孤独が僕を満たしていく
@eNu_318_
孤独が僕を満たしていく
孤独が僕を満たしていく。この感覚は、他者の存在を必要としない、静かな充足である。現代社会は「つながり」を求めるが、僕はあえてその外側に立ち、世界と自己の距離を測ることで、真の安らぎを見出す。
朝の舗道をひとりで走る。夜の湿り気を帯びた空気のなか、吐いた息が白く消える前に次の一歩を踏み出すリズムは、すべての雑念を削ぎ落とす。街は眠り、残されるのは自分の呼吸と足音だけ。この単純な繰り返しに身を委ねるとき、私は誰とも繋がらず、誰からも切り離されていない「ただここにいる」純粋な存在になれる。孤独は風のように身体を触れるが、それは疎外感ではなく、自己の輪郭を確かめる清々しい感覚だ。
部屋に戻り、本を開くと、その静寂は物語への旅立ちへと変わる。ページをめくる紙の擦れる音だけが響く空間で、私は文章を追うほどに深く自己の内側へ潜る。登場人物の孤独が自分の記憶と重なり、読書は自己との対話となる。誰にも触れられない思考の底で感じるひんやりとした冷たさは、感情が研ぎ澄まされ、真実が露わになる心地よさの証である。
音楽に触れる瞬間もまた、このひとりの時間を満たす。ギターの弦を弾き、最初の音が空気の膜を震わせる。音が消えていくまでの余韻を聴いていると、孤独は静寂に溶け込み、その静寂がまた孤独を呼び戻す循環の中に身を置いていると感じる。音は、言葉になる前の感情を表現し、自己を内側から満たしていく。
窓の外を見ると、昼間の喧騒はすでに遠く、夕方の柔らかい光が部屋の隅に淡い影をつくる。その影が床を撫でるように滑らかに伸びていくのを見ると、時間は緩やかに流れているのに、どこか止まっているようにも感じる。誰の声も届かず、自分の声すらほとんど聞こえないこの平穏な状態において、胸の奥で静かに広がっていくものがある。それは寂しさとは根本的に異なり、内側から満たされていく感覚に近い。
孤独とは、虚しさではない。それは、外部の余計なノイズや期待が削ぎ落とされ、本当に必要な自己の核だけが残る「純粋な状態」なのかもしれない。走るときの単純なリズム、本を読むときの自己との対話、楽器を奏でたときの調和する音の余韻。これらはすべて、誰とも共有できない感覚の中を漂う行為である。そして、この沈黙の底で、僕という存在の輪郭は初めてやさしく浮かび上がる。孤独に満たされていく瞬間とは、世界から切り離されることではなく、世界と自己との距離が最も調和し、深く安らげる場所を見つけた瞬間である。私は、この自ら選んだ静かな充足の時間を、ひそやかに、そして深く愛している。
孤独が僕を満たしていく @eNu_318_
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