし。これで安全かな?」


 あとは地球外生物駆除業者に連絡すれば良い。だが――


「これ……、中はどうなっているんだろう」


 好奇心が勝った。


 カッターで少しずつ削り、殻を割ってみる。

 すると、中から小さな宇宙人が一匹出てきた。だが――お腹が大きく膨らんでる。

 ……蜂に卵を産み付けられ、ミイラ状になっていた。


 地球外生命体も、地球の生態系には勝てなかったらしい。合掌。




(了)





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【今回の作品を書くに至った経緯】

「歯ブラシ」を、歯を磨く以外の用途で登場させようかと思っていたところ、我が家の庭を見て、『カイガラムシの駆除』と『すす病』が繋がりました。

それならいっその事、宇宙人も『害虫』ということにしてしまえ、ということで、こんな風になりました。


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薔薇の手入れと地球外生物 水杜まさき @mizumori_masaki

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