第43話

『今日一日、お前の可愛い彼女、借りるな』


 朝一で純也から送られて来たメールに、画像が添付されていた。

 そこには、フェスイベントのスタッフポロシャツを着た鮎川の写真が数枚。


 普段はシンプルにハーフアップに纏めていることが多い彼女が、暑さ対策なのか、ふんわりと緩くシニヨンに纏め上げていて、入社六年目にして初めて見るその姿にドキリとしてしまった。


 イベントスタッフとして、毎年各部署からスタッフが駆り出されているのは知っていたが、まさか純也と同じ会場だったとは。


 真剣な表情で商品を陳列しているところを見ると、本人の許可なく撮影したのだろう。

 そして、それを勝手に俺の所に送って来たというわけか。


『盗撮は迷惑防止条例違反だぞ』


 下着姿だとか、性的な意味合いでの盗撮ではないとはいえ、弁護士が事実を容認できるわけではない。


『相変わらず、優等生だな』


 俺にメールを送って寄こしたのは、わざとなのか、あえてなのか分からないが、俺と鮎川の関係を好意的に捉えてくれている原。

 苛めの一件以来、原も鮎川のことを気遣っているのが分かる。

 女性慣れしている原なら、俺なんかよりもっと上手く付き合えるだろうに。


『可愛いからって、口説くなよな』


 社交辞令的なメッセ―ジ。

 彼氏として牽制しなければならないという建前上。


『ばーか、ダチの女に手を出すほど、落ちぶれてねーわ』


 俺のメッセージを本気にしたのか、あえて応えてくれてるのか、分からない。

 けれど、嘘を吐かない性格なのは熟知している。

 女遊びが派手でも、俺にとってはかけがえのない同期だ。

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