季節からこぼれた紅葉
おもち
季節からこぼれた紅葉
川沿いを歩いていると、紅葉の盛りを迎えた木々の中に、
一本だけ季節に取り残されたようなもみじがある。
周りの紅葉やイチョウが赤や金に染まるなか、
その木だけは、ひたすら静かに、真っ黄色のまま風に揺れている。
赤々とした紅葉はたしかに美しい。
けれど、その黄色いもみじの前に立つと、
なぜだか胸の奥がふっと柔らかくなる。
人より少しだけ季節がずれてしまうこと。
周りと歩幅が合わず、取り残されたように感じる瞬間。
自分の中にもそんな“黄の時間”がたしかにあって、
その木は、それをそっと肯定してくれているようだった。
赤くなくても、美しい。
人と違っていても、ちゃんと季節を生きている。
黄色の紅葉を見ていると、
そんな当たり前のことを、
やさしく思い出させてくれた。
季節からこぼれた紅葉 おもち @omochitto
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