第42話

 人気のフェス会場、有明テニスの森公園にある有明コロシアム。

 一万を超える観客席の先にある一面のハードコート。

 このたった一面でプレイするために、多くの選手が日々血がにじむような努力を積み重ねている。

 そんなテニスの聖地で『WING』と契約している、世界で活躍するTOPプロ選手が教えてくれるテニス教室。

 ラケットの持ち方から始まり、姿勢の取り方、打点の位置など、丁寧に教えてくれるのだ。


 自社製品の他にイベントグッズやプロ選手の勝負飯、フェス限定スナックメニューが人気で、熱中症対策にかき氷や凍らせたペットボトルなども販売され、至る所でミストシャワーが噴霧されている。

 緑豊かな公園に囲まれているため、小さな子供からご年配の方まで多くの方がご来場している。


 *


 人気のフェス会場だった、東京国際辰巳水泳場。

 スイマーの誰もが憧れる神聖な場所。

 けれど、惜しまれつつ閉館した。

 それに代わる施設として建てられたのが、東京アクアティクスセンター。

 日本の主要な水泳競技の大会が行われる予定で、第二の聖地になるだろうと既に呼び声高い。

 そこで、日本のトップスイマーたちが、華麗なる泳ぎを披露してくれる。


「あの、すみません! 筋肉、触ってもいいですか?」

「ハハッ、……はい、いいですよ」

「きゃあぁ~っ、いいんですかっ!!!」


 水も滴るいい男。

 鍛え上げられた肉体を惜しげもなく披露する日本の王者、加納かのう 琉人りゅうと二十二歳。

 女子高生スイマー二人の指先が、大胸筋にそっと触れた。


「俺も!! 俺も触っていいですか?!」

「じゃあ、順番に」

「おっしゃぁー!」


 逆三角形に鍛え上げられた肉体は男性から見ても惚れ惚れするほどで、質疑応答のタイムがあっという間にフリータッチタイムへと様変わりした。


「ジャパンオープンと世界水泳、応援してます!!」

「ありがとう、頑張るよ」


 WINGの社員と来場者が見守る中、加納は笑顔で応えていた。

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