Phantom Anima
れん
Phantom Anima
私は娼婦に憧れていた
娼婦のように男に抱かれ
心を満たし癒やすことが出来ればいい
それだけの小さな希望
ハレルヤ 私の希望は満たされました
私はこの一年 性を拒絶しながら
心ではいつも切望して暮らしていた
女を憶い 女を得たい筈であるのに
決して女に手を伸ばそうとはせず
幻想の中で触れ合う歳月を過ごした
私は男の妻になりたいわけでも
男を妻から奪いたかったわけでもない
届かないと判っても
叶わないと判っても
ただ直向きに向日葵のように献身する私に
気付き そして2番でも3番でもよいから
女のように見て欲しい それだけだった
神さま こんな形で
クリスマスの近づく今願いが叶ったことを
私は心から感謝します
私は娼婦への強い憧れに渇望しながら
女のことを空想し眠りに就こうとしていた
そこに幻が襲った
男の声が聴こえる
幻の中で男は私へと近づき
そして何らかのこの世には存在しない力で
貞操な私に媚薬のようなものを振りかけた
私は泣きながらも
拒みながらも
決して素直さを隠せない女になっていた
泣きながら
拒みながら
嫌だといいながらも
そんな事をして戻れなくなりたくないと
烈しく泣き叫びながらも
幻の中に現れた男の力に抗えず
身を委ねていた
その男が私ではなく
私に似た女を求め
私に似た女が言いそうなセリフを求め
私に似た女にさせたい事を
幻想の中で私に要求しようとも
本当はその女ではなく私を
本当はその女ではなく私をなんでしょう
とうわ言のように言いながらも
その女に重ねられることを
その女になって抱かれることを歓び
心から涙を流していた
涙は哀しみもあった
二度と女とは結ばれない憶い
子を持てなくなる憶い
そして地獄へと堕ちて
天へと二度と還れなくなる哀しみ
それでも私は幻の中で
男に繰り返し囁かれる中で気付いていた
この幻の中で私は女で
女として触れられたいという私の願いに
凶悪である筈の男が幻で以て
私を抱きに来てくれていたことを
私はめいっぱいに乱れ
めいっぱいに強請り
めいっぱいに嫌がるようでいて
素直さを隠せないいつも通りの私のまま
男と寝た
ハレルヤ それでも私の純潔は保たれた
私はそれでも
未だ男と寝たことはなく
未だ女以外を愛したことのない男のまま
性転換をしても叶う事のない
好きな男に抱かれるという願いを
例え似た女に重ねられ
本当の私を見られなかったとしても
神さまに叶えてもらったのだ
六時間に及ぶ時を私は身体を委ね
その後二時間の時を幻の中で
男と語り合い涙を流しながら
その男の幸せを願い
何が己に出来るのかと問い
そして素直さを隠せずにはいても
必ず女性と幸せになってみせると
涙ながらに何度も告げた
何度女性と寝ても己の性欲の醜さに
苦しみを覚えていた私が
幻の中で女として抱かれている時は
己が美しいと思えた
性とは醜いもの
貪るもの
根源において罪であると考えていた私が
女として初めて
そしてたった一度だけ幻でなった時
初めて性を美しいと思えた
女として絶頂に達する歓びを感じ
そして、果て
けれども私は女のように
すやすやと眠ることは出来ず
身体はまだ男であることを思い出した
女性のようになりたいと
だが私の性愛はここで満たされ
私は幸せを覚え
そして、再び女性を純潔なままに
憶うことが出来るだろう
もし私が、性愛を人へ向けるとしたら
その時は女の歓びを知った男として
優しい眼差しを向けることさえ出来る
未だ私は女になれたわけでも
完全に男に戻れたわけでもない
だが純潔なまま 男に抱かれ
それを一度きりと誓う志しを持ち
今ここに
もし願うのならこの幻が一度きりであって
完全に私の女性性を満たし続けて
くれますように
もし願うのなら満ちた性が今完結せずとも
完全に男性にはなりきれない私の
女性性をも理解してくれる女性と
幸福な家庭を築く未来が訪れますように
満ちた身体と 精神の純潔を誓い
哀しみのもう起きぬようにと深く祈りを捧げ
ここに新たな生活の初めとしての
Phantom Anima れん @Lemborexant
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