放課後の雄二

天気

放課後の雄二

「雄二、どうしたんだ」

唯一教室に残っていた彼に声をかける。

いつもなら早めに帰っているため、珍しい。

「あんたのせいだ」

言葉を噛み砕くまでに時間がかった。

いま、あいつはなんて言った?

「あんたが恵美を奪ったんだ…!」

誰だ、恵美って。

「恵美にあんなことしておいてしらばっくれるな!」

誰だ、誰のことだ。

彼はなんの話をしている。

雄二とは少し関わりがあるが、こんな形相を見たのは初めてだ。

「俺を傷つけてもいい。けど、恵美のことは傷つけるんじゃねえよ」

迫力がすごい。身長は同じぐらいだが、睨まれると威圧されてしまう。

「お前、一体なんの話をしてるんだ」

両手を広げてあいつの目を見るも、表情一つ崩さない、だめだ。

「とぼけるのがうまいな」

俺の困惑をみても、こいつには届かないようだ。

「なんだ、俺が恵美ってやつになにをしたというんだ」

「真崎から奪った挙句捨てたんだろーが!」

いや、お前じゃなくて真崎が奪われたのかよ!!

「いつの話…」

詳細を説明してくれることはないようだ。

これじゃあ弁解のしようがない。

お前はもっと優しくて人情深いやつだったろ、どーしたんだよ雄二。

「いい加減認なよ中野」

中野…?

「待て、俺は中野じゃないぞ」

「え?」

「杉田だけど」

雄二は黙って俺を凝視して、何か思い出したかのようにびくっとした。

「あんた、村田忍?」

「おう」

「ごめんね」

気持ち悪い。

そこには、いつもの雄二がいた。

なあ、俺も言いたいよ。

今、俺がどんな感情を覚えてて、それをずっと抱え続けなければいけないこと。

「お前のせいだ」

って。




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放課後の雄二 天気 @Laikinto6913

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